[8]-イメージ-
太陽が落下していく。俺様は血迷っていた。なぜレディに向かって本気を出しているんだ。しかも、俺様が娶ろると豪語した相手に。
だが、正気に戻った頃にはもう落下は始まっていた。止められない。冷や汗が滝のように流れる。この水滴もまた太陽の前では存在することでさえゆるされずただの水蒸気と化してしまった。
「お願いだ!避けてくれ!」
意味のわからないことを言っているのは重々承知である。自分で放っておいて避けろ?笑わせる。煽っているとしか思えない。
笑っている暇もなく、巨大な火球が彼女の目の前まで差し迫る。でも彼女は動こうとすらしない。だめだこのままだと確実に死んでしまう。もう...
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「...はぁ、君とんでもないことしてくれたね」
怒りに任せてこんなに大きな火球を私に向かって投げるか。とんでもない馬鹿で、とんでもない天才だね。私でなけりゃただでは済まなかったんじゃない? というか私以外だったら全員死んでるのかな?
「なんでそんな流暢なこと言ってるんだ!早く逃げろ!」
思わず笑みがこぼれる。まぁ自分でも変なことを言ってるのはわかっているんだろうけど
「それにお前の魔法属性は氷だろ?」
「だからなんだと言うの?相性が悪いとでも言いたいの?それはただの弱い自分を正当化する言い訳よ」
「じゃあどうするんだよ?」
火球を前にして私は自信に満ちた声で言う
「火球を、凍らせる」
あいつは明らかに驚いた顔をした。確かに、常人なら考えられないことかもしれない。しかし私は大魔王。このまま放っておけばここら一帯が焦土と化すから仕方なくその力を使う。...出来れば隠したいんだけどね、
「いやいやいやそんなことできるわk」
「知ってる?魔法ってね、イメージの世界なの。できないと思ったものはできないし、できると思ったものは.....できるの」
火球に手をかざす。手はさすがに炎魔法で防御してある。6000℃にも達する炎はさすがの私も熱い。火球にぽんと触れる。するとたちまち触れたところから氷に変わっていき、一瞬でただの冷気の塊と化した。
「うそだ........」
ありえないものでも見たような顔でフリーズする彼を横目に、目の前の氷の塊をノックするように軽く叩く。すると無数の氷の破片に変わり、キラキラと輝いてそれは消滅した。
「これが...魔法よ」
「こんなの..俺様が知ってる魔法じゃない!」
明らかに動揺している。その動揺を無視して問いかける
「んで?気は済んだ?」
そう問いかけると彼は
「...はい、参りました」
といった。案外素直だね。まぁ無理もないか。今、彼は史上最強の生物、大魔王の力の片鱗を見たのだから
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私は教室に戻ってきた
「おかえり〜!ど〜やった?」
「もちろん勝ってきました!」
私はVサインを作り得意げにそういった。
「さすがうちの香蓮ちゃんや〜」
「あんたのじゃないけどね、」
思わず苦笑をする。いつものマイペース具合で安心だ
「もしかしてあの人弱かったり?」
「いや?全然強いと思うよ?」
「へ〜うちも1回は手合わせしてみたいもんやな〜」
そう話しているうちに、先生がやってきた
「はーい席ついてー」
その言葉でみんなが会話をやめ、席に着いていく。全員席に着いたことを見た先生は一言。
「はい、挨拶してー」
起立、気をつけ、礼。これから3年間続く"日常"に
「お願いします」
初々しい声が春の訪れを辺りに知らせた。




