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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
イズモ編

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5.イズモの大社

 聖獣と巫女装束の人間が並んで歩いている。

 それだけでイズモ神官の方々は狼狽えておられた。


 側までやってくると、神官の方々の表情がよく見える。あらかたが引き攣られておられる。残りは口を開けておる。

 彼らの目が、某のネコ耳と、自在に動く尻尾を交互に移動しておる。


 そして、しばし無言のお見合いにござる。

 どうにもならぬので、こちらから水を差し向けよう。面白がっておるのはミウラだけでござる。

「初にお目に掛かる。某、スルガの国の神獣ミウラの主の巫女、イオタにござる。以後宜しくお頼み申す」

 代表者らしき、最も年嵩の神官が、二・三度口をパクパクと開閉してから声を出された。

 神獣様の巫女! 伝説は本物! あの耳と尻尾は? 等との言葉が漏れ聞こえてくる。


「聖獣様の巫女、イオタ……様でございますか? わたしはこの社の宮司、イズモ国造(くにのみやつこ)でございます」

 国造様! お偉いさんにござる!

『へー、まだ国造制度が残ってたのか? いや、イズモだけでしょうな? 知らんけど』

 失礼でござるよ、ミウラ!

『ここにいるのは、ただの宮司だと思ってました。この地域の行政も司る神官でしたか』

 何度か来たと行っていたミウラにも解らぬ事が……ああ、そうであった。言葉を話せない神獣は、人と一方通行の情報交換しか出来ぬのであった。


「……あの、失礼ですが、その……神獣の巫女様は……」

 イズモ様は言葉を句切られ、失礼返しをされた。だいたい、何が言いたいのか解る。

「……神獣様のお言葉が解る……とか?」

 想像通りでござる。ミウラと目を合わせて、ほらね、と確認し合った。

「仰せの通り。某、ミウラの主のお言葉が解り申す。よって、聖獣ミウラの主の巫女に指名されたのでござる」

 ウゲっとか言うなよ神官殿!


「耳と尻尾が生えておるから巫女に成れたのではござらぬよ。これは巫女になった後に生えてきたのでござる。ちょっとした事件がござって、ミウラの主とお揃いのネコ耳とネコ尻尾が生えてしもうたのござる」

 耳をパタパタさせ、尻尾をウネウネと動かしてみせる。本物でござるよ。

「ミウラの主がおっしゃるに、某の体の二割はミウラの主の成分で出来ておるそうな。詳しいことは難しくて、人である某の頭では理解できぬ。許されよ」

 めんどくさいことは情報を制限する。さすれば、相手が勝手に推測してくれる。ミウラの言にござる。


「は、はあ……。人と神獣様が交ざり合った特別な存在であると?」

 これこの通り、自分で納得出来る理由を考えて納得いたした。

「合ってございますか? ミウラの主?」

『だいたい合ってる。人間の頭脳で理解しようとするな。って言っておいてください』

「えー、ミウラの主が仰せられるところは――」

 そのまんま伝えた。

「へへー!」

 膝を着いて頭を下げられたでござる。国造様に頭を下げられたでござる!

『イオタの旦那は権威推しですから(笑)』

 笑うでない!


『旦那、もうすでに沢山の神獣様が集まっておられるようです。誰が来てるか、ついでに聞いてくださいよ』

「うむ。ミウラの主からのお尋ねでござる。集まっている神獣様の数とお名前を教えよとのこと」

「……はっ! ははーっ!」

 一瞬の間を置いてさらに平伏された。もうドゲザにござる。

「いっ、あの、十三柱の神獣様が……アキの主と、フシミの主、イセの主……」

 あげられたのは近隣の神獣様の名前ばかりでござる

「……うっ……うへっ……うほっ……」

 声が文章になっておらぬ。


「如何された? 某を相手に緊張する必要はござらぬよ。同じ人にござる。むしろ生まれは某が下のはず」

 なんか、地面にポタポタと雫が垂れ落ちておるが、顔面から汗が出ているのでござろうか?

「いかがされた? 困りごとなら相談に乗るが?」

「ははっ! お叱りを覚悟の上で申し上げます。ミウラの主の巫女であらせられるイオタ様と違い、我らは神獣様のお言葉が解りませぬ! よって近隣の神獣様、有名どころの神獣様以外のお名前が解りません!」

 ごつんと砂利に額を打ち付けなされた!


『あ、そうか。そうだった。あんまりイオタの旦那と普通に言葉を交わすから。解っていながら解ってなかった』

「あー、なるほど。それはお困りのことでございましょう。ではこう致そう。某が各神獣様のお名前を聞きだそう。頃合いを見計らって、国造様をお呼びする。でもって、そこでお顔とお名前の擦り合わせを致そう」

 名と顔の表を作ってみるのも良いか?

「え? ではお咎め無しで?」

「はぁ?」

 国造様が青い顔をお上げになった。鼻からと目から液体が流れておる。


『イズモ大社の宮司を兼ねる国造ですからね。立場上、すべての神獣様のお名前とか知ってて当たり前ですからね。これってセプク案件ですよ』

 したりしたり! 人が聞いたら「なにやってんだよ!」とグチの一つも出よう。


「お咎め無しも何も、某、報告する立場にござらぬ。ましてや、罪を与える立場にもござらぬ。思うところがあるのならば、集会の期間中、それなりに便宜を計っていただければそれでよい」

「あ、有り難き幸せ!」

 ゴツゴツと砂利に額を打ち付けておられるが、血は出ぬでござろうな?


「この際でござる。そのほかにもなんぞ知らねばならぬ事があれば神獣様よりお聞き致そう。某も巫女になってまだ日が浅く、いわば初心者。交換条件として、イズモの先輩巫女様方にイロイロと教えていただければ感謝の極み」

 願ってもないことにございます! と感謝され、神殿内部へと国造様自ら案内された。額がすりむけて出血しておるでござるよ。

 

 して、いらんな社を右に左にと眺めながら、本殿に到着いたした。

「ここにございます!」

「ほほー……。まじっすか?」

 おもわず、ミウラの口癖が移ってしもうた。


 長大な階段。


 首が痛くなるほど見上げる高さに、巨大な神殿がござった。  


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