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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
領地経営編

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7.イオタ式田植え法

「よいか、宮司。心して聞け」

「へっ、へへー!」

 隠し田の真ん前で、宮司がドゲザしておる。


『それも額を土にくっつける作法で』


 首を切られても仕方ない犯罪でござったからな。これをかばうと、某の首も飛ぶほどの罪にござる。

 その後ろで、田を管理していた村人が、自分達も罪に問われるのではないかと青い顔をして、一緒に座っておる。


「お百姓様に罪はない。後ろの者は安心いたせ」

 ほぉーって息を吐き出す音がここまで聞こえてきた。


「さて宮司、その方が汗水垂らして集めた財宝は全て没収と致す。村に何かがあったとき銭に変える為、専用の蓄財としてイオタ家が預かる。よいな!」

「仰せの通りに!」

「以後、マタノ荘の経営に口を出すことを禁ずる。神官らしく神社の経営に専念せよ!」

「ははーっ!」


 ここで無駄口を叩いたら、某が止める前にコジロウの剣が鞘走るでござろう。現に柄に手をかけておるもの。


「だとしても、隠し田はいかん。マズイ。イオタ家にも累が及ぶ」

 宮司の脇と背中に大きな汗染みが広がっていく。


「しかし、宮司をかばう手だてが一つある。……お任せすると一言いえ!」

「全てお任せいたしまする!」

『ものすごいパワハラですね』

 死罪を見逃そうというのだ。これ位させてくれ。


「宮司の許可も得た。ここからはコジロウと話をする。宮司は下がって聞いておれ。それと、そこのお百姓様は近くへ寄れ」

 コジロウとお百姓様が某の側へ膝行り寄ってきた。


『旦那、百姓をお百姓様って呼ぶんですね?』

「母上の躾けにござる。国の源は米を作る大勢の民である。故に百姓。お百姓様を『お』と『様』を付けずに呼べばお茶碗から火が出る。と、子供の頃から教え込まされておる」

『素晴らしいお母様でございます』

 今はとにかく、それは横へ置いておいて。


「これから、いや、今年から数年、この田は某が知りうる知識による新しい田植え法を試す、試験田とする。その方らは、これから某が指導する方法で、一年間、田の面倒を見よ。よいか、親兄弟にも口にしてはならぬ事でござるよ! これは神獣ミウラの主のお知恵だったりする!」

「「「へへーっ!」」」

 飛び上がってからのドゲザ。膝小僧、擦り剥いてないよね?


「畏くも、かの神獣様方が神無月にお集まりなされるイズモの大社にて、ミウラの主が、遠い北の地方の神獣様よりお聞きしたお話でござる。そこでは米が育たぬ。そこでなんとかしようと血の出る思いと大勢の犠牲者を出し、試行錯誤を重ねての結果にござる。先達達の犠牲、あだや疎かにしてはならぬ!」

 脅したら皆様に恐縮された。一人を除いて。


「して……サン! お主堂々としておるな!」

「それほどでも!」

 松の木の根っこで、サンが腰を下ろしてこれまでの経緯を見ておった。


「お主も、証言者の一人となれ。では説明を致す――」


 ということで、某の指示の元、実際はミウラの指示の元、間隔を空け苗の本数を減らして植えていった。

 お百姓様は「ほんとにいいんですか?」「まず収穫は半分より下になりますぜ!」「かけてもいい。米はとれません」と心配の声を上げながら田植えをしてくれた。


「たとえ失敗に終わってもその方らの責任にはせぬ。万が一の場合は補填の用意がござる。安心して仕事をしてくれ」

「そこまで言われたら、どうかお任せくだせぇ。この後も、教えていただいたとおりに勤めますぜ!」


 書類上より一回り大きい田を二つに区切った。隠し田も一枚として扱い、計三枚の田で、それぞれ条件を変えて苗を植え付けたのでござる。


「ほー! これは腰に来るでござるなー!」

 某もお手伝いをした。泥がヌメッとなって気持ちよかったりする。


「巫女様は筋がよいですな! 明日からマタノの百姓で生きていけますぜ!」

「褒めても何も出ぬぞ!」

「そのおみ足と、チラリと除く胸元だけで。ご褒美は頂きました」

『オッパイは日本の農業を救う』

「オラは巫女様の後ろ側から……お尻だけで三年分の給金を頂けました」  

 こいつら、米はいらんらしい。


「サンも、頑張ったな!」

「えへへー!」

 サンは苗を運ぶ仕事してくれた。


 いつの間にか、コジロウまで田に足を入れておった。

「こう見えて、経験者ですから」

 ニンジャは何でもできる生き物でござる。


 みんな揃って泥だらけの手で水筒の水を飲む。

「巫女様ぁー。終わってから言うのもなんですが、こんな疎らでいいんですかいのー? 苗も細っそいし」

 お百姓様、スケと名乗った痩せた男だ。


「サンよ、その方はどう思う?」

「うーん……このやり方が合ってるとしてだげど……」

『ほほう、頭が柔軟ですね。手法が正解という条件で、と理論的に考えらる頭を持っていますよ、この子』

 ミウラも目を剥いておる。


「間が開いたことで、苗が少なくて済む。その分植える時間が減る。風が通る。日の光が全部の苗に当たる。雑草を抜きやすい。間を歩きやすい。鯉を放ちやすい。それからそれから……」

「その辺でよいでござるよ」


「でも、これでいつものより稲が多く実るのかな? ちょっと怖いけど」

 それな! 某も、それでござる。心配でござる。だが、ま、まあ、ミウラほどの実力者が言うのだから……。


『後は、これまでと全く一緒です。畦の草はもちろん、田の中の草も抜き取ってくださいね。一本でも生やしたら怒りますよ』

「――との事でござる。草一本につき、雷が十発ほど落ちるので覚悟して働かれよ!」

「ひやぃ!」

 返事が元気でよろしい。 


 今日中に済んでよかった。この地にいられる時間は短い。

 明日もサクサクと働くのでござる!

  

――三ΦωΦ三――


 ――余談であるが――

 

 この年、天候不順のため、全国的に不作気味であった。

 マタノ荘でもご多分に漏れず、イマイチの出来。人死にが出るほどの不作ではないが、切りつめないとヤバイクラスであった。


 ところが!


 イオタの指示した給田の稲だけは豊作。間隔を空けた事により、苗が少数になったはずの田んぼなのに、まともに植えた田より多く米がとれた。


 翌年より、多くの田んぼがイオタ式を採用。不採用の田より多くの収穫を得た。

 この年、イオタ考案(実はミウラでござる)水田専用草刈り機を導入。雑草処理の仕事が楽になったと好評であった。

 翌々年には、マタノ荘全ての田んぼがイオタ式に切り替わった。


 イオタ家嫡男タケマルが十四で元服し、タケノシンと名を変え領主を継いだ頃は、マタノ荘はそこそこ豊かな領地となっていた。


 ずっと後年、最初からイオタ式苗植え方こと、マタノ式田植え法に携わっていたサンは、イマガワの御屋形様に請われ、スルガ各地でマタノ式の指導に走り回ったと聞く。



年内、もう一回投稿いたします。

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