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[3]-入学-

「いってきまーす」


合格発表のときと同じような場所でそう言葉を放つ。合格発表と同じ服装、髪型。そう。私、乙葉 香蓮である。


今日はついに入学式!! この時をどれだけ待ちわびたか... これではれて私も高校生ということだ。楽しみだな〜どんな人がいるんだろ。などと、思いつつ私はひとつの大きな杖を浮かべてそこに腰をかける。するとたちまち、杖と香蓮は上昇する。

─────────

──────

──


「これ、はい。」


と、言って母は私に杖を渡す。現代のこの世界には合わない、木製の大きな杖。美しい流線型で、コアには美しい球体に仕上げられた水色の宝石、ブルートルマリンが浮かんでいた。皆がよく思い浮かべる、ザ・魔法の杖と言った風貌だろうか。


「え?!なんで?」


「合格祝いよ!よく頑張ったんだから、これくらいなきゃね!」


「ありがとう!!...でもなんで中世モデル?」


「あなたよく古代の魔法を使うでしょ?だからそれにあったデザインのものがいいかなって、...嫌だった?」


「いや、そんなことない!めっっちゃ嬉しいよ!」


「なら良かった」



まさかこんないい杖貰えるなんてね〜。そう思いながら学校までの道を飛んでいる。


やっぱ空って気持ちいいな〜。魔王時代は玉座から離れられなかったから辛かったんだよねー。


そうこうしているうちに学校に着いた。...少し飛ばしすぎたか。もうちょっと飛んでたかったな〜...


校門の目の前に着地する。入学式ということもあり、魔法などで華やかに彩られた学校。まるでパレードのようだ。自分の魔法の杖に少し力を入れる。するとたちまち杖は光の粒子になって消えた。決して壊した訳ではない。収納しただけだ。....壊した訳じゃないからね!!


「おはようさ〜ん。かれんちゃん!」


少し肩がビクッとする。この声、独特なイントネーション。そして何より、無と言っていいほど薄い気配。確実に柊 楓だろう。..あぁ別に悪口を言ってる訳では無い。人間誰しも気配はある。だけど楓という人間の気配は極端に薄いのだ。まるでわざと隠しているように...今は考えても無駄だろう。と思い振り返り、声をかける。


「おはよう!かえでっ!」


「朝から元気やな〜。まぁ、今日は入学式やし無理ないわぁ〜」


「そうだよ!落ち着いてなんかいられない!」


なんたって夢にまで見ていた青春がもうすぐ目の前にあるのだから!


「そうとなれば早く行くよ!」


「ちょちょちょっとまってぇや〜〜」


入学式の会場である、『体育館』に着いた。体育館と名付けられていはいるが、実際はコロッセオみたいな風貌だ。上は空いているように見えるが、それは仮初の空。本物ではない。外から見ればわかるが、本当はドームのようなもので覆われている。私はこんなもの初めて見た。とてつもない技術である。これが数千年の違いか...


私が達観してると、後ろから息切れの音と共に声をかけられる。


「ちょっと速すぎるって〜」


「へへ、少し速度強化したからね」


「そない急がんでも入学式の時間は変わりゃせんって〜」


「...あ、確かに」


「気づいとらんかったんかいな... っちゅうか、速度強化つこうたってことは香蓮ちゃんってフィジカル系なん?華奢やのにすごいな〜」


「え、違うよ?」


「え、ほななんの魔法使うん?」


「なんのって....全部?」


「.........はい?」


辺りになんとも言えない空気が駆け抜ける。...あれ、何この空気...もしかしてこの世界の人たちって基本ひとつの魔法に執着する感じ??え、でも母は...あぁお母さんは底が知れないんだった。比べても無駄か。


いやはや、昔からの悪い癖だね...とか言ってる場合じゃない。今回ばかりは割とやばめだ。最強だと、ましてや私が魔王だと気づかれたら私の青春がただの蹂躙ゲーになってしまう...どうしようどうしよう... 動揺してたからかなんなのか、咄嗟に声を上げる。


「氷!」


「コオリ?」


「氷全部..って..言おうとした..の. . . 」


「あ〜氷華、氷結の氷魔法の大元を両方使えるっちゅうことね。てっきり魔法全部使えるバケモンかと思うてしもたわ〜」


「そ そんなわけないじゃ〜ん。そこまで強いわけじゃないよー私〜」


「ほんでも十分すごいんやけどな〜」


(かえで)の言っていることはよく分からないが、セーフ...でいいのかこれは... 言葉が微かに震え、額から汗が滲み出ていた。それだけ私は動揺していたのだろう。一旦さっきのは氷魔法の速度強化ってことになった。...しかし、危なかった。もっと慎重に行動しないと...って前もこんなことあったような. . .まぁいいか。


少し落ち着いてから席に着く。全体的に木製の質感で落ち着きがある。


辺りを見るとさすがの人の多さであると改めて感じる。見渡すことができるからか、そう感じるのかもしれないが


ふとコロッセオ風体育館の真ん中を見ると、ひとつの魔法陣が展開されていた。あれは...無属性転移魔法かな。 途端、魔法陣が輝きを放ち人が現れる。あたりから感嘆の声が聞こえる。転移魔法って難しい..のか?転移してきた人が話し出す。


「皆様、お集まり頂きありがとうございます。私は、この学校の学長」


1拍置いて彼女は話す。


西園寺 風香(さいおんじ ふうか) と申します。」


柔らかくも力強い。そんな声で語り出す。


「まずは、ご入学おめでとうございます。3月14日、合格発表の日。ドキドキしながら、ボードを見る。そしたら自分の番号がある。たったそれだけ。番号があるっていう事実が今、あなたをここまで連れてきているのです。そう考えると、とても不思議で理不尽ですよね。ですが、それがあなたの実力が認められた、この学校での一番最初の『成功体験』となります。今、どんな気持ちですか?あの時、どんな気持ちでしたか?その気もち、大事にしてください。さて話は変わって....」


...長い。とんでもなく長い。なんでこんなに長いの?ちらっと隣の楓を見る。隣には楓がいる。リラックスしたような息遣い、脱力しきった身体、閉じた瞼...うん。寝てる。こんなん聞かされても寝るだけだよね普通に。その後は無心で学長の話を聞き続けた。1時間はたっただろうか、ようやく話が終わった。いくらなんでも長すぎる。


「学長、ありがとうございました。続いて、生徒代表。1年A組、東雲 (しののめ) 時破(とわ)。」


「はい」


声変わりが完了し、野太く力強い声が体育館中に響く。そして、東雲と呼ばれていた人であろう人が先程学長がいたところに立つ


「皆さん──」


...またか。例に漏れず話はとんでもなく長い。こういう場面では話は長くないといけないのか?まぁいいか、もう終わりだ。


「東雲さん。ありがとうございました。これで入学式は閉会となります。この後、各教室に転移いたしますので、その場でお待ちください。」


言い終わると、会場全体がほのかな光に包まれる。全て転移魔法による光だろう。しかしすごいなこれだけの転移魔法の多重発動...人数かけてるだけかな。いやそんなことないだろう。なんせこの世界はひとつの魔法だけを集中して鍛える世界だ。こんな芸当も普通なのかも知れない。


さて、どのクラスに飛ばされるのやら。学長はあの長い話の中で、クラスは入試の魔法の点数で上からA,B,C...Eとなるらしい...控えめに言って、嫌な予感しかしない。


光が全身を包み込み、転移する。嫌な予感、当たらないでくれ。


転移が完了し、視界が晴れる。そこは、重厚な木製の扉の前であった。高さは...ざっと4メートルといったところだろう。周りには、10人の生徒。...クラスにしては少なくない?と思っていると、扉が開く。扉の先にはさっきの学長が堂々と座っている。学長が口を開く。


「おめでとう。君たちがこの学校の1年生で入試結果1~10位の生徒である!」



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