表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
領地経営編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/71

8.命名

『田んぼの件で、春先にレンゲの種をまくように指示するのを忘れてました。あとで言っておいてくださいね。取れ高が全然違ってきますよ! ミツバチが寄ってくれば、蜂蜜がとれるかも!』

 レンゲ一つで? ま、まあ、ミウラほどの以下略……。


『さて、田んぼは片付きました。この秋の収穫が楽しみでございます!』

「上手くとれればいいのでござるがな。田んぼ一枚くらい、従来の方式で残した方がよくないか?」

『時間も土地もございませんことよ!』

 それはそうでござるがなー。心配でござるなー。


『さて次です次ぎ! 石鹸といきましょう!』

「油がないぞ」


『……お酒は――』

「ただでさえ田んぼが少ないのに、酒に回す米など無いわ!」


『……米、とれてストックが増えてからにしましょう。では、千歯扱きでも作りましょうか!』

「後家さんの仕事を取り上げてどうする。これも、米が潤沢にとれ、後家さん用の仕事がなんぞ見つかってからにござる」

『椎茸……でも育てましょうか? 丸太さえ用意できれば、力のない後家さんでも育成できますよ』

「なら良い!」

 詳しい精査の上、許可を与えよう。


「で、ミウラよ。手順は覚えておるのか?」

『お任せ下さい! 日本史逆行転生の可能性を考えて、石鹸と澄み酒と椎茸はバッチリ押さえておりますよ! まず、前の年の秋から梅春までの間に原木を根元から切り倒しておくんです。その際、葉っぱを付けたままにしてください。水分を完全に抜くためです。ここで水分が抜けきらないと椎茸菌を植え付けても成長しませんからね。で、適当な次期に気を3尺強の長さに切りそろえて、日に当たらない場所で保管します。でもって桜が咲く前の暖かくなった季節に種菌を植え付けます。この種菌を作るのがまたシビアでして、後で分けて説明します。で、植菌した原木を日当たりの良い林の中など湿気の多い場所を探して、そこへ棒積みにしておいて、菌が白くなってきたら、今度は日の当たらない、充分に雨が当たって、風通しが良くて、排水の良い場所を探し出してそこへ移します。運が良ければ2年後の夏に椎茸が発生。2.3年は連続して取れますしますが、ここまでで一つでも条件が悪いと生えてこない場合が……あああ、めんどくさい! だめですねこれ!」


 途中で手間過ぎるのに気がつきおった。


「話を聞いておる限り、二年掛けの博打にござる。マタノ荘だと向こう十年は無理にござるな」

 養殖椎茸計画は挫折した。



 して――

 様々な検証の結果、米作りだけに集中して、後はそっとしておこうとの結論に至ったのでござる。


「レンゲの花畑に伴う蜂蜜採取。この可能性が残っておるな」

『ええ、来年の春、充分な用意をしてからもう一度来ましょう。これも2年がかりですね』

「農とは人の一生で身を成す業にござる。故に農業」

 上手いこと言えた!

 

 して、コジロウの方は?

 手下のニンジャ二人が捻り鉢巻きで、書面と格闘しておられる。


「拙者一人では手が回りません。帳簿は数字に強いこやつらに任せます。手下の給金はカザマ家持ちで結構です!」

 ただで有能な事務方を手に入れたでござる!


「帳簿の洗い直しは部下に任せて、これより拙者は、マタノ荘の兵を作る算段を致します」

 部下殿がお任せくださいと胸を叩かれた。


「兵でござるか? 確かに必要なことでござるが、どうやって?」

「マタノ神社が飼っていたゴロツキ共を鍛えます。それと、収穫が上がるという前提で、各家々で余った次男三男を引き取り、軍事訓練を施します。フウマの里方式で、軍事専門の部隊を一から作らせて頂きますクッソ!」

 コジロウ、苦労性な男にござる!


『フウマ式? ほほう、農業と切り離し、軍事専門部隊を立ち上げますか? 他国の流れ者を金で雇う傭兵と違い、地元民からなる傭兵? これは強いですぞ! やるなコジロウさん!』

 一応、利に叶っとるのか?


「この部隊は軍事専門だけでなく、賦役などの土木建築にも使いますよ。こうすれば、農業に携わる男手が減ることもなくなりますし、余った次男三男共が食いっぱぐれることもありません。……俺達のように、間引かれる予定の子供を生き長えさせられることができます。それも親の近くで」

 コジロウの意外な過去話でござった。コジロウの手下の者達も、仕事の手を止め、ピクピクと反応しておる。ニンジャも人の子でござるか……。


「コジロウ。そなた達も苦労してきたのでござるな」

 はっと我に返ったコジロウは。うつむき加減に視線をそらした。


「辛かろう……」

「辛いことなどございません!」

「泣いておるのか?」

「泣いておりません!」

「オッパイの上で泣くか?」

「実は泣いておりました!」

『はい、ちょっと通りますよー』

 某の胸に飛び込もうとしたコジロウの前をミウラがのっそり歩いて抜けていく。

 

――三ΦωΦ三――


「うーむむむむ……」

 コジロウ配下の者より、問題の帳簿を見せられ、唸っているところでござる。


 一目でおかしいと気付く数値の羅列。でもって、複雑怪奇な会計。この場合の複雑怪奇とは、雑多な項目が混じってたり、収入と支出がまぜこぜだったり、数字の書き方も千差万別。纏まりがない。

 大雑把にすら数字が掴めぬという情けない有様。

 配下の者達は、現状を某に見せようとしておるのでござろうが、怒りが垣間見える。


「ん? しばし待て」

 特に気になるところを某方式で書き出す。

 たちまち問題が浮き出る。計算違いや桁違いでござる。計算違いはまあ良い。桁を間違えたら洒落にすらならぬ。セプクものにござる。


 某の手元を配下の方が覗き込んでおられる。

「あのー、イオタ様は何を書いておられるので……?」

「おお、これか? これは自己流の計算方法にござる」

 前世で、商人をやっておったから。ミウラが言うところの簿記でござる。使う数字は0入りの十進法にござる。


「先ず数字を――」

 十(拾)、百、千、万、といった単位の数字を省く。代わりに「0」を使う。

 これまで五千四百三十と書き記していたのを五四三0と印す。桁を合わせるとたちまち見やすくなる。


 五四三0、足す

 三二一0、で

 八六四0、となる。八千六百四十でござる。


 簡単な数字なら、見ただけで計算できるし、書くのが早くなる。

 して、桁数が上がると視認しづらくなるので、万の位にチョボ(,)を打つ。

 五,四三二一、で五万四千三百二十一でござる。

 数字は、これまでの縦書きから横書きへ変更しておる。一目で数字と文字が区別できるようにする工夫でござる。


 して――、

 一,000二と、五四三二の、二つの数字を並べれば、どちらが大きい数字か一目で解る。されど――

 一万二と、五千四百三十二の二つの数字を並べても、一目見ただけではどちらが大きいのか解らぬ。間違いの元にござるから。

 なにせ、私的な帳簿。誰が見るでもなし。某だけが解ればよい。


「――と、こんな具合にござる」

「「へぇーっ!」」

 驚かれたでござる。


「して、項目ごとの収入合計を左に書き出し、右には項目ごとの出費合計を書く。各々、縦の合計を出して、最下部に記帳する。収入から出費を引くと、利益が出る。これが逆転すると赤字にござる。某は数値の先頭に三角印を付け△一00、つまり百の赤字、と印すのでござる。自己流でござるが、計算しやすいし視認性がよい。イオタ家の苦しい家計を一人で切り盛りするには時間が惜しい。少ない時間で計算できるよう、この方式を使っておったのでござる」

「それ、採用します!」

「あ!」

 落書きしていた紙切れを持って行かれたでござる。

 

「して、その方ら、このままマタノ荘に詰めるか?」

「えー、はい。小頭、もとい、代官のコジロウ殿の下で頑張らせていただきます」

 のっぽの男にござる。大変若い。二十に届くか届かぬか?


「給金は少ないでござるよ」

 もう一人が苦笑いしている。こやつも若い。背は低い方でござるが、肩幅がやけに広い。蟹みたいだ。


「後数年もすれば、増えるはずですが?」

「いかにも! ……で、その方らの名は?」

「はっ! シュンスケと申します!」

 背の高い男がシュンスケにござるな。

「ハヤテと申します!」

 肩幅の広いのがハヤテでござるな。


「その方ら、家名はござらぬのか?」

「カザマじゃ駄目ですか?」

「三人も同じところに同姓がおれば紛らわしいでござる。それにカザマは某が思いつきで付けた名でござる」

 あの時適当にフウマを別の読みで言っただけでござる。


「適当に付けたので、後で名を変えても良いとコジロウに言っておけ」


 で、三人とも同じ家名では要らぬ疑いが持たれる。別の家名がよい。


「ならば某が付けてしんぜよう。えーっと、まずはシュンスケ!」

「はっ!」


「えーっと、えーっと、イオタ家よりイの一文字を取って……この村で暮らすのだから……イムラで如何か? イムラ・シュンスケ」

「イムラ……シュンスケ……あ、ありがたく頂戴いたします!」

 おお、顔つきが武士のそれになりおった。名は体を表すと言うが、ここまで思いこみの強い男だったとは思わなんだ。


「して、えーっと、ハヤテ」

「はっ!」

 主命を待つ犬のような目をしておる。


「えーっと……イオタを使ったので、別の名で……えーっと、いずれここはタケマルの領地となるので、タケを一文字。それと、某の願いでタケマルを守ってもらいたいから守の一文字をくっつけて、タケモリ。タケモリ・ハヤテ、でいかがか?」

「ははっ! タケモリ・ハヤテ。拝命いたしました!」

 ぺったんこになる姿勢で頭を下げられたでござる。


「うむ。イムラ・シュンスケ。並びにタケモリ・ハヤテ。代官であるコジロウの言うことを良く聞き、公明正大に勤め、イオタ家のため、タケマルのため励んで欲しい!」

「ご下命、承りました! 命を賭けて遂行いたす所存!」

「任務失敗の暁には、この村もろとも爆死する所存!」

「村を道連れにするのはやめようね」


 

次回、1月5日(月)投稿予定です。



皆様、よいお年をお迎えください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ