[16]-10と5-
巻き上がる歓声。靡く風。きらめく太陽。その中心、ぽつんと佇む2人。風が少しだけ鋭くなったような感覚が2人の間を通り抜ける。
「準備はよろしい?」
「えぇ、もちろん!」
「じゃあ......始めましょう」
よし!...ん?いわk
?!?!
目の前には先程見つめ合っていたはずの女の子が体をかがめ刀に手を置いている。
「閃光、抜刀」
とてつもない速さで雷を纏った刀身が顔に迫る。私は全力で地を蹴り、後方に避ける。何この速度!?避けられたのもほぼまぐれみたいなものだ。0.01秒でも反応が遅れていたら、首は今地面と挨拶を交わしているだろう。そのぐらいに速く恐ろしい一撃。
ズザザザザと音を立てて滑りながら着地する。力の制御ができなくて元いた場所にはちょっとしたクレーターができていた。
「これを避けるのね」
「いやいやまぐれだよ........」
さっきのパーティみたいな賑わいはいつの間にか飛んでいき、ピリピリと緊張感のあるものに差し変わっていた。...てか何この"違和感"。始まった時から何か引っかかる。
考え事をしていると、パリリッと肌に何かが当たるような感覚がした。目の前の少女は?いない.....真下にもいない。となると
「後ろかっ!」
咄嗟にかがむと、頭の上を雷が横切る。置いていかれた帽子が貫かれ、灰になってしまった。ひゃ〜恐ろしい。
「『簡易反重力』!」
地を蹴り、緊急離脱。『フワル』で浮いた体を捻り、魔法の杖を少女に向ける。
「『氷撃』!」
練り上げた氷を勢いよく飛ばす。が、打ち出された氷の玉はいつの間にか2つの半球になって地面に落ちた。
「まだまだー!」
何十個もの氷の玉を作り出し、飛ばす。しかし、それらは全て彼女に叩き切られ、届くことはなかった。刀使いは私の弾幕を意に介さずに距離を詰めてくる。
「『雷撃』」
刀を振るうと同時にその場所に雷が落ちる。うひゃぁ ほんとに魔法使いの動き?油断したら一発お陀仏なの怖すぎるって!飛び上がりながらそういうことを考えていると、目の前の剣士がヒュンと消える。え?どこ?首筋に悪寒。また後ろ?咄嗟に身を翻し、防御魔法を展開する。ふぅ、何とか反応できt......
パリィイィイィイィン
嘘?!その予想外のことに反応する間もなく私はそのまま地面に叩きつけられた。
え?私の防御魔法を断ち切った?手加減はしてても大魔王の防御魔法。そんな簡単に壊れるはずないのだ。
砂を払いながら立ち上がり、問いかける
「........あんた何者?」
「わたくしはただの妖刀に選ばれたしがない剣士よ。あなたこそ何者なの?」
見透かしているような目をしてそう聞く刀花
「え私?えぇっと....わ私はただのま......人族だよ。....ほら、実況も言ってたでしょ?『"無名"の天才』だって」
...私嘘下手すぎない?
「ふ〜ん。まぁいいけど」
刀を構え直す。それにつられて私も1杯の唾を飲み込み、魔法の杖を構える。
「今度はあなたから来てみなさい」
余裕の一言。うわ、イラっときた。
「その言葉、後悔しないようにね」
...ちょっこっとだけなら本気出していいよね?ダメだという天使の声を振り切り、完全無詠唱で魔法を放つ。
なるべく溜めも少なめでスピードを速め、断ち切られないように高速スピンさせた氷の刃。"普通の人"ならそうそう防御出来ない魔法。
だが相手はAランク5位。当たり前のように防御してきた。しかし、しばらくそのままの姿勢で固まっていた。やがて体勢を直し一言。
「ふふ、少しだけ後悔しそうね」
「なら、その後悔をしっかりと糧にする事ねっ!」
その言葉に合わせて、さっきよりはしっかりと溜めて氷の刃を飛ばす。この過程を経たから相手はきっと....
パキィイィイィイィン
ビンゴ!防御したその刀をへし折ってやった!力の加減も完璧!いやーやっぱ天才だね〜私。
この光景が本当なのか確認するように折れた刀と私を目線が行ったり来たりする。やがて
「ふ〜ん.....やるじゃん?」
と言って別の刀を抜く刀花。
目に見えるものだけだと背中のバカでかい刀と合わせてあと2本。へいへい勝っちゃうんじゃないの?
でも未だに分からないことがある。戦闘開始時から感じるこの違和感と.....っ!?
パリィイィイィイィン
この馬鹿みたいな速度の移動!
反射で展開した防御魔法はバターのように引き裂かれ、粉々になる。さっきの刀より切れ味が良さそうだ。...当たり前のように防御魔法貫通してくんのやめてくれません?
違和感と超速度の因果関係.....
パリィイィイィイィン
あーもう!考えてる暇ない!あの刀抜いてからさらに速くなった気がする...なんでさらに加速するの?やめて欲しい
パリィリィイィイィイィン
う〜ん防御魔法重ねても無意味かぁ〜...さぁこの猛攻どうしたものか....
また刀花が消えた。しかし次の瞬間ではガラスの割れたような音は響かなかった。なぜなら...
「くっ.....」
刀花と向き合う。彼女の足は氷で固められて、身動きが取れなくなっていた。
「ここら辺に来ると思ってた」
「ふふ...やるわねあなた」
「あんたこそ」
「でもまだまだ甘いわ」
その瞬間、刀花は目の前から姿を消した。そして
パリィイィイィイィン
何回目かも分からない音が辺りに響く
よし、相手のことがわかってきた。刀花は超速度じゃなくて完全に瞬間移動の使い手。でも瞬間移動系の魔法はどれも魔力消費量が馬鹿にならないからこんだけぽんぽん使えてるのはおかしい....."違和感"となにか繋がりが...?
パリィイィイィイィン
もう割られるのにも慣れてきた...いや慣れちゃダメなんだけど。そういえばこの違和感、敵に囲まれた時と似てる....
おもむろに魔力探知を使ってみる.......
「え........"蝶"......?」
そこはまるで森の中の花畑のように魔力でできた青い蝶がそこら中に飛んでいた。
1つの蝶に魔力の軌跡が伸びる。これは?
パリィイィイィイィン
そうかわかった!テレポートは対象がある方が魔力消費が少ない。だからあらかじめポイントを作っておくことで大幅に魔力を節約してあの動きを可能にしたんだ!
でもこの戦法、対象ありのテレポートの一番の欠点、それはさっきのような魔力の軌跡が残ること。それが分かったなら勝てる!
「『フロスト・ソード』」
氷魔法で作り出した剣を少し汗ばんだ手で握る。さぁ......どこから来る?飛び回る軌跡。ふぅと深呼吸。しっかりと見極めて.....
「今っ!!!」
キーーーーーン
『ジャストパリィ』が決まった。体勢を崩した今がチャンス!胴体めがけて剣を振るう。しかし、それは寸でのところで守られる。でもこのチャンス、逃せはしない!
「やぁぁぁぁぁああああああ!!」
パキィイィイィイィイィン
折れた!刀花は瞬間移動で逃げちゃったけど、これでやっとあと1本!おそらくは妖刀であるその刀。一体どんな力があるのだろうか...
刀花が口を開く
「素晴らしい攻撃ね。的確な分析、瞬時の防御魔法、そしてパワー。どれを取っても1級品。もしかして私の魔法の秘密も気づいているの?」
「ええ。だいぶ時間はかかっちゃったけどね」
「そう...ならばわたくしも"これ"を出さなきゃ無作法ってやつかしら....」
そういうと、背中に浮かんでいた五尺刀を前に持ってきて、鞘を留めてある太い縄を厳かに解いていく。
「さあ、終わらせましょう」




