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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
再会編

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10.ネコ耳美少女

 イオタ・マツ、毒を盛られるも回復してネコ耳とネコ尻尾が生える!

 ↑イマココ!


 自分でも何を言ってるのかさっぱりにござる!


『イネ婆様の一族が犯人として捕らえられました』

「情報を一度に大量投入してはいけないでござるよ。……どういう事でござるか?」


『順を追ってご説明いたします。と言いたいところですが、わたしもコミュニケーションの関係で、細部までは存じ上げません。ではお話しいたします』


 ミウラの話はこうだ。

 イネ婆様の家はアシムラという。

 神獣様のお世話係として存在する家である。

 でもって、今回、何らかの理由があって、某の食事に毒を仕込んだ。毒見の役目が毒を入れたのだから、防ぎようがなかった。代々地道に勤めてくれたお婆の一族を信用しきっていたのが原因でござろうな。

 毒殺を企んだ理由は解らぬ。誰ぞ詳しい人間に聞いてくれとのこと。


 して――、某が取り込んだ毒は、致死量だったらしい。


「よく助かったでござるな? それと、ネコ耳とネコ尻尾にどういう関係がござるのかな?」

『状況と結果と分析(アナライズ)の魔法による仮説ですが――』

 ミウラが言うには、致死量の毒で生死を彷徨ったのでござるが、生還できた理由と原因は……

 ミウラの気に当てられたのでござろうとのこと。


 すなわち、ミウラが某と必要以上にベッタリしておった故、神獣の精気みたいなのが身体に溜まっておった。その精気がイイ感じに神通力を発揮して、一命を取り留めたのであろうということ。

 毒により、某の人間としての肉体が崩壊していく部位を片っ端からミウラの聖なる気が修復していった。

 修復方向がネコ型神獣ヨリヨリであった。

 結果、ネコミミ美少女が誕生したのでござる。

 終わりよければ全て良しの典型例にござる!


「して、お婆様は如何様な沙汰が下った?」

『えー……お婆様含め、一家が荷担したので、一族郎党死罪と言うことで。お婆様と実行犯は打ち首でございます。ちなみに、刑は即日執行済みにございます。イオタの旦那の目が醒める前に執り行われました』


 うーむ……普通、目が醒めた某が、事の次第を聞いたら、怒るだろうな。

 で、その怒りはミウラに伝染して、最悪の事態になる。

 ならば、そのまえにきっちり片を付け、落とし前を付け、このように処理致しました、と報告するためでござるかな?


『でしょうな。……此度のこと、真に申し訳ございませぬ。つきましては、こうこう処理をいたしました。再発防止にこうこうこういう対策をとり、即実行致しましたと過去形でご報告。でございますかな? 被害者側は、怒りをぶつける相手がおらず、責任者側は規則に則って加害者を裁いた、ごめんなさい、と。謝り方のセオリーですね』

 事の次第を聞いた某が、怒り、ミウラの主がそれを受けて暴れる。もしくはスルガの国を出て行くなどという事態を避けようとしたでござるな。


『イオタの旦那に万が一のことがあれば、イマガワ館を道連れに自爆し、スルガの地を海に沈めていたことでしょう』

「それは止めよ」

 ミウラの気持ちを嬉しく思うが、いき過ぎで御座る。されど、イマガワ館の方々のご想像はコレであったであろうな。

「しかし、何故、お婆様に毒を盛られる? 某、仲良くやっていたと思うのでござるがな?」

『ですよねー。不満なんかありませんよねー?』


 して――


「お目覚めでございますか?」

 セナ様が、畏まった直垂姿でやってこられ、畏まった姿勢で頭を下げられた。木っ端な家柄の某に、イマガワ家重臣にして、イマガワ家ご親族筆頭に頭を下げられると、生きた心地がせぬのな。

 着替える間もなく、お越しめされたので、そのまま寝具の上に正座してお迎えした。


 しかも、イマガワ館に詰める重臣の方々打ち揃って頭を下げておられる。なんの拷問でござるかな?

『死ぬ一歩手前でしたからですかね?』


「此度の一件、誠に申し訳なく。御屋形様自ら出向かねばならぬところでございますが、まずは家臣一同を代表して、お詫び申し上げます。この通りにございます」

 ドゲザされたでござる! イマガワ家男子系列親族次席家当主に頭を床に付けられたでござる!

『セナ家ってそんな地位でしたっけ?』

 うるさい! だまれ!


「いや、その様に頭を下げられては! 某の方が恐れ入るでござる!」

 某の日本語おかしくない? 羽織っている小袖を撥ね除け、こちらもドゲザにござる。尻尾がビシバシ床を叩いているでござる。


「何を仰せか巫女様。毒でお命を危のうしただけではなく、お姿も、その、その様に!」

 ネコ耳ネコ尻尾でござるかな?

 普通の人にとって、この変化は辛かろう。見た目は妖怪。人として人生が終わりを告げたような物。と思われてビクビクしておられるのだ。


「いや、これはこれで可愛いからお気に入りでござる」

「確かに可愛ゆうございまするが、巫女様へ多大なるご負担をお掛けいたしまして、面目次第もございませぬ! この後、場所をあらため、御屋形様からもお詫びが入ることになっております。此度の一件、平に、平にご容赦を!」


 別に怒ってないよと伝えたいのでござるが、駄目でござるな、これは! 常識的に考えて、ネコ耳ネコ尻尾が生えてきたら、自死を考えるほどの不幸ごとでござるからのう……

『イオタさんにとっては、ようやく通常営業に戻っただけですけどね』

 それでござる。

 されど、このままでは埒があかぬ。


「セナ様。頭をお上げ下され。許すも許さぬも、某、経緯がとんと分からぬのでござる。イネ婆様のアシムラ家でござるか? 主犯であるという事だけはミウラの主よりお聞きいたした。詳しいことをお聞かせ願いたい。ますはそれからにござる」

「ははっ! さすれば――」

 セナ様に詳しく説明していただいた。


 まず、アシムラ家が某を対象とした毒殺行為に及んだことは、数々の証拠があり、明白。最終的に自白もあり、犯人確定でござる。

 して、犯行に及んだ動機でござるが――


「はぁ? 某に仕事を奪われる? アシムラ家の権威が失墜する?」

「その様ですな。アシムラ家複数の者から自白調書を取りました。イネもその一人です。つまり――」

 某がミウラの巫女になるまで、アシムラ家とお婆が巫女的立場であったそうな。ちょこちょことミウラの権威を利用して、いい顔をしておったそうな。

 そして、某爆誕! アシムラ家が独占していた権威が全て某の物となり、アシムラ家は小娘の下に配置され、ただの小間使いに成り下がった。と思うたそうな。

 それが許せぬ! と、事ここにいたり毒殺を企んだと言うことにござる。


「……なんと愚かな。今は駄目でござろうが、某が寿命で死んだあとはアシムラ家に権威が戻るというのに」

「その期間、当主や次期党首の権威が失墜するでしょう? それが辛抱できぬからイオタ殿を亡き者にしようとした様ですな!」


「あ、そうでござるか? いやしかし、某と被る世代のご当主は権威が下がろうとも、次の次ぎくらいのご当主なら、逆に権威が上がるではござらぬか? ミウラの主に寿命はござらぬだろうが、某には寿命がござる。四、五十年も待てば、自動的に権威が転がり込んでくるでござろうに?」

「言い方は悪うございますが、いかにもその通り。さらにイオタ殿の行いを側で見ておられる立場なのですから、経験を積み重ねる事により、これまで以上に重用されるようになるはずです。イマガワ館もその方針でした。そこを理解できなかった。寛容できなかった。刹那的であったのがアシムラ家の罪でございましょう」


 某の申す事にセナ様は乗っかった。某の味方ですよ、と思わせようとの事でござろうが、そんな気を使っていただかなくとも、悪いようには思いませぬのに。アシムラ家、あまりにも思慮が短絡的すぎる。


「なんとも、愚かな……」

「愚かでございます。関係者は全て打ち首死罪。お家断絶。先見の明無き者の哀れさ。権威権力に溺れた亡者の末路にございます。アシムラ家に分家がございますが、分家はお構いなしとなりました。されど御館様より、アシムラ分家に一言ございました。故に、そこは平にご容赦を」

 しみじみとした口調で話され、最後はお詫び口調になられたセナ様にござる。一部、言葉の端っこに、アシムラ家に対するお怒りも込められておられる模様。


『しかもですよ、毒を仕込んだお蔭で、寿命を縮めるどころか、アシムラ家にとって逆効果となってしまいましたしねー』

「ん? どういう意味にござるかな?」

 何を言ってるのでござろうか、このネコは?


『お休みなっておられる間に、アナライズの魔法で旦那のお体を隅々まで、それはもうネチっこく隅々まで精査いたしましたところ、大変なことを発見いたしました』

 大変なこと? それは気になる!

「なんぞ命に関わることでござるかな?」

 気になるッ!


『命に関わると言えば係わりますが――』

 早く言え。そこが気になる所でござる!


『推測ですが、毒をトリガーとして、わたしの精気とか旦那の前世とか色んな肉体的及び霊的要素が、こう、上手い具合に絡まって再構成されたのでございましょう。イオタの旦那は、半分神獣で半分人間という存在になられました。おめでとうございます!』

「いまいち意味が分からぬなぁ……。ネコ耳ネコ尻尾のことでござるか?」

『それは結果でございます。イオタの旦那、加速使えます? 試してくださいよ』

 加速とは、前世で持っていた神通力のことである。伊弉冉尊様に頂いたのでござる。


「こそっと加速」

 ビュン! 

 おお! 皆様の動きが鈍重に!

 ビュン! 加速終了。


「おお!」

 この調子では、収納も……持っておるわ!


『でもって、隅々まで舐めるように調べ上げたお体のことを今ひとつ詳しく申し上げますとですな――』

 ミウラが言うには――

 再び手にした神通力は置いておいて、……半分が神獣、半分が人の所以で――、

 長所は、不老なままの長寿でござる。いつまで生きられるかは、もう少し年を重ねねば分からぬそうでござるが、最悪でも人の寿命を軽く越えるそうな。神獣の特徴にござる。


 ……某の短命を狙ったお婆殿、逆目でござるよ……。某が死んだ後、ミウラを託せるのはお婆の家だけだと思うておったのに……信じておったのに。


 短所は、飲み食いしないと死んでしまう。あと、排泄も必要。人の特徴でござる。

 それと、主の技である雷撃とか、瞬間移動とかの大技は持っていないとのこと。

 とにもかくにも、紆余曲折の後、結局、慣れ親しんだ体に戻ったと?


「もしかして某も、ミウラのように魔獣を感知できるとか?」

『可能性は大いにありますね。やってみます? こう、自然と一体化するような感じというか、皮膚感覚っぽいのを遠くまで広く伸ばすとか、そんな感じで』

「うむ……こうかな?」

 言われたとおりに……神経をとぎすませてしばし……。


 ビキィーッ!

「むっ! 何か感じた! ミウラから感じた!」

『それです! って? わたし神獣ですが? 旦那の経験不足で魔獣と混乱してるのかも?』

 ギュォッ、ムギュォオ! と、ミウラから気のような……股間から気配を感じるでござる。


「ちょっと失礼」

『あ、なにを? やめて嫌ぁ!』

 ミウラの足をむんずと掴み、股を開いた。

 ギュォォーン!

 股間からギュォッギュォオと気配が放出されておる。


「性獣反応感知を取得してしまったでござる。何に反応しておるのだミウラ?」

『イオタの旦那のネコ耳ネコ尻尾にですぅ!』

「この畜生が!」

 あ! ミウラは畜生でござった。


 して――

 場所をあらため、御屋形様と重臣の方々連名でお呼ばれいたしておるところ。御台様までご臨席にござる。


 御屋形様と同じ段で正座。某より下席に綺羅星がごとき重臣の方々がお座りになっておる。尻の座りが悪いことこの上ない。

 ミウラは庭でお座りしておる。あえて庭で、でござる。こっちに顔を向けて、イカ耳にして、その場の全員に圧をかけておる。面白がっておるのな!

 おかげで広間の中は、清々しいまでにピーンと気が張っておるわ!


 まずは、御屋形様が、某におたずねになった。

「イオタ殿。その姿は一体どういった理由で?」

「ははぁ。ご存じのように、某、毒を盛られ、そのままでは死ぬところでござった。されど、前夜、ミウラの主に看病してもらいながら、ピッタリと寄り添って寝ておりまして……」

「ほほう!」

 ビュォオーンン!

 御屋形様の股間より、縦斜線が如く発せられる強い気を感知いたした。


「……その際の、なんというか、ミウラの主の強い気が体に残っておりまして……」

「「「強き精気! ほほう!」」」

 ビュォオーンン!

 居並ぶ御重臣の方々の股間より、縦斜線が如く発せられる強い気を多数感知いたした。


「……こう、上手い具合に毒で死にかけた体が神獣様の精気で、こう、上手い具合に、変化することで、こう、上手い具合に生き延びたと。その際の副作用でネコ耳ネコ尻尾が生えてきたと、そういう経緯にございます」

 某、ネコ耳をパタパタと小刻みに動かし、黒いネコ尻尾でペタペタと床を叩いた。自分の意思で動かせるよとお知らせするためでござる。


「「「ほほー」」」

 ここで居並ぶ方々の目が、某のネコ耳とネコ尻尾に集中した。

 ビギュォオー! ビュォオーンン! ビキュォンン!

 そこかしこに居並ぶ御重臣の方々の股間より、縦斜線が如く発せられる強い気を多数感知いたした。

 大丈夫でござるかなイマガワ家? 

『性癖的な意味で』


 して――


 代表で口を開いたのは親族代表セナ様であった。

「それで、あの、今回の事態について、ミウラの主は何と仰せで?」

 セナ様が何やら怯えておいでだ。後ろの方々も震えておいでだ。某の毒殺未遂事件とネコミミ美少女化事件の結果、ミウラが機嫌を損ねたとでも思われたか?

 たしかに、皆様方にとってミウラの機嫌は、国の存続に直結する案件でござるからな。


「いやいや、セナ様。ミウラの主はお怒りではない。むしろ機嫌が宜しいようでござる」

 後ろで控えておられるお歴々の方々からも、ドヨドヨ声が聞こえてきた。


「まあ、その、ミウラの主風に申し上げると、結果、某もミウラの主も、特に怒ってはおらぬ。むしろミウラの主は、某に耳と尻尾が生えて喜んでおられる。某も、ミウラの主に喜んでいただけて嬉しく思う。と言うことでござる。心配なされる必要はござらぬよ」

 セナ様は目を白黒させたり、顔色を三色に変えたりと大忙しでござる。血圧が心配でござる。中風になられては大変でござる。

「ははぁー! 有りがきゃらき幸せッ!」

 何をおっしゃっているのかイマイチ聞き取れなかったが、そういうことでござる。

 

 ……といったのが、今の出来事。この前に、とんでもない事が起こっておった。


 時間は少し前、尻をおろしネコ尻尾をバサリと撥ねたすぐ後のこと。御屋形様が某の方へ顔を向けられた。

「さて、イオタ殿」

 居住まいを正される。

「正式にイマガワ家当主として、詫びを申しいれたい」

「ええーっ!」

 思ったより大事になっているでござる!




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