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[13]-臨界魔法-

「待って香蓮(かれん)ちゃん!うちは...まだ戦える!」


その言葉は届くことなく、私の視界は光に包まれる。気づいた時には既に洞窟の入口に立っていた。このままじゃ...香蓮(かれん)ちゃんが...!

回復魔法で治ったもののまだ痛みは残るその身体を無理やり起こして走り出す。痛い、苦しい。でも香蓮(かれん)ちゃんはもっと....

重い足を無理やり前に出す。前方には地震で崩れた大きな穴。


「秋風よ、我を運べ『ウィンド・サーフ』」


(かえで)の後方から巨大なもみじの葉が少し肌寒く感じる風と共にやってきた。彼女が飛び乗り、穴を下って行った。


「早く香蓮(かれん)ちゃんの所に行かな...!

もっと....早く!」


───────────────────


深呼吸。ふっ...思わず笑みがこぼれる。私は今、人生2周目にして初めてキンチョーしている。初めて戦う相手に、初めて使う技を打ち込まなければならない。しかも失敗は許されない。


「どうした?やらないのか?」


「君みたいな存在と1対1は緊張するの!」


「そうか...ならばこんなのはどうだ?」


狼が提案する


「我との一騎打ちを望んだ貴様の勇気をかい、一撃だけ防御せずに受けてやる。それで我が倒れればそこまで、倒れなかったら我は貴様の命を頂きにいく。どうだ?"ふぇあ"であろう?」


おぉ、それは嬉しい提案だ。私視点、受け止められた時点でおそらく動けなくなるから詰みなのは変わりないが、避けられる心配が無くなるのは大きい。


「その言葉、撤回はなしだよ?」


「我に二言はない。存分に準備し、自らの最強の一撃を我に叩き込んでみろ!」


おそらく彼は、(かえで)がいなくなり、〖超再生〗が復活した今、少しでも耐えれれば勝てると思っている。そして、私が自分を一撃で葬る術を有していないと思っているのだろう。でも決めれたら私の勝ち!その魔法はそのくらい強い


「なら.....いくよ!」


「こい!受け止めてやるわ!」



カツッ..カツッ...... 洞窟に響く。空気がパキパキと音を立てて凍っていく。再び、深呼吸。


「風は行き場を失い、光は瞬きを忘れ──」


足元が凍りつく。空気は急激に冷たくなっていき、白い息が出る。


「世界が呼吸を止めるその一瞬。一撃は振るわれる。

——回避不能。

——防御不能の一太刀。」


母から貰った杖が持ち手の部分から凍り始める。空気はもはや氷をそのまま吸い込んでいるかのように冷えきっていた。


「炎より古く、雷より重く、

神々のみが振るうことを許された天を断つ剣。

今、我がもとに顕現せよ。


氷よ、集え。

大空よ、結氷せよ。


空間は軋み、

天は押し下げられ、

白銀が、ゆっくりと形を成す」


遂に氷と化したその杖を厳かに天高くかかげる。それと同時にいくつもの巨大な魔法陣が香蓮(かれん)を中心に展開していく。周りには空気が凍って結晶となったものが静かに漂っていた。


「そこには音などない。

静寂そのものが、巨大な剣の影として世界に落ちる。


——収束せよ。

山脈のごとき氷塊は剣身となり、

神話の重みをその身に纏い、

天に届く一振りへと成らん!」


かかげた氷から新たな氷が生まれ、さらにそこから氷が生まれる。最終的にそれはこの空間を覆い尽くすほどに巨大な剣となっていた。


* * * * * * * * *


「ねぇ?なんで詠唱ってするの?普通に撃てるんだからやるだけ無駄じゃない?」


「ふふふ、そうね香蓮(かれん)には必要ないかもね〜。でもね、詠唱をすると魔法に具体性が出て練度が増すのよ。だって魔法は」


「イメージ。でしょ?」


「ふふ、そうよ魔法はイメージ。忘れないでね」


「もう言われすぎて忘れる方が難しいよ」


「それと詠唱には気持ちを落ち着かせることにも繋がるの。」


「へ〜でも私、緊張なんてしないよ?」


「いつか必ずあるわ。その時は詠唱をしてみてね」


* * * * * * * * *


ありがとうお母さん。私は今、落ち着いてる。外したら死ぬというのに。でも不思議とこの一撃は完璧に相手に命中し、粉砕する。そんな自信が湧いていた。


「魔を制し、魔を極めた者。大魔王が命ずる。この刃で敵を玉砕せよ!我が現極限。地上で最も重く、強大な一撃。その力をその身に刻め!──


臨界魔法-『 天断つ絶氷の剣ゴッドフォールアブソリュートフロスト』!!」


大魔王はそれを振りかぶる。巨大な剣が動き出すその刹那、世界から音という概念が消える。叫びも、衝撃も、破壊音も聞こえない。まるで先程までの白熱した戦いが嘘であるかのよう。今あるのはただ、戦いの終結のみ。


「貴様は.....何者だ.......?」


音が戻る。まだ、空気はパキパキと音を鳴らしていた。


「大魔王、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎だよ。」


私はそう「独り言」を言った。


はぁ、やっと終わった。そう思った瞬間、視界がぐらっと歪んだ。こんなに大きな魔法は初めて撃ったから、体が悲鳴をあげている。もう..限界。全身から力が抜け、立て膝をつく。意識が遠のく。


「─────れ───ちゃん!」


誰かが私を呼んでいる。息を切らして、必死にこちらに呼びかける。この声は多分....(かえで)..かな。なら安心.....


ドサッと少女の体が地に伏した。


───────────────


目が覚める。ふかふかのベッド。消毒の匂いが漂う部屋。おそらく学校の医務室......かな?まだ全身に痛みが残る。隣には...鼻ちょうちんを作っている(かえで)...


「え〜と...(かえで)?」


「ふぇあ?」


そんな素っ頓狂な声をあげる目の前の少女。


「え?香蓮(かれん)ちゃん!?起きたの?」


「うん。おきt」

「大丈夫?体は?痛くない?体調は?」


「.....焦る気持ちも分かるけど、寝起きで質問攻めはきついかも...」


「あぁ、それもそうやね。ごめん。せやけど香蓮(かれん)ちゃん。丸1日寝とったんやで?」


え?そんなに寝てたんだ....


「ほんと心配したんやから。せやけど、生きとってほんま良かったわ」


「さすがに死んでないよ...」


「いや、逆にエンシェントウルフと1対1で生きてる方がおかしいとうちは思うんやけど....」


「それもそうか.......」


話していると奥から白衣を着て、いくつかのポーションをぶら下げている人が出てきた。おそらく医務室の先生だろう。


「起きましたか乙葉(おとは)さん」


「はい」


「それなら健康診断をします。自分で立てますか?」


「はい。立てます」


そう言って体を起こす。地面に立ち、歩こうとする。しかし、見ているのは地面だった。


「あぁほら無理しないで」


「....すみません」


先生や(かえで)の助けを借りて、何とか一通りの検査を終わらせた。


「エンシェントウルフとの戦闘ね〜.....よく生き伸びられたね。でも不思議ね。外傷は少しあるけど今の現状と結びつくものではないわ....この現状に心当たりは?」


「私、エンシェントウルフとの戦闘で臨界魔法を使ったのでその反動だと思います。」


その場が一瞬凍りついた。...もちろん臨界魔法は使ってないよ?


「「え?」」


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