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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
イズモ編

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6.神獣たち

『イズモの大社(おおやしろ)は高層建築にございます』

「うむ」

 この時代の常識として知っておったよ。忘れておったが。


『高層建築と言っても、マンションの3階ほどの高さでございます。階段が真っ直ぐで手すり無しの一本なので、ちょいと恐怖を感じますが。あんなもんです』

 大社というか、天辺に建ってる神殿の幅と同じ幅の階段でござる。奥行きも広い。人の足で二三歩は歩かねばならぬ。これ全て神獣様規格にござる。

『さあ、上りますよ。わたしは毎年ここを上ってるんですからね。つらたん』

 つらたんにござる。

 

 して――

 階段は、二階部分ほどの高さで、広い踊り場? そこだけ階段の幅が広い。イオタ家の家ほどの広さでござる。小さな小屋まで建っている広さ。神獣会議期間中、ここに神官が詰めるのだそうな。

 最階上に御殿というか、本殿が鎮座してござる。入口は清水の舞台もかくやという規模の縁側? にござる。


 本殿は、とても大きな広間にござる。太い柱が何本も立っていて、重そうな屋根を支えておる。四方は欄干? みたいなのが有るには有るが、吹き抜けでござる。景色が大変宜しい。高所恐怖症に優しくない造りにござる。

 正門でござろうか、重厚な扉が開けっ放しになっており、そこをくぐって中へはいる。


 入る前から見えておる。神殿の中に猛獣が沢山。全てミウラより一回りも二回りも大きい。

 四つ足はもちろん、足のない蛇型や羽を持つ鳥型もおられる。

 数えると、ミウラを除いて十三匹、もとい、十三柱でござる。

『全員が集まったわけじゃないですよ。日本にはもっと多くの神獣がいてますから』


 足を踏み込んだ途端、某に集まる鋭い目、目、目でござる。だいたいが三角形をしておる目でござる。

 どれもこれも一癖も二癖もありそうな面構え。獣であって獣を越えた圧がにじみ出て、お互い周りを威圧しあっておる。手を一つ叩けば、それが合図となって殺し合いが始まりそうにござる。


『ちーす! おっぱようございまーす!』

「こ、これミウラ! 口が汚い!」

 とても軽い口調のミウラ。殺されるでござるよ!


『おー! ミウラちゃん!』

『一年ぶりだのう』

『元気しとったかの?』

 それぞれ、尻尾が沢山の狐と、人を丸呑みに出来そうな大蛇と、牙が左右に二つずつ顔を出した大猪にござる。全部、某より背が高い。


『おい! となりの女の子は誰だ!』

 大鶏が翼で某を指している。面倒ごとがこっちに降ってきた。

『ああ、この人はわたし付きの巫女様でイオタさんといいます。イオタさん、怖がることはありません。みんないい人達です。さあ、御挨拶(デビュー)を』

 ミウラが紹介してくれた。


「えー、ただ今ご紹介にあずかりました、ミウラの主『専属の』巫女で、イオタと申す者にござる。以後宜しくお引き立ての程お願い申し上げます」

 途中、専属の、との余計な言葉が入ったが、挨拶はよどみなく言えた。


『え? イオタは我らの言葉を聞き取れるのか?』

「聞き取れまする」

 そう、某、お話が出来るのでござるよ。


『神獣の巫女ということは?』

『しかも、ネコ耳ネコ尻尾とは?』

『ミウラの主、キサマ、あれかッ? 毎夜毎夜ッ! あれか?!』

 え? そっち!?

『もちろん。可愛いでしょ?』

 自慢するなミウラ!


『最年少の分際で、ずいぶん我らをコケにしてくれる』

『それよりも、可愛い巫女さんじゃないか!』

『うむ、可愛い。チッ、仕方ないのお』

 大丈夫でござるか? 日本の神獣の皆様方?


 某を中心として、ウロウロと周回する神獣の皆様方。中にはクンカクンカと匂いを嗅ぐお方もおられる。

 時間と共に周回される神獣様の数が増していく。助けて!


『まあ待て皆の衆。一旦落ち着こう』

 巨大なウサギの神獣様が、間に入ってくれた。そこそこ、落ち着いた声にござる。見た目は愛くるしいが、お年を召した声にござる。……満を持した登場しておいて、尻の匂いを嗅がないでいただきたい。


『この巫女は、我らの言葉が聞ける。人に言葉を伝えられる』

 ギュォオッ!

 これ、ウサギ殿!

 勃起の気配を感知する能力を切っておくでござる。


『おお!』

『これは貴重な!』

 何やら驚きと感動の波動が輪になって広がっていくのが目に見えるのでござる。怖いでござる。


『ならば、我ら長年の忸怩たる思いを神官共に伝えられる!』

 つぶらな瞳のウサギは、うんと背を反らし、天井に鼻面を向けた。

『あのことか!?』『まさか、そうか!』『この子の能力を使えば可能だ!』

『明日の正午だ!』『今ならギリギリ間に合うはずだ!』

 ザワザワと空気が揺れる。いや、この広間の空間が揺れている?

 何でござるかな? 世界の危機でござるかな?


『神獣の巫女イオタよ、時間が無い。我らに協力せよ!』

 どぉおーん! とウサギの鼻面が某に迫った! お鼻がピクピク動いているのな。

 危機でござる! お話が急展開するでござる!



 神殿の広間を出ると、広い舞台が作られておる。そこで、国造様ならびに、神官の方々が揃って様子をうかがっておられた。言いたいことは色々あるが、むしろ好都合!

「国造様、国造様!」

 某、手に持った書き付けを振り回す。このような内容、全部頭の中には入りきらぬ!

「如何致しました神獣の巫女様!?」

 国造様が腰を上げられた。表情に緊張が走る。


「こ、これを神獣様からのお言葉です! 殴り書きで汚いので、某が読み上げます。清書して手配してくだされ!」

「おい誰か! 紙と筆を持て!」

 何人もの人々が右往左往した結果、すぐさま紙と筆の用意が調った。

「今から、書き付けを読み上げるでござる! 明日の正午までに間に合うはず!」

「明日の正午? まさかそれは!? はっ! 直ちに!」

 準備の時間を考えれば、なりふり構っておられぬ。国造様が床に紙を広げ、筆を持たれる。


「これから申し上げる物を神獣様一柱に付き、およそでよいので二斤ずつ用意なされよ!」

「ははぁ!」

 神官方全員が畏まった。


「まず、スルガの神獣様ミウラの主は知っておろう? あのネコでござる」

「ははぁ!」

 ははぁしか言えぬのか? 言えぬよな……。

「ミウラの主はミソを付けて焼いた猪肉!」

「はっ!」

「あそこのカモシカはトサの神獣様でトサの主。海の魚の焼いたのに塩を振ったのを所望じゃ」

 そう、明日のお昼の宴会時、膳に上がる食べ物の希望である。

「尻尾の多いお狐様はヒエイ山の神獣様、フシミの主。焼いて軽く塩をかけた鳥じゃ。雀でも良いが鶏であらば尚良い」


 これまで、意思疎通が出来なかったので、嫌いな物が上がってたり、好物を取り合っていたりした。争いの原因でござった。


「立派な角の大鹿はアスカの聖獣様、ヤマトの主。なぜか鹿肉を所望なされておる、無ければ猪でも可」

 これまで、お供え物を取り合うだけで時間が過ぎてしまい、会議で何も決まらんかったそうな。関係がギスギスするだけで、昨今、開催自体の有効性が疑われていたそうな。されど、それぞれの希望が叶えば、争うことなく平和に神獣会議が進められるとのこと。


「大ウサギは地元イズモのイナバの主。ドングリを所望でござる。虫食いがあればコロスとの仰せ。命がけのドングリ拾いにござる。大リスのヒタチの主も同じくドングリにござる。あの大鶏はイセ神宮の神獣様、まんまイセの主。魚介類がお望み。続いて――」

 そんな感じで、十四匹、もとい、十四柱分を注文。同時に、神獣様の出身地とお名前をお伝えいたした。

 イズモの国造様から感謝された。


「某は、ミウラの主と同じで良いぞ。食べる量は人間並みでござるよ。あ、ゴハンと味噌汁も付けてくだされ」

 某もこっそり便乗しておいた。


 注文を終えて戻ってくると、神獣様方はなにやら真剣な顔で打ち合わせておいででござった。

 ミウラまで真面目な顔をしておる。


 何でござろう?



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