[18]-心を滅する-
異様な輝きを放つ"白"。思わず足がすくむ。何?この威圧感。これが...妖刀。....本気出してもわんちゃんってところか......
そう察して杖を消して両手を挙げる。
「降参降参!こんなん勝てないよ」
「.......えっ?」
観客も目の前の彼女もどよめく。
『おぉっとぉー!香蓮選手ー。妖刀を前にし、思わず降参だー!』
降参を受理してくれたのか、試合終了のゴングが鳴り、特殊な空間は消えてゆく。
「待って!だめだめだめ!それじゃ.......っ」
急に黙って下を向く刀花。どうしたんだろ..........っ!?殺気!?なんでなんで?戦えなかったのがそんな不満なの?
「ストーップ!落ち着いて。分かった。また今度戦おうよ!...ね?」
そんな言葉は一切届いていないかのように無気力に突っ込んでくる。
ザシュッ!
左腕が宙を舞う。まずいまずいこのままじゃ死ぬ!今どうにかしなきゃいけないのは確実にあの妖刀だ。でも、本気を出す訳にはいかない....ちょっと不自然だけど仕方ないか。
魔法の杖を突き立て、一言
「『展開』!」
すると周囲に真っ黒な壁のようなものがうにょうにょと伸びてくる。やがてそれは半球状になり、私たちを外界から分断した。氷術師が闇属性魔法を使うのはこの世界では疑問に思う人がいるかもしれないが、....まぁいい訳は後で考えればいい。それよりも目の前の事だ。
「『最上位再生』」
左腕の骨が再生し、筋肉組織がそれに続く。神経が繋ぎ止め、それを皮膚が覆う。うえ〜 この魔法割とビジュグロいからあんまり使いたくないんだよね...
でももう誰にも見られてないからどんなに高ランクの魔法も惜しみ無く使う。
「『鑑定』」
1番気になるのがあの刀。刻み込まれた魔法さえ分かれば攻略出来るかもしれない!
「魔法は〜?.......え?」
思わず手を止める。鑑定の結果、判明した魔法は『魂を吸収する魔法』。それは死者の魂を吸収し、それをエネルギーとして攻撃力を上げるというもの。大魔王の時に私が試作品として適当に作り、物騒すぎてポイと捨てたものと同じ魔法であった。
「え?...なんでここにあるの?」
一般の人が魂を扱うのはまず不可能。前に暇つぶしとして"ひょっこり覗いた"政府極秘の「禁術資料集」にも「魂を扱う魔法」と記されているだけで具体的な魔法は一切記載されていなかった。つまり、現在の魔法使いはまだその域には達していない。したがってあれは私のだと確定するのだが...まだまだ分からないことが多すぎる
さらに解析を進めようと魔力出力を上げる。
『殺せ』
ふとそんな声がする。ん?誰?....幻聴かな?辺りを見渡してみる...て、そうだったそうだった自分で暗幕おろしたんだった............っ!?
『殺せ』『殺せ』『"やつ"を殺せ』『殺せ』『殺せ』『国王を殺せ』『殺せ』『人族を殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』
うるさっ....!これは...蓄積された魂の声?思わず耳を塞ぐ。が、効果はなかった。この魂の量...その刀いつから使われてたの?そしてこの声はおそらくずっとあの子にもずっと流れ続けてる。この魔道具の製作者として助けなきゃ!
「『消去』!」
数秒かかるが、"自分の"かけた魔法を解除する魔法。時間はおよそ10秒。その間は、ずっと対象に魔力を注ぎ続けなければならない。
『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』
頭の中で何度も響く。うるさい.......うるさい!私でも理性が吹っ飛びそうになる。そして突っ込んで剣撃を放ってくる刀花。それに乱され、10カウントが幾度もリセットされる。防御魔法はまるで意味はなく、バターのように切り裂かて静かに消えていくのみ。想定していたよりもなかなかにハードなこの状況。どうする、どうする、どうする!
やっぱり前見た"あれ"を土壇場のこの状況で成功させる以外方法はない。私の時代にはなかった魔法。指定領域の展開による強制的な有利盤面の構築。
失敗したらほぼ負け。...笑っちゃうね。魔王時代にはこんな感覚滅多になかったってのに立て続けに起きるなんて...でも大丈夫。私は大魔王。それに、臨界魔法も成功したんだから。
目を閉じて自分を落ち着かせる。
「零の前では誰も動けない。音も、熱も、静かに最期を待つのみ。遥か昔のその地をここに重ねる。」
冷たい空気を吸い込み、霧を吐く。そして静かに目を開き、杖を突き立て言葉を紡ぐ
「魔術域、展開 ......『絶対零度領域』」
静かにそう告げると、辺りは凍っていく。地面も壁も空気でさえ、凍ろうとパキパキと音を立てている。魔力がゴリゴリ削られてる...これは急いだ方が良さそうだね。
「消去!」
再び魔法を展開し、10秒のカウントダウンが始まる。
10、9、8.....その間もものすごいスピードで減っていく魔力。普通の人だったらもう数回は魔力切れを起こしているだろう。
7、6、5、4......まだ魔力には余裕があるけど少し魔力酔いの症状が....あともう少し....頑張れ私!
3、2、1!これで....!
パリィイィン
弾かれた!? いや、違う。落ち着け落ち着け。私はもう"大魔王じゃない"。え、でも付与魔法ってかけた人が死んだら一緒に消えるんじゃ.....今は関係ないか。目の前の戦闘に集中しなky....
前に向き直る。目の前には白い刃。え、いつの間に解除されて...まってこれ...死っ........!
目を瞑り、これからの痛みに耐えられるように覚悟を決める。...しかし、その痛みは一向に来る気配はない。恐る恐る目を開けると、眼前数mmで静かに震える刀身が目に入る。
「はやく.......にげ....て.......」
蚊の鳴くような声でそういう彼女に私は
「そんなのできない!」
驚いたような顔をする彼女を横目に話を続ける
「困っている人には手をさしのべたいし、悲しんでる人には涙をこの手で拭ってやりたい!だから助けさせて!」
そういうと彼女は迷いながらも刀を下ろし、目に涙を浮かべて
「わかった。なら.......全てを委ねるわ」
そう言葉を紡いだ。




