[21]-甘さとほろ苦さ-
残り2回の対戦は案外あっさり終わって下校時間。1回戦目との温度差で風邪を引いてしまいそうだ。
テストはようやくあと1日。張り切っていきたいところだが.....
「3日目はあれやんね。....えとぉ〜....そうや!一騎打ち!」
そう問題は3日目だ。
「そうだね。先生との一騎打ち.....難易度とか先生によって変わるから難しそうよね〜」
「それな〜...」
勝つこと自体はおそらく余裕だろう。でも「強さがバレないように」という条件をつけられるとその自信に疑問符がくっつくことになる。だからといってそう易々と負けられる訳でもない......
「うゎぁ.....どーしよーー」
「気楽にやればええんちゃう?」
「でもさ〜....」
と言い訳しようとした私を遮って彼女は
「ほんならさ、息抜きしてかん?」
ニコッと笑顔を浮かべてそう提案してきた。
◇
「ん〜甘ーーい!」
この世の幸せを一度に感じたような顔をする楓。...私より楽しんでない?
「にしてもオシャレなカフェだね〜開放感あるし、レトロチックだし、これは...ステンドグラス?元々教会かなにかだったの?」
「そうなんよ。『人魔戦争』の時にぎょうさん出た死者を弔うために、各地に教会が建てられたらしいで。最近はあんまり使われへんようになったから、こうやってカフェとかにリノベして活用してるらしいわ。」
「なるほど」
「ほんま、大魔王時代が残した古傷はいつまで経っても癒えへんなぁ。まだ生きとったら一発ぶん殴ったりたいわ」
.......楓には殴られたくないな
「...なんでそんな微妙な顔してるん?あ、大魔王といえばなんやけどさ」
「なになに?」
「最近大魔王を復活させようと企む組織が現れて色々問題を起こしてるらしいよ」
「なにそれ?復活させてもメリットなくない?」
「それな〜変わった人もおるもんやわ」
魔王を復活させる組織.....平和が1番なのになんでそんなことしようとするんだろうか.......
「ん〜おいしー」
「やろ〜...ってあそこにいるの刀花ちゃんやない?」
「あ、ほんとだ。おーい刀花ー!」
すると驚くように振り向く彼女。私たちだと気づいたのか席を立ち、近づいてきた
「こんにちは香蓮、楓。奇遇ね」
「ほんとに。刀花もこういうとこよく来るの?」
「そうね。どっと疲れた時とか、嫌なことがあった時とか」
「あ〜今日は疲れたよね〜。そういえば体の具合はどう?」
「もうすっかり元気よ。千夏先輩のおかげで『声』もだいぶ抑えられたし」
妖刀に手を置く刀花。カチャリと音を立て、淡く輝いている
「へへん。うちの姉はすごいんや!」
「なんであんたがドヤるんだよ」
ワハハと笑う楓
「おい。そこの君」
遠くから誰かがドスドスと歩いてくる
「黒髪ロングのそこの君だよ」
どうやら呼ばれたのは刀花のようだ。
「わたくしがなにか?」
「公共の場での武器の所持は違法じゃないか。すぐにしまいなさい!」
だいぶ乱暴な警察官だ。この類いのはみんなこんなものなのか?
「すみません。でもこれしまえないんです」
「ならついてきてもらうことになるがいいな?」
刀花の腕をがしっと掴む警官。
「痛っ....!」
「ちょ...やめてください!」
「やめてあげろ。痛がってるだろ」
男の影からするちょっと低めなダンディーボイス。後ろから現れたその警官を見て驚いた。
「え.......パパ?!」
「「お父さん?」」
まさかの事態にその場が丸ごと凍ったような感覚がした。能天気な父がその空気を破る。
「おー香蓮か!久しぶりだなー」
「久しぶり!元気してた?」
「あぁお陰様でな。そっちはどうだ?学校は楽しいか?」
「うん。ちょー楽しい!」
「それなら良かった。お二人さん、これからも香蓮と仲良くしてやってくれよな」
「「はい。もちろん」」
「おう。ところでだが...」
『こちら本部。こちら本部。花吹雪魔法高校に多数の不審者情報。例の組織絡みかもしれん。現場に急行せよ』
首元の辺りにあるトランシーバーから声がする。.....いつもの流れだ
「まじか.......まぁそういうことだから。名残惜しいがまたな。元気で」
「うん。そっちも元気で」
言い終わると父は走って店を出ていった。
楓が私の顔を見てから心配そうに一言
「うちらも...帰ろか」
「....そうだね」
夕日に照らされながら歩く3つの影。
「さっきの香蓮のお父さん?」
「そうだよ。お父さん警察官なんだ」
「めっちゃかっこよかったことない?」
「え〜そんなことないよ。ワガママだし、だらしないし、それにすぐどっか行っちゃう。でも正義感だけは人一倍あって......私の自慢なんだ」
「いいお父さんじゃない。大切にしなさいよ」
「うん...そうだね。そうするよ。じゃあ私こっちだから」
「おっけー、ほな〜」
「さようなら。また明日」
「うん。また明日」
そう言い、手を振って2人とは別の道を歩きだした。
カツカツという音がいやに響く。
「はぁ、明日の試験...どうしようかな」
意外と大きい声が出てしまった...でも誰もいない。セーフ...
「ふふ..セーフってなんだよ」
自然と出す足がはやくなっていった。早く帰りたいわけでも、悲しみが押し寄せてきたわけでも多分...ない。ただ自然と、足が伸びていた。一筋の雨粒を残して
◇
鼻をくすぐる砂の匂い。青よりも青い空。風化した建造物。もう慣れた。慣れた.....
「はぁ、なんでガキの相手を俺がしなきゃなんねぇんだ」
目の前にいる酒焼けしたような声をした中年の男性。
「ガキ言わないで。立派なレディよ」
「そうですか、お じ ょ う さ ま」
嫌なタイプだ。殴り飛ばしたくなる
「それじゃ、始めましょう。先生」
私は杖をぎゅっと握りしめた




