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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
キョウ編

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10.イナリ大社へ

 上キョウも、そこかしこの屋形や塀が焼け落ちている有様でござる。焼け落ちなくとも、塀が崩れたり焦げたりしているところが目につく。


「キョウは、平和でやんごとなき王朝絵巻だと思うておりましたが、これは(いささ)か……」

『アシカガ同士、ホソカワ同士の戦いだ。下キョウはもっと酷かったろう? むしろ遠国の方が落ち着いているぞ』

『人同士の争いです。わたしたちは知らぬ存ぜぬでございますよ。ええ、すべての人どころか手の届く人だけでも助けるには多すぎます。キャパオーバーでございます』


 神獣二柱と怪しいネコ耳が揃って歩いているから、目立つことこの上ない。

 驚く人や、正体に気づいてドゲザする人、お祈りする人、助けて欲しそうに手を伸ばす人。一切かまうことなく、早足で歩いて行く。

 神獣様は体力のバケモノにござる。巫女たる某もネコ耳獣人化のお陰で、体力は人並み以上にござる。それらが早足と言えば、もはや走る速度と同等。あっという間に鴨川へ到着した。鴨川沿いに南下すれば目をつぶっていても通り過ぎさえしなければ、フシミのイナリ大社に到着するとのこと。


「追っ手はかかっておらぬようでござるな?」

『追っ手が掛かるのは今よりだ』

『ここまで歩くだけで目立ってましたからね。ご注進! に命を掛けてる人達が走ってますよ。どこにでもそんな人いますからねー。東風様のお家にも一人や二人はおりましょう』


 船に乗るという手もあるにはあるのでござるが、神獣が船に乗るの? という違和感により却下された。


「橋は?」

『ずっと南に三条大橋がある』

 めんどくせぇ!


 上だか下だかのカモ神社を望む三角地帯の川面に足を入れた。

 水温む春にござる。鴨川の水で足を洗う。雅にござる!

 じゃぶじゃぶと流れを掻き分け、東側対岸へ出た。


 川沿いの土手? 道? をのんびりと、それでいて急ぎ足で南下していく。

 ここまで来て、ようよう腰に巻いていた尻尾をだらりと下げる。尻尾が揺れてないと歩きにくいのでござるよ。


「三月ともなれば、桜の枝も色づいてくる」

『新暦で4月ですからね。桜の枝がピンクっぽく見えますね。さまざまの、事思い出す、桜かな。風情でございますなぁ』

「ミウラは花より団子だと思うておったが?」

『いやですよー。花も団子もですよー』


 鼻先に米粒付けてネコの恋。



 先ほど、東海道っぽいのを跨いだので、一度は増えた人も少なくなったきた。

 蝶々も飛んでおるし、蜂も飛んでおる。人は某らを避けて行くから、道は借り切り状態。

 前を歩くフシミの主様の尻尾が揺れて、付け根から見える肛門は菊紋だった。神獣はウンコするのだろうか? 某はする。


 いやぁー、良い天気にも恵まれて最高の行楽日和にござる。


『むっ! 追っ手の気配!』

 隣で暢気に蝶々を追っていたミウラが、耳を立てた。のんびり終了でござる。

『武装しておるな。十人かな?』

 フシミの主も、耳を斜めに傾けている。


 某にはまだ察知出来ぬ。頭に乗っけた笠の下で耳が折り曲げられておるから、遠くの音を拾いにくいのだ。


「また面倒な……」

 耳が萎れるでござる。


 フシミの主が首を伸ばして遠くを見る。

『イナリの山も見えてきた。道を逸れて山に入ろう。付いてまいれ!』

『イエス、マイマジョリティ!』


「おいそこのお前! 人に聞かれたら、この街道を真っ直ぐ走っていったと答えておけ!」

 神獣を目にし、道端でドゲザしている商人ぽい男に声を掛けた。

「迷惑は掛からぬ故、案ずるな。我らの行き先は先様に知られておる! これは神獣様の頼みと心得よ!」


 言い捨てて、フシミの主の後を追い、山手に走る。 

 

 して――

 山に入り込んだ所で小休止にござる。喉が渇いたので水筒の水を飲んでおく。


『どうやら、追っ手をやり過ごしたようだな』

 フシミの主が切れ長の目で街道方向を睨んでいた。


「追っ手を差し向けて追いついたとして、神獣様相手に何をする気でござったかな?」

『イオタの旦那がいるから、政治の道具に使えると思ったんでしょうよ。ホソカワ同士で無駄につぶし合っててください。どうせミヨシに取って代わられたあげく、ぶち殺される運命なんですから』


「アサクラにロッカクも、ハタケヤマにタケダ、シバもでござるな」

『アサクラはオダに。ロッカクは自滅。ハタケヤマとタケダとシバは大怪我。なにをかいわんや』


「内乱に参加しておるお方々は、没落し、台頭してきた部下に取って代わられる。少し前にもミナモトとタイラの例があるのに、自分だけは違うと思うてござる。世の無常。盛者必衰でござるな」


 某とミウラは、しみじみと物思いにふける。遠い世界の物語ではない。ここ数百年前後に起きた、かつ起きる出来事にござる。


『現在オダはアサクラの下っ端でしたね? どうやってオワリに流れ着いたんでしょう? もう居てるのかな?』

「さて、……そういえば、トクガワって家名は、まだ耳にしとらんなぁ?」

『トヨトミは朝廷から頂いた名前でしたっけ? ハシバ? ハシバが誕生するにはまず、シバタとハニュウがおっきくならなければ。これからでございますなぁー』

「いったい今年はいつ頃なのでござろうかな?」


 年号を言われても聞いたこと無いし、アシカガ公方様の名前なんか記憶してないし。恐れ多くも、イマガワの御館様の名前を聞いても知らないし、せめてヨシモト様かウジサダ様のお名前を聞くまでは。あと、ノブナガ、ケンシン、シンゲンあたりの名前を聞かねば、今がいつなのかも解らない。


『わたしも、ノブナガ公以後しか覚えてませんからね。それ以前だと、まったくです。でも、遅くても数十年後には、ネームドが誕生するはずですよ。それまでイマガワは比較的安定していたはずですから。たぶん』

「焦るでござるが、焦っても仕方ない。お握りでも食べよう。がさごそ。おっ! 大きいのが三つある。皆で一個ずつしよう!」


 お弁当の包みを解くと、大きなお握りが出てきた。旨そうだ。


『せっかくですからいただきます。あむ!』

 ミウラの食いつきは何時もの様に良いのな。


『私は……いや、せっかくだからいただこうか』

 鋭い牙が左右にズラリと並んだフシミの主の口。大きく開いた凶器陳列罪的な口に、お握りを入れる。


『私の牙だが、怖くないか?』

「全然?」

 そして、某もひと囓り。

「うむ、塩気が利いていて旨い! もぐもぐ!」


『うん、久しぶりの握り飯は旨い。ところで……』

 フシミの主がモグモグゴクンされた。

『ところで……二人の関係は、神獣とその巫女の関係ではないだろう?』

「ごっふッ!」

 一度変なところに入ったけれど、すぐに出てきた。危ないところでござった。


『え、えーっと、おかしなフシミの主ですなぁー。何でそのような変に間違ったことを?』

 フシミの主は勘が鋭い。このお方を前に、あまり前世のことを言いたくない。まだそこまで神獣様を信用しておらぬからだ。


「そ、そうでござるよ、そんなことあり得ぬでござろう? あはははは……」

 フシミの主は、某らが黙るまで無言でござった。あまりに無言だったので、なかった事にしたのかな、と思うた時でござった。


『イオタはミウラの主をミウラと名前だけで呼んでいた。ミウラの主は、イオタを「イオタさん」とか、「イオタの旦那」、もしくは単に「旦那」、と呼んでいた』

『ええー!』

「ど、どうしてそれを!」

『お主達が気づかれていないと思って事が「ええー!」だ!』

 うっ! マヌケは某らであったか! 反論出来ぬ! 言い訳すら思いつかぬ!


『ちゃうんですよ! ちゃいますねん!』

 何故関西弁だ、ミウラ?


『……まあよかろう。男女の関係だと言い返されたら反論出来ぬ』

「大体そんなところより派生した問題でござる。かといって、神獣様を蔑ろには致しておらぬよ」

 その辺で納得して頂こう。


 フシミの主はウンウンと頷いておられる。説得できたでござる。チョロイでござる。

『しかし、大家の没落と新興家興隆の話が解せん。未来の話だぞ。これは説明が付かん』

「げっふんげっふん!」

『ちゃ、ちゃうねん! ちゃいますねんって!』


 誤魔化しが利かぬぞー……

 知識だとは口が裂けても言えぬ。万が一、某らの正体、前世と前前世が知られれば、個性豊かな神獣様がどう動くか解らぬ。一柱でも敵に回すと即死亡でござる! ……オッパイ見せたら、温和しくなる自信があるものの、冒険は慎もう。


 さてではどう切り抜けるか……

「……えー……落ち着いて聞かれよ、フシミの主。未来の話と仰せでござるが、えーっと……」

 さっそく話に詰まったでござる。

『知られたくなかったのですが……仕方ありませんね。フシミの主、他言無用のお約束が出来ますか?』


 おお! ミウラ! なんぞ思いついたか? ミウラがこうやって高圧的に出たとき、大概上手く誤魔化せる。相手の反応を見ながら、落とし込む(ゴール)を移動させる秘技にござる!


『う、うむ、約束しよう』

 おお、フシミの主が身構えられた。ミウラの術中に嵌まった証拠にござる。


『近々の未来は知覚出来ません。何十年か、或いは百年か? 始まりがいつなのか、それはわたしにも解りません。ですが、……およそですが、えーっと……』

 計算しておるな!


『……400年から500年先の出来事を知る力を持っております。眷属扱いのイオタさんで50年から100年弱ですかね? 能力の名称は解りません。未来視? 目じゃないなぁ……そう、知識? 知識が頭の中に存在するのです。それも一度きりで、以後修正が掛かってません。むしろ、この能力が何なのか知りたいですね』

 一気に喋り上げよった。お得意の情報飽和攻撃にござるな!


『そうか……私も、そのような能力は初めて耳にする。ミウラの主だけでなく、イオタにも……うむ?』

 フシミの主が小首を傾げられた。

 え? なにか話の矛盾を見つけられた?


『ミウラの主はまだ若い。顕現して二十年と経っていないと記憶している……』

 そこから何処に繋がるのでしょう? ドキドキ。

『えー、十六年ですかね? それが何か?』

 ミウラ、あまり言葉を継ぎ足すな! 嘘がバレる!


『イオタは十五年か? 今年で十六年だな。お主ら二人は揃って生まれるべくして生まれた特別な主と巫女なのかも知れぬ。仲の良い主と巫女が揃った事も頷けそうな? 頷けなさそうな?』

 またもやコテリと首を傾げられた。いかん、疑問点を追求されるのを阻止せねば!


「いやー、そういう事でござったか! さすがフシミの主! 賢者でござる! 賢神フシミの主でござる!」

 そう言う方向で押し切ろう!

『え?』

 思考を停止しておられるうちに畳み込むに限る!


「そこで最初の某とミウラの主の関係が関係してくるのでござるな!」

『なるほど! あの説はこの解説の前振りでしたか! なるほど! さすが賢神フシミの主! 全てお見通しだ。そして、わたし達の謎も解ける! これでスッキリしましたね! イオタさん、あなたずっと悩んでたじゃないですか!』

 うまい! 上手く鞠を投げたな、ミウラ!


「おおおお、頭がスッキリいたした。某の生まれた理由がッ! 何のために生きてきたのかっ! その理由があったのでござるな! 某の生まれてきた意味が! よかった。良かったでござるよミウラの主ぃー!」

 飛んでミウラに抱きついた。そして声を上げての嘘泣き!


『うう、イオタさん、泣かないで。あなたが泣くと、わたしまで泣きたくなってくる!』

 二人抱き合って、オイオイと嘘泣きにござる。


『うむ、そうか。いまいち解せぬ部分があるが、それは二人が追々解明していくことだろう。良かったな、イオタ』

 フシミの主も湿った目をしてウンウンと頷いてくれている。


 そう、追々解決していこう。


 ……ちょろい。


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