47.超能力
王様の言葉どおり、わたしはペンダントをつけた状態で、またバリアが出せるかやってみた。
すると、本当にできない。ハーシーに近づいて、手を握ってみても、もう彼の感情が流れ込んでくることもなかった。
「このペンダントは……」
「それは、不思議な力を持つあなたの力を抑えるための、魔法具だ。
それを触った瞬間にわかった……それを作ったのは、前王アダムスだ」
「前王、アダムス……?
なんでその人が作ったものが、わたしの世界に?」
王様は、腕を組みながら言った。
「アダムスは、王の地位を剥奪するため、わたしが異世界に送った。きっと彼は今、あなたの世界にいるのだろう」
その言葉に、わたしは目を見開いた。もう、びっくりすることがありすぎて……目を開きすぎて、カピカピになってきた。
洞窟で1日過ごしたからか、疲れで目の前がぐわんぐわんする。
目をこするわたしに、王様が言った。
「疲れが溜まっているだろう。だが、日を改める時間はない……もう少し頑張れるか?」
王様が上を見上げて、わたしたちもつられて見上げた。
王宮の天窓から覗く月は、ほぼ満月に近い。
わたしたちが、元の世界に戻れる日が近づいてる……。
「はい……大丈夫です。
皆さんが知っていること、考えていること、ぜんぶ教えてください」
わたしの言葉に、クラウスはうなずいた。
彼はわたしたちを応接室の椅子に座らせ、召使いたちに食べるものを運ばせるように言ってくれた。
わたしは、温かいミルクを飲んだ瞬間、やっと人心地ついたような気持ちになった。
「……お前は、フローラ様の息子なのか?」
王様の問いに、先輩は飲み物を飲みながら答えた。
「いや。正確には、フローラの姉の息子だね」
「えっ!?そうなの!?」
先輩の言葉に、わたしはつい大声を出した。そういえば、大きい瞳に、高い鼻筋、くっきりとした唇……濃い顔だなぁと思ってたけど、先輩ってハーフだったんだ!!
「母はイギリス人でね、音楽一家のもとで生まれ育ったんだ。
でもある日、妹が忽然といなくなってしまった……フローラと母は、とても仲が良かった。
そのことがショックで心を病んで、母は、おれを育てられなくなった」
初めて聞く、先輩の生い立ち。
それを、わたしは、テーブルに出されたお菓子を食べる手を止めた。
「母は未婚で、一人でおれを産んだんだ。でも、日本に父がいることは分かっていた。
おれは、日本の祖父母の元に連れていかれた。子供の頃は、ずっと迎えが来ると思っていたけど……母が、おれを迎えに来てくれることはなかった」
「……父とも、一緒には暮らしていなかったのか」
その話を、ハーシーも真剣に聞いていた。
「あぁ。だって父には、日本で自分の家族がいたからさ。父にとっておれは、隠し子。理方家にもいてほしくない、忌み子だったんだよ」
今までの先輩からは、そんな重たい過去を抱えているって想像もつかなかった……いつも明るくて、笑わせてくれる人。
どうして、先輩もこの世界に召喚されてきたんだろうって、ずっと思ってた。
きっとわたしのために……なんて思ったこともあったけど、それは違うんだ。
きっと、先輩自身のためだ。
今までの人生を紐解くために、わたしたちは、この世界に呼ばれたのかもしれない。
「アダムスに会ったことは?」
「うん、あるよ」
「あるの!?」
わたしは、また先輩の言葉にびっくりしてしまった。
「祖父母が持っている山に、特別な木が生えててね。その木を使って、楽器を作るのを代々生業にしているんだけど……ある日、見知らぬ外国人が家に尋ねてきたんだ。
その木で、人形を作らせて欲しいって」
「人形?」
王様が、前のめりになって、この上ない興味を示した。
「あぁ。彼は人形師として、理方家に来た。そして契約を交わし、人形を作る木を買っていった。
彼の作った人形を、見せてもらったことがあるけど……とても精巧で、美しい人形だったよ」
「あの、石像のようにか」
「うん、そうだね」
わたしは、彼らの話についていけずに、ハーシーの顔を見た。彼もちんぷんかんぷんなようで、静かに話を聞いている。
「アダムスは、この国にいる時から、石像を作るのが得意だった。それにかまけて、王としての執務を滞らせるほどに……特にフローラ様と出会ってからは、彼女の石像を熱心に作っていたらしい」
「それが、王宮にある石像なのか」
ハーシーの問いに、王様はうなずいた。
「あぁ。同じものが、リバティ公爵家にもある……
あれは本物なはずだ」
「おれがあの石像に触れた時、フローラの魂を感じた。あれは本物だね」
わたしは疲れて、いったん考えるのをやめようと思った。頭がパンパンだけど、とりあえずみんなの会話を聞いておこう……。
「だが、フローラ様の魂はあそこにはないはずだ。どこかと繋がっているのか?」
「そのようですね。おれが触った時、確かに見えた……人形になっている、フローラ様が。アダムスはおそらく、彼女と一緒にいる」
「待ってくれ、全然頭が追いつけない……」
ハーシーも、混乱している様子だった。考えをまとめるように、金髪を何度もかきあげている。
先輩も、疲れた表情をしながら、深く息をついて言った。
「順を追って説明してあげるよ。
まずはあんたからね。あんたのお母さんフローラは、無理やりこの世界に召喚された。
召喚したのは、アダムスだ。でもこの世にあんたがいるってことはだよ、考えてごらん」
「フローラ様は、リバティ公爵と結婚して、ハーシーとアレクサンドル様を産んだのよね」
先輩は、わたしの言葉に「そうだね」と答えてくれた。
「フローラの日記を読んだ時、彼女は元の世界に帰りたがっていた。でもアダムスは、それを聞き入れなかったらしい。
彼女はもともと王宮にいたけど、アダムスと喧嘩ばかりしてうまくいかず、リバティ公爵の元に逃げていた。
そのうち生まれたのが、ハーシー……君の存在が王の怒りに触れ、アダムスの呪いで、石化されそうになった。
フローラは、その呪いを請け負い、自分の身に移した。そんな事が夫に知られれば、王に反逆の意思を示し、この国は大変なことになる。
フローラはその呪いを、聖女の力の副作用だと伝えた。やがて彼女は、呪いを肩代わりして石像となった……。
リバティ公爵は、ハーシーのせいで、フローラが石化してしまったと思い込んでいる。だから、あんたを護衛士館に捨てたんだろう」
「ついでに、愛のない結婚をした王妃も、フローラを想い続けるアダムスに嫌気がさして、わたしを捨て、修道院に入った。
わたしとハーシーが、護衛士館で一緒に育ったのは偶然だったが、その発端は、すべて前王のためだったんだ」
王様の説明に、ハーシーは口を開けたまま、ぽかんとしていた。
「それじゃあ……みんな、アダムスさんの被害者ってことですか?」
「まぁ、そうなるね。ひよはあまり、接点はないようだけど」
先輩は、クッキーをもぐもぐと頬張りながら言った。
「でも、どうしてわたしの両親が、アダムスさんの作ったペンダントをくれたのか気になります……」
「それは、ひよが超能力を持っているからだろうね。社会に溶け込んで生活するためには、その力は邪魔になるじゃん?」
わたしは「えっ……?」と言葉を漏らした。
その瞬間、ズキっとくるような酷い頭痛とともに、何かの記憶が蘇ってきた。
「大丈夫か!?」
頭を抑えてうつむいたわたしを、ハーシーが支えるように寄り添ってくれた。
超能力……そんなものが、わたしにあるわけ……。
「……大悟さんは、知っていたようだよ。君に超能力があることを。
だから、記憶をなくした君のことを、すごく心配していた」
「なに!?わたし、記憶をなくしたことなんか……なんの話をしてるのかさっぱり……」
頭が割れそうに痛い。
何かを思い出しそうで、思い出せない……わたしはパニックになって、思わず立ち上がり、応接室から飛び出してしまった。
【お知らせ】
この作品は、今回をもって完結とさせていただきます。
理由としては、ちゃんとプロットを作っていなかったので自分が思ったような物語にならなかったこと、また1から書き直したい欲求が生まれたためです。
言い訳ではありますが、仕事をしながらの片手間で書いていて、この物語のために夜更かししたことも何度もあります。
それでも、小説を書くことで癒されたり、生きてる実感が湧いたりするので、筆を折りたいわけではないんです。
新しい作品を次回投稿する時は、ちゃんとプロットを組んで、設定も納得がいくまで考えて、完結まで仕上げてから連載したいと思います。
評価や感想をを入れてくださった方、本当にありがとうございました。
半年間、ご愛読くださり本当にありがとうございました。
もう新しく書きたい構想が浮かんでいるので、どんどんパソコンに落とし込んでいきたいと思います。
完結させて、寝かせて、ブラッシュアップして、読んでもらいたいと思えるまでになったら公開したいと思いますので
またその時は応援いただければ幸いです。
ご読了ありがとうございました。




