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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
キョウ編

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5.キョウへ・比叡山


 そして、三月でござる!

 あっという間に桃の節句にござる。


 正月からこっち、何度も何度も魔獣を退治しておった。やたら出てきおるのだ。

『どうやら魔獣発生のスポット期間に入っていたようです。その反動で、これよりおよそ一月は確実に魔獣が発生しないボーナス期間でございます。わたしの神獣レベルが上がったんで、縄張りを遠く離れていても魔獣が発生したら察知できるようになりましたし!』

 四月になるまで魔獣がやってこない、やってきても対処できる、と申しておるのだな?


『そういうことです。ずっと働きづめでしたし、お休みも兼ねてキョウへ行きませんか? フシミの主との約束もありますし』

 イズモで一悶着があった際、フシミの主の縄張りであるキョウへ招待されておったのでござるよ。

 とうことで、キョウへ行くことになった。


 イマガワ館へはお知らせ済みでござる。御屋形様からも「フシミの主とよしみを深めてくるように」とのご下命をいただいておる。お駄賃もいくらかもらったでござる!

 あと、清酒をよろしくね、と申しつかったので、酒の製造元で技術指導を行っておいた。イマガワの特産品となろう。


 キョウ行きにござる! 

『なんか、やたら気合いが入ってますね旦那? 別に許可なんか要りませんよ。今から行ってきますで済む話ですから』

「これだからネコは! キョウでござるよ! あのキョウでござるよ!」

 文化の中心! 絢爛豪華平安絵巻! 紫だちたる雲のたなびきたるでござるよ!

『あーはいはい』

 まともにかまってくれなくなったでござる。

  

 して、明日朝、出発でござる。ふんす!


 用意をしている間、ミウラが何処かへ行っていた。すぐに戻ってきたが。

『ご近所へ挨拶に行って参りました。キョウ旅行するときは、スルガの魔獣退治は任せよと、近隣の神獣様より約束を頂いてましたから。レベルの低いわたしにとって大助かりでございます』

 魔獣対策はこれで万端にござる!


「着物履き物はこれ位にして、おやつは……」

 そうこうしておるうちに日が暮れようとしている。


「ささ、寝るでござる。睡眠という意味の寝るでござる」

 ささっと寝床の用意をして、横になる。

『目がギンギンしてますね。遠足に行く小学生みたいだ』


 して、翌朝。まだ日が昇ってない内から目が醒めた。

「さあさミウラ。朝にござる。早く起きねば!」

『うえ? うええぇー……まだ東の空が白み始めたばかりですよ。興奮しすぎでは?』

「何を言うか! はやく神獣の巫女装束を出せ!」

 ポイポイと寝間着を脱いで全裸になる。

 ドビュルッ! ビュルルルー!

 いかがわしい効果音とともに、巫女装束着装でござる!


『ふぅ! 堪能いたしました。では、朝ご飯を頂いたら出発いたしましょう』

「うむうむ」

 早めの朝ご飯を頂いた。


 してて――


『行ってきまーす! 跳躍(ホゾン・ジャンプ)!』

「行ってくるでござる」

 ミウラに跨り、虹の輪を潜る。

 イズモへ行ったときほどの長い時間が過ぎ、またもや虹の輪を潜り現世へ出ることが出来た。  


 目に飛び込んできたのは鬱蒼と茂る木々。

 開けた土地に赤い鳥居。その向こうに神社の境内。さらに向こうには連なる連山。

 珍しく、山上に建てられた神社にござる。

 比叡山山中のヒエ大社にござる。


「延暦寺では、ない?」

『仏教が来てませんからね』

 して、鳥居をくぐると、ポツポツと青白い火が出現。ユラユラと揺れる。


「これはこれは、ヒエイの主。わざわざのお出迎え感謝いたします」

 ゆらーーーと空気が揺れて、大きな狐が姿を現す。まるで透明だったのが姿を見せたかのような視覚効果でござる。


『その出現方法、格好いいですね!』

「たしかに、なんだか心がワクワクするでござる!」

『うふふ、そう言ってくれるのはミウラとイオタちゃんだけだよ。さて、ようこそヒエイへ。まずは、ヒエ大社の皆さんに挨拶してくれるかな』

「よろこんで!」


 フシミの主の九つの尻尾を見ながら、某とミウラが参道を歩いていく。

 すると、ワラワラと神職の方々が集まってこられた。フシミの主が突如としてお外へ出てきたのので、何かあると察して、出てこられたのでござろう。

 そして片っ端からドゲザしていく。某にではなく。フシミの主とミウラに対してでござろう。

 

 一番の偉いさん……であろうお方と挨拶をする。

「初にお目見えいたす。某、ミウラの主の巫女、イオタと申す者。宜しく願い申し上げる」

「あ! おお! お手紙を書いていただいたイオタ様! ヒエ大社の宮司でございます」


 イズモの一件で、フシミの主は、帝ともう一方に手紙を書くように言いつかっていた。その宛先が、フシミの主が常宿としているヒエ大社の関係者でござった。

 お手紙の中は、某の立場と仕事と挨拶を書き込んでござった。故に、宮司様は某のことを知っておる、と言うわけにござる。


「そして、このお方がスルガの神獣様、ミウラの主にございます」

「「「へへーっ! かしこきも(以下略)」」」

 ものすごい丁寧なドゲザ挨拶をされているのでござる。


『前回、一度会ってますけど、言葉が通じないんで名前も何もかも知らなかったはずです。フシミの主と一緒に居てましたから、お友達かなー、程度の認識でしょうね。魔獣と勘違いされなかっただけ良かった』

 で、ござろうなー。


 して――

 本殿に招き入れられ、お座りをしておるわけでござる。フシミの主とミウラに従う形で。


 そこで、大宮司と小宮司様よばれるお方とお引き合わせいただいた。小宮司様は事実上、ここを差配されるお方でござる。先ほどの宮司様は、三番目の地位で、いわゆる実働部隊の長を務めておられるらしい。

 大宮司様とは……こ、ここ、ヒエ大社の最高位で有らせられ、畏れ多くも、帝の弟君であらせられるッ!

 上座でも下座でもなく、横対面でご挨拶にござる! 

 どッ、ドゲー座でござる! 


『イオタがそれで良いのなら、それでよいが……』

『神獣様の巫女は、大宮司様より上の地位でございますよ』

 それで大宮司様もドゲー座でござるか?

 どうにか、大宮司様のお姿を冷静に観察することが出来るまでに落ちついたでござる。大宮司様は男前の青年でござった。


 んで、大宮司様、小宮司様、宮司様、その他、高位神官、禰宜? 様方を前にして、イズモで起きた事件を詳しくお話ししておいた。

 体調を崩し、イズの温泉で療養してきたことも話しておいた。


「なんともはや!」

 話を黙って聞いておられた神官の方々でござるが、開いたお口が塞がっていないでござる。やっぱりそうでござるよなー。

「よくぞご無事で……」

 大宮司様は、目を潤ませて某を心配してくれた。いい人だ。


 そして、某の口を介して、フシミの主と大宮司様、および小宮司様が会談を成された。これまで、聞きたかったこと、疑問に思っていたことなどが、次々に解決されていく。片っ端から文字に起こされていく。


『まるで警察の調書ですな!』

 朝一番に始まって、厠休憩以外、ずっとお喋りしぱなしでござる。の、喉がゲホゲホ!


「ちょっと待って欲しいでござる。喉が痛くなってきてしもうた」

「それは! 申し訳ございません! なにか喉を潤す飲み物を!」

 またもや頭を下げられたでござる。某の身分は、宮司様より遙かに下でござる。尻の据わりが悪いでござる。


『えー、でしたら、わたしが回復させましょう。弱回復(ホイミン)!』

「その呪文、何やらアヤシイでござる……おお! 喉の調子が滑らかに!」

 効果は抜群でござった。宮司様の目がまん丸になった。


 してて――

 フシミの主とミウラに聞きたいことを聞きだした大宮司様は満足げでござった。

 取り調べも一息ついた頃。頃合をはかられたのでござろう、小宮司様が話題を変えてこられた。


「イズモの大社の一件でございますが、その後の事、お聞きになられましたか?」

「いえ、スルガは遠くでございますから、話は流れてきません。それに、あまり興味がございませんから」

「ふむ……」

 と、一言挟まれた小宮司様は、大宮司様に視線を向けられた。大宮司様は小さく頷かれる。


「興味がないとおっしゃるが、避けては通れませぬ。現状をご説明いたしましょう」

「聞きたくないのでござるが」

「これが、知らぬ存ぜぬでは通らなくなりましてな」

「ですから、知りたくないと」

「イズモの国造殿が、イオタ様に危害を加えた勢力を粛正しようと動かれたのですが、逆に撃退されました。下克上にございます」

「え?」

『え?』

『え?』

 某とミウラとフシミの主が、そろって目を丸くした。


「帝はこれに激怒なされ、反乱した勢力を朝敵と仰せられ、イズモ地方を管理するアマゴ氏に討伐命令を出されました。勅命でございます」

 大事(おおごと)でござる!


『あの人達、まるで人と違う生物みたいだ』

『信じられぬ事をするのが人である。あの時、こうなる可能性に思い当たっても良いはずであった』

 某も同感にござる。あの者達は、想像の枠を軽く飛び越えていきおる。


「では、血の決着を見たと?」

「はい。結局、戦になりまして、鎮圧できたのは一月に入ってからでした」

 なんともはや……。


「某のせいで、戦が起こったでござるか……」

「あいや! イオタ様のせいではございません! 朝廷もこの件を恥じておられる。ムロマチ殿にも叱責が飛びましたからな」

「それこそ大事(おおごと)ではござらぬか!」

『わたし達には関係のない話ですよ』

『そうだ。イオタが関係したのは出雲の地を去り、文をしたためたところまでだ。あとは人の(まつりごと)。我らが立ち入る必要はないし、立ち入ることは出来ぬ』

「ま、まあ……フシミの主がそのようにおっしゃるなら……」

『あれ? わたしの言葉は?』



 しててて――


 大宮司様、小宮司様、宮司様の三方が、某のため、宴を催してくだされた。

 宴と言っても、神社で提供される中でのご馳走でござるから、イマガワの御屋形様が食される系のご馳走ではない。ささやかながら、贅を尽くしたお料理にござった。……ぶっちゃけ、前世での精進料理系にござる。芸術作品でござる!

 ウマウマでござる。


 フシミの主は、ミウラと神獣様同士のお話があるとの事で、奥へ引っ込まれた。

 ある程度、食事も進み、少量でござるが酒も入った頃合いにござる。

 小宮司様が、おずおずと、遠慮気味に話を向けてこられた。


「イオタ様。ミウラの主の巫女として、お話を伺いたい」

 持って回った物の言い方にござる。これは、アレでござるな。個人的な、或いは神獣様の巫女に関するお話にござるな。


「かまいませぬが?」

「誠に失礼な物の言い方をするやも知れませぬ。気に障ることを申しましたらご指摘下され。お話は中止し、謝罪を申し上げます」

 三者揃って頭を下げられた。これは、相当に突っ込んだ話でござるな。

 某も箸を置き、姿勢を正した。


「お話というのは……」

 それは、とんでもない内容でござった。


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