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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
カイの国編

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3.カイタケダ氏終了のお知らせ

 カイの国、いわゆるコウ府盆地に覇を唱えるタケダ氏を攻める手は3つ。

 東からイセ家の軍。

 西と南から、我がイマガワ軍。

 して、北からはムラカミ家とウンノ家などの連合軍が攻める。今回、逃げ道は徹底して塞がれた。御公儀に知られる前にカイタケダ家を殲滅する計画にござる。


 タケダは精強、とはいえ、四方向より攻め立てられ、戦力分断を余儀なくされ、とうとう滅んだ。


『史実ッ! 史実は何をしているッ! 歴史の修正力さんは、どんな手を使って、どうやって修正するのかッ! 見てみたイッ!』

 ミウラが吠えておる。


「……ひょっとして、武田信玄公は?」

『名前を聞いてませんのでまだ生まれてないでしょう! 影も形もありません!』

「……ひょとして、信玄餅やカボチャのほうとうは?」

『かぼちゃのほうとうはワンチャン。ですが、信玄餅は諦めてください。安倍川餅で我慢してもらわないと!』

 恐ろしいことが起こった。


「ぎゃ、逆に考えようでござる! 史実で今川の義元公が桶狭間で討ち死になされて後、ボロボロになった今川領を武田信玄に良いように切り取られたのでござる。タケダさえいなければ、万が一のことがあってもイマガワ家とイオタ家が生き残れる可能性が残されたのでござる。……のでは?」

『それに期待して、震えて眠りましょう』

 その夜、震えて眠った。


 現実逃避をするため、閉じこもってずっとミウラと遊んでおった。

「さすがに……しんどい」

『ああ、太陽が! 紫外線が! 波紋がぁー!』



 御屋形様がお戻りになられた。ミウラはおいといて、戦勝祝賀の挨拶をせねばならぬ。


『コウ府の川には日本住血吸虫がウヨついてますから、充分気をつけて。気の付けようがありませんが、気をつけて支配者経営をしてください』

「……にほんじゅうちゅうちゅうけつ?」

『にほん、じゅうけつ、きゅうちゅう、です。目に見えるかどうか、ものすごく小さな寄生虫がほぼ無限に。ああ、わからないか? 人を内側から食う虫が……えー、当代日本人には、魔獣に匹敵する対処不可能な水棲生物です。水生生物だけあって川や田んぼに住み着いております。刀や槍じゃ殺せませんよ。わたしの雷撃が有効だと思いますが、数が多すぎてとても手が回りません』


 にほん、じゅうちゅうちゅうちゅう……とにかく、何かおるのでござるな。それさえ分かれば良しでござる。

「行ってきまーす」

『気をつけてねー』

 

 して――

 御屋形様の体調は良好でござった。目と目で合図を交わし、互いに微かに頷きあっただけで確認は終わった。


 どうやら……女である某のいる席で、御屋形様が、酔った勢いにまかせ供回りの者達とスケベ話を始めたのをミウラが咎めて、軽くこつかれた、と言うことで収まっていた。


 勝利により御屋形様が浮かれすぎた。それを神獣様が戒められたという美談になっていた。ただでは転ばぬのがイマガワ家にござる。

 某も、ミウラの機嫌は上々、すでに忘れておいでだと返しておいたでござる。


 一通り祝いの行事がおわった。

 日も暮れ、夜の帳が降りた。某も、そろそろお暇を願い出ようかと思うておったときでござる。

「イオタ、しばし残れ」

「はぃ」

 御屋形様から、残るように言われた。


 残ったのは、オカベ様、セナ様、クシマ様とアサヒナ様それと某にござる。

 な、なんでござるかな? 某、謀りごとは苦手にござるよ。第一、下っ端でござるよ。


「部屋を移ろう」

 して――

 御屋形様の執務室に皆で移った。


 広大にして豪華絢爛な執務室にて。

「イオタに残ってもらったのは、カイの国の差配について意見を聞きたいからだ」

「そそそ、某、斯様な重大な話は! 某の中身は端侍の小僧……もとい娘でござるよ!」


 ミウラなら賢者(ニート)にござる。堂々と意見を戦わせよう。でも、某は小心者の小物にござる!


「ああ、政の意見を聞くつもりはないから安心いたせ。イオタに聞きたいのは、彼の地の魔獣と神獣様についてだ。なにか参考になる話はないか?」

 どっと疲れが出たでござる。汗がびっしゃりでござる。そっち方面ならば、何とか会話に参加できるでござる。


「して、カイ方面の魔獣でござるか……えーっと、そう言えば……ミウラの主がなんか言っておられたな……えーっと」

「ほうほう!?」

 皆様、身を乗り出されておられる。


「なんだっけ?」

「そこを思いだして欲しいなぁー!」


 小首をかしげて、思い出そうと努力を……。

「……えーっと、なんでも、水の中に住む? 目を皿にせねば見えぬほどの小さな魔獣が? それこそ無数におって? そいつは川にすんでいて、川の水を引き入れた田んぼに足を入れた人を内側から食う? そんな感じでござったかな?」


「なんと!」

「内側から人を食うだと?」

「無数に存在するか!?」

「川と田んぼにか?」

 御屋形様始め、この部屋にいるお歴々の方々が仰け反られた。


「で、イオタ! ミウラの主は退治可能と仰せであるか? 放置すれば稲作の危機である!」

「いやそれが、可能かと申せば可能でござるらしいが、数が多すぎて対応は難しいと仰せになられておりました」

「それは……」

「問題であるな!」

 皆様、頭を捻られておられる。


 ミウラはカイの魔獣退治に消極的でござったな。嫌がっておった。某も嫌がるものを無理強いさせたくはない。嫌がるとは苦手であると同じ事。苦手な相手と戦うは命を危険に晒すこと。そんな危ないことにミウラを係わらせたくない。


 ……うん、そもそもでござるな……


「そもそも、カイの国はミウラの主の縄張りではござらぬ。カイの国で魔獣が出てきても、ミウラの主は退治に出てはくれぬと思う」

「あ!」

「そうか!」

「そうである!」

 皆様、小膝を叩いて唸られた。


 セナ様が扇子を膝に突き立てられた。思い切ったことを言うときの癖にござる。

「御屋形様、カイの国の件に関しまして、絡繰りを用いねばなりませぬぞ!」

「ふーむ……」

 御屋形様は唸られている。


「……鉱山があるので手放すわけにはいかぬ。さりとて、領地経営に乗り込むのは危険。ここは思案のしどころ、だな」

 うんうん、ふむふむと問われ唸られをお一人で繰り返されている。


「あそこに深く手を出すと、シナノとぶつかる。シナノの先はエチゴ。いずれ頭角を現しつつあるナガオ家と衝突する。うむ、カイの国、直接支配は諦めよう。だれぞ息の掛かった外様を代官として当てよう。その方ら、それを基本として献策せよ!」

 ほー……さすが御屋形様にござる。かような考え、某には浮かばぬ。尊敬すべき偉人にござる。


 またセナ様が扇子を膝に押しつけられた。グリグリとこじられておられる。

「代官は、わざと地区を分けて複数名。ムラカミとウンノの取り分も多く、こちらの味方に引き寄せる。米よりも鉱山。その辺でこちらの実入りが大きく、有利になるような交渉を。シナノ衆に恩を着せる。名を捨て実をとる方針でいかがでございましょう?」

 

 御屋形様が目を閉じられた。しばしお考えでござる。

「とりあえずはその方向で……と言いたいところであるが、情報が少なすぎる。イオタ!」

「へい!」

 急に振られたので、デンスケみたいな声が喉から出てしもうた。


「カイの国は、どこの神獣様が守護しておられるのかな?」

「はっ……」

 そう言えば、聞いたこと無いなぁ。


 この周辺だと、ミノウ、カシマ、カトリ……イズモに全員が集結したわけではござらぬから、全部の神獣様を知っていることにはならぬ。


「申し訳ございませぬ。若輩者に付き、カイの国のことは勉強不足でございました。ミウラの主にお聞きして参ります」

 

 して――

『スワの主が縄張りにしているって聞いてましたが……イズモには来ておられませんでしたねぇー。どんな神獣なんだろう? そいえばお隣に住んでいながら一度もご挨拶に伺ってませんねぇ』

 ミウラも知らぬか……ならば――


「ミウラ、一度スワの主に会ってみる気はないか?」


 前から気になっておった。カイの国方面より魔獣の侵入回数が多すぎる。ニホンチュウチュウとやらの細かすぎる魔獣対策で手一杯だとか? まさか手を抜いておられるのかも? 

 いったいどの様な神獣様か、会って話を聞いてみたい。話次第では対応が変わってくると思うのだ。


『えー! やだなー! スワへ行ったことないから跳躍できないんですよ。わざわざ歩いてスワまで行かなきゃ。面倒くさいです!』

 こやつ、こう見えて人見知りの出不精にござるからな。……ではこうしよう。


「江戸にいた頃、諏訪湖の北に古い温泉があると聞き及んでおった。……行ったついでに温泉に浸からぬか? いっしょに」

『参りましょう! もちろん全裸で入浴、ですよね? ね?!』


「――というわけで、ミウラの主共々、スワの主様にご挨拶に伺いたく存じ上げます」

 ミウラがカイの国、並びにスワの主のことを気にしているから、と理由を付けた。


「ふむ、それは願ってもないこと。是非お願い申し上げる。そのように私が言っていたとお伝えしてほしい」

 御屋形様から、お許しが出た。依頼までされた。

 カイの国支配のために、魔獣を押さえることが重要でござるからでもあろう。


「えー、つきましては……、スワまで歩き旅となりますので、詳しい地図か、スワに詳しい道案内人を手配していただければ、心強いのでござるが……」

 ここで上目遣いにござる。美少女の上目遣いお願いは、時に国家を揺るがすと聞く。


「うむ、もちろん手配しよう。護衛も付けねばならぬな」

「で、ございましたら、足の速い者、万が一の場合、自らの身を守れる者、さらに自力で帰れる者、この条件で、一人だけでもかまいませぬ。なにせミウラの主の足は速い。某も獣人化しておりますので、ミウラの主並みに速い。常人の全力疾走並みでございます」


 護衛とか案内人の速度で旅はしたくない。こちらの都合の良い速さで歩みたいのでござる。

 ミウラと自分勝手な旅を楽しみたいから、行列は困る。少数精鋭でござる。中小規模経営者が大好きな言葉でござる。あと、即戦力。ちなみに、某が好きな言葉は人海戦術と物量作戦、それに後方支援でござる。


 ここからスワの海まで四十里ほどあると聞くが。できれば、片道2日でスワまで辿り着きたい。


「うーむ、神獣様と併走するにあたり、人が馬に乗るのは失礼に当たるからのう……」

 神獣様と騎乗の組み合わせは、なぜか失礼とされている。たぶん、神獣様の体躯が馬並みなので、馬扱いしていると見なされるからだろう。知らんけど。


「なんとかしよう。で、出立はいつを考えておるのだ?」

「明日一日で用意をして、明後日の日の出とともに」

「ゲフッ!」


 御屋形様が咳き込まれた。解せぬ。



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