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異世界召喚〜わたしを召喚したのはだれ!?〜  作者: RUNA
第3章 聖女としての役目
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35,転移

 食事が終わる頃には、窓から日が差し込んでいた。

 通り雨だったのか……空は真っ青になって、立ち込めていた暗雲もどこかへ行ってしまった。


 窓の外を見ると、わたしたちが通るであろう石畳を、一生懸命に、兵士と思われる人達が、ワイパーのようなもので水はけをしてくれている。


 そして、石畳の上にはさらに細長いカーペットが敷かれ……まさにVIP対応だ。


「晴れましたね」


 王様も、違う窓から外を覗いて言った。


「ん?……あんなところに、花なんて咲いてたかな」

「え、どこ?」


 王妃様も窓を覗きにきて、二人は仲睦まじく並んだ。すると、二人は耳打ちするようにひそひそと話してから、わたしのほうを向いた。


「フィオ。帰る前に……聖女としての仕事をひとつ、お願いしてもいいかしら」


 王妃様の言葉に、わたしはうなずいた。


「はい、わたしにできることなら」


「ありがとう。一緒に、また聖堂に来て欲しいの。

 その間、残った食事を、馬車に運んでおいて」


 王妃様が召使いの人に言うと、彼女たちは無言で、料理を片付けはじめた。


「……そんなに、気を遣わないでくれ」


 ハーシーが困ったように言うと、王妃様は「子供たちへのお土産がいるでしょ」と微笑んだ。

 女神……王妃様は、本当に女神みたいな人だ。(あがめ)め奉りたい。


「ありがとうございます!

 みんな喜びますね、ハーシー」


 そう言うと、彼も嬉しそうに「あぁ」と微笑んだ。

 本当に、よく笑ってくれるようになったなぁ……。


 しかも、わたしを見る目が慈愛に溢れていて……こんな目を向けられていたら、心がふわふわしてしまう……。



 わたしたちは王妃様について、聖堂に向かった。

 王様は用事があるらしく、広間で別れることとなった。


 さきほど来た時も、しんとしていたけど……人が居なくなった聖堂はあまりにも静かで、厳かな雰囲気が漂っていた。


「この、女神像はね……」


 王妃様が、ステンドグラスの前の台座に置かれた、美しい石像を見上げて言った。


「ここにあるのは偽物だけれど……元々は、生きていた人をモデルに作られたの」


「……そうなのか?」


 反応したのは、ハーシーだった。彼も知らなかったようで、まじまじと石像を見上げている。


「えぇ。女神フローラは……生きている頃、聖女として、このアウル国で暮らしていたわ」


「聖女だったんですか!?」


 私の問いかけに、王妃様はうなずいた。


「えぇ。きっとあなたのように、どこかの世界から召喚されて、この国に来たのだと思う。

 けれど……何らかの理由で、ある日突然、石像になってしまったのよ」


「えっ……じゃあ、この石像は……!」


「いえ、これは大丈夫よ。レプリカだから、元人間じゃないの」


 王妃様は「うっかり、掃除する時に壊しでもしたら大変でしょう?」と苦笑いした。


「本物は……ある、貴族の家にあるわ。大切に、大切にしまわれているはずよ。

 いつかまた、呪いがとけて、目を覚ます日がくるのを待って……」


 心なしか、その声に元気がなくなったような気がした。その貴族の家とは、どこなんだろう……きっと仲のいい人か、親戚なのかもしれない。


 真っ白い石像の女性は、目をつぶり、何かを祈るようにその場で佇んでいた。


 わたしは、その石像に近づいた。目の高さくらいのところまで台座があるので、手を伸ばしても、足くらいまでしか手が届かないだろう。


「同じ、聖女として……フローラにご挨拶していってくれるかしら。それがあなたの、最初にお願いする仕事よ」


 わたしはうなずいて、石像に手を伸ばした。

 その足元に触れ、石像の彼女に語りかけた。


 はじめまして。わたしはひよです。

 縁あって、あなたと同じアウル国に召喚されてきました。

 あなたが見守るこのアウル国を……わたしも、微力ながらお手伝いできたらと思います。

 よろしくお願いします。



 挨拶が終わって、わたしは目を開けた。

 後ろを振り返った瞬間……あれ?


 王妃様とハーシーがいない。

 というか、ここ……えっ、ここどこ!?!?!?


 目の前には鉄格子があり、部屋の天井まで続いている。また後ろを振り返ると……確かに、同じ石像がある。


 --え? ほんとに、ここどこ?

 聖堂とはまったく違い、頭上の窓から、わずかな光が差し込むだけの、暗い部屋。


 鉄格子の外には、外に出られる扉があるけれど……手なんか届くはずもない。


 えっ……わたし、閉じ込められた?

 いつの間に? 一体どのタイミングで?

 目つむりすぎて、時空飛び越えちゃった?

 聖女様の石像には、タイムマシンの機能が備わっているとか???


 でも、もう1回触れても何も起こらない……な、なんで!?

 誰か説明して欲しい……とりあえず、ここはどこなのか、教えてほしい。


 わたしは思い切って、鉄格子を握って声をあげた。


「たすけてくださーーーーーーーい!!!!!!」


 何も起こらない。

 ちょっとまだ、声が張りたりなかったかな。


 こんなことをしていると、テニス部にいた頃を思い出す。

 コートの端っこに立って、先輩たちが向かい側のフェンスの外にいるんだけど、そこまで届くように大声を出さないと、何回もやり直しさせられた。

 

 ついには、気が弱い女の子が泣き出して……可哀想だなと思いながら、わたしはあっさり合格組のほうに立っていた。


 あんな大声を出す練習、なんの役に立つんだとずっと思っていたけど……。


 そうか、こういう時のためか。

 いざとなったら、声を出せないとね。命が守れないもんね。自分の命を守れるのは、自分だけだもんね。


「おーーーーーーーーーーーーい!!!!!

 たすけてぇえええええええくださあああああああああ」

「合格」


 いきなり扉が開いて、眩しい光が入ってきたかと思うと……助けに来てくれたのは、なんと先輩だった。


 そういえば、テニス部の大声コンテスト、先輩に見られてたよなぁ……それから、1番声がでかすぎたって、しばらくイジられてたんだよなぁ。


「えっ……お呼びじゃないんですけど……」

「あっそう。じゃあね」


 そう言って潔く扉を閉めようとした彼に、わたしはヘラヘラ笑いながら「あははっ、もう先輩、冗談が通じないですね!!」と言った。


 扉の向こうから、じとっとした目で覗いてくる彼に、わたしは「ごめんなさい……」と素直に謝った。


「ところで、なんでそんなとこにいるのさ」

「分からないです……」

「もう一生そこにいなよ」

「いやです……お願いします……助けてください……」

「鉄格子がよく似合ってるって」


 うわぁ、これは根に持ってるやつだ……先輩を振って、ハーシーと恋人になったって言ったから。


「ちょ、ちょっと……お話しましょう。ね、先輩」

「僕の方は、別に話すことないけどね」

「じゃあわたしが話しますから、聞いててもらいたいんです。良いですかね。まずは、日本の少子高齢化社会についての見解なんですけど……」

「興味無いね。おれはどうせ、一生独り身で暮らして、太陽を浴びずに引きこもって、骨粗鬆症になって転倒して歩けなくなって、要介護になって、老人ホームに入って、日がな1日寂しく車椅子を漕ぎながら老後を過ごすだろうからね」

「いや、何だかんだ先輩は、楽しく生きれそうですけどね……ホールでサッカー見て、隣のおじいちゃんと騒いでいそうですよ」

「……そうだったらいいけどね」


 あれ、わたしたち、なんの話ししてるんだっけ……つい、居酒屋で話すテンション感で話してしまった。


「あ、あの……」


 わたしは、ついに本題に戻ろうと、上目遣いで先輩を見た。


「そろそろ、出して欲しくて……」

「別に、こっちが閉じ込めた訳じゃないけど……」

「そ、そうなんですけど……!

 と、トイレに……行きたくなって……」


 わたしが顔を赤らめると、彼はさっそうと部屋の中に入ってきて、鉄格子に手をかけた。


 すると次の瞬間、さほど力を入れていないのに、鉄格子が横に開かれた。

 人1人通れるくらいの穴が開き、わたしはビックリするのと同時に、心底ほっとした。


 外に出ると……そこは、見知らぬ広い家だった。

 召使いの人たちも廊下に集まり、パチクリと目を見開いてこっちを見ている。


「ここは……」

「ここは、リバティ公爵家。そして、トイレはあっち」


 先輩が指さした方に、わたしが駆け出すと、召使いの人が察してくれて、目的の場所まで誘導してくれた。



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