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24.ラッセル

 朝起きると、隣には誰もいない。

 今日は夜寝ているうちに、ハーシーがいつの間にかベッドに来ることはなかった。


 なんだか寂し……いやいや、付き合ってるとかじゃないんだし!!

 普通に隣にいられるほうが戸惑うし!!


 ……そのおかげで、襲撃から守ってもらえたんだけど。



 朝起きて、わたしは部屋に来てくれたメリッサに、傷が治ったことを話した。

 すると他の使用人の皆さん、護衛士さんや、先輩も駆けつけてくれた。


「ひよ、良かった……!」


 先輩の目の下に、クマがあった。わたしのこと、心配して眠れなかったのかな……申し訳ない。

 わたしはベッドから立ち上がって、「もうすっかり元気です!側転でもしましょうか!」と明るく言った。


「いや、側転はやめておきなさい。パンツが見えちゃうからね。本当に、元気になってよかった……」


「王様のおかげです!

 みなさん、ご心配をおかけしました」


 わたしが頭を下げると、部屋の外に常駐してくれていたらしいアパトさんが口を開いた。


「とりあえず今日まで、おれたちはフィオちゃんの護衛を任されているんだ。

 団長は、夜の任務で朝帰りだからね。

 彼が起きてきたら、おれたちも護衛士館に帰るよ」


 わたしは目を丸くした。


「護衛士さんて、夜の任務もあるんですね……」

「実は、おれも行ってたんだよ」


 先輩の言葉に、わたしは「えぇっ!?」と声を上げた。


「近くの山を見回りするだけの、簡単な仕事だったよ」

「いや、無事で良かったですけど……!

 だからクマがすごいんですね!ちゃんと寝てください!」

「うん、分かった。ひよが元気な姿を見て、安心したから、よく眠れるよ」


 その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられるような感覚がした。

 先輩の言葉は、いつも真っ直ぐで、嫌味がなくて……ちゃんと大切にされているとわかる。


 面白くて、頼りがいがあって、大事な時には真剣で……本当に素敵な人だ。

 わたしも、そんな風になれたらいいのに。



 久しぶりに、ちゃんとした服に着替えて、わたしはジギス伯爵家をお散歩した。


 今日は1日、ここで自由に過ごしていいと言われた。ただし、必ず護衛士さんと一緒に行動するという、条件つきだ。


 朝にはもう、夜の常駐だったアパトは護衛士館に帰り、またデイヴィスが交代で、護衛をしてくれている。


 彼はつかず離れず、そっと距離を置きながら、わたしについてきてくれている。



 お屋敷の庭を歩いていると、ある一角に、花畑に囲まれた小屋があった。

 そこに、小さな男の子がいて、もぞもぞと花に埋もれながら何かをしていた。


「こんにちは」


 わたしが声をかけると、その子はパッと見上げて、こちらを見た。泥だらけの顔だけど……この子には、見覚えがあった。


「あっ……」


 その子もわたしのことを覚えていたのか、「こんにちは」と、礼儀正しくお辞儀してくれた。


 おうど色の髪に、隠された青い瞳……よろよろと重たい水を運んでいた、あの男の子だ。


「あなた、護衛士館にいたよね。こんなところで、何をしてるの?」

「ぼく、花が好きで……ここの一角を借りて、花を植えて、暇な時間はお世話させてもらっているんです」


 しっかりした受け答えだけど、まくった袖から出る腕はひょろひょろとして、いかにも頼りなげな男の子だった。


 でも、その子から溢れ出すオーラは、はじめに会った時とは全然違った。

 花に囲まれてはにかむ彼は、今まで会ったことのないような癒し系オーラを放っている。


「へぇ、お花が好きなんだ!すごいなぁ、わたしはお世話する自信がなくて、花を植えるとかできなかったなぁ」


「周りのみんなには、変わってるって言われます。でも団長は、受け入れてくれて……さすがに、護衛士館に花は似合わないので、ここで植えさせてもらっています」


 たしかに、真っ黒な壁の男だらけな護衛士館に、花は似合わないかもしれない……わたしは、想像して苦笑いしてしまった。


「いつもここにいるの?」

「はい。用事がない時は」

「よく時間を忘れて、いつまでも帰ってこないけどな」


 後ろからのデイヴィスの言葉に、彼は分かりやすく焦っていた。


「ごっ、ごめんなさい……!

 夢中になると、鐘の音が聞こえなくなって……!」

「ラッセル、そのお前の集中力が、鍛錬でも活かされたらいいんだけどな」


 デイヴィスの言葉に、ラッセルと呼ばれた子は「はい……」と肩をすぼめた。


「ラッセル、あのとき、水を重たそうに汲んでいたじゃない?わたし、あの時のことがずっと頭から離れなくて……」

「あっ、そういえば、手伝おうか?って聞いてくれましたね。いつも非力だって、みんなにからかわれます」


 わたしは、思い切って口を開いた。


「もし、良かったらなんだけど……台車を作らせてもらえないかなと思って」

「台車?」

「うん。水樽を持って運ばなくても、ゴロゴロって押すだけで、小さい力で運べるの。でもよく考えたら、材料をどうやって揃えたらいいか分からなくて……」

「なるほど……手押し車ってことか」


 デイヴィスの言葉に、わたしは「それです!」と声を上げた。


「馬車の荷台の壊れたやつが、護衛士館にあったな。あれを改造したら、作れるかもしれない」


「ほんとですか!それ、もらってもいいんでしょうか!」

「あぁ、もう捨てられるものだから大丈夫だろう。その車輪を使えば、簡単にできそうだ」


「やった!善は急げというので、さっそく今から取りに行きましょう!」


「ぼ、ぼくもついていきます……!」


 ラッセルも嬉しそうに花畑から出てきてくれた。

 わたしは2人と一緒に、すぐ隣の護衛士館へと向かった。

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