[12]-エンシェントウルフ-
「『アイス・ショット』!」
薄暗い洞窟に青い流れ星が輝く。それは狼の体に当たり、キラキラと崩れ落ちた
「甘いわ!」
狼が手を振り下ろす。その爪は地面を抉り、まっすぐ香蓮の方に迫る。それを軽々とジャンプし避けるが、空中にいる隙に掴みかかろうと迫る腕。
「紅く染まりし木々の葉よ今一度我の言の葉に答えよ!『リーフ・ストーム』!」
その言葉に反応し、魔法陣からもみじの葉がいくつも飛んできて狼の腕に勢いよく命中する。その痛みで迫る手は勢いを止めた。へ〜あれが詠唱ってやつかぁーやったことないな〜。
「サンキュー楓!」
「サポートはまかしぃ!」
すたっと綺麗に着地する。その後すぐに杖を構え、複数の魔法陣を円状に展開する。
「『クリスタル・アロー』」
魔法陣一つ一つから大量の矢が放たれる。それはまるで流星の如き輝きを放ち、狼の腕に突き刺さる。
「ぐっ.....」
痛みで狼が少し怯んだ
「効いてるよ!」
「よーしこのまま」
「ふっ...ふはははははははははははは」
狼が突然笑い始めた。そして
!?!?!?!?
矢を食らった腕を引きちぎった。気でも狂ったのか? そんなことはなく、みるみるうちに腕が再生していく.....
「これ...は........」
「超再生....〖祝福〗か.......」
〖祝福〗。それは魔生物が生まれ落ちる時に超低確率で得ることができる特別なパッシブ。観測されている物はどれも強力で、持っているものと持っていないものでは天と地を飛び越えて、マントルと宇宙の果てぐらいの差がある。あの狼が持っているのは〖超再生〗。その名の通り再生能力が異常に高い個体だ。はっきり言ってこれで勝ち目はほぼ無くなった。
「いんやまだやで」
なにか策があるのか、楓の目にはまだ煌びやかなハイライトが残っていた。杖を前に突き出し、詠唱を始める。
「天が見せし四つの顔。その内ひとつ、我が物とせん。凍てつく息。一面の白。凍る水面。」
あたりの雰囲気が変わる。これは....?
「数多なる生物が眠る大地。しかしそれは死ではなく新たな物語を紡ぐ希望。その希望、我が名に従い、敵を打ち崩せ!」
巨大な魔法陣が楓の足元に展開され、その言葉で詠唱が完了する。
「『魔術域、解放!
-|マグニフィセント・スノー・ワールド《壮観なる雪の世界》』!!」
その瞬間、足元の魔法陣がこの空間全体を覆い眩く光った。光がおさまり目を開くとまるで時が止まったかのような錯覚を起こすくらいに美しい白銀世界が目に飛び込んできた。え?どゆこと?今まで洞窟にいたよね?そんな私を無視して、魔法陣に杖を突き立て魔法を刻む楓
「『スキルフリーズ →〖祝福〗』。よし、これでこの領域内では〖祝福〗は発動しなくなったよ!攻撃して!」
「え!? ...うん、わかった!」
よく分からないけど、楓がチャンスを作ってくれた!この機会、無駄にできない!
「『グラシカル・ソード』!」
香蓮の後方に魔法陣ができて巨大な剣が厳かに飛び出る。それは急加速して狼の肩を貫いた。
「ぐぅ......」
あれ?いつもより剣が大きいし速い。どうやらこの領域は氷魔法を強化してくれるらしい。ヤツの息が上がっている。これはいけr...
「ワォーーーーーーーーーン」
エンシェントウルフが凄まじい音量の遠吠えに思わず耳を塞ぐ。遠吠えに答えるようにどこからともなく狼の大群がやってきて、勢いよく香蓮達に襲いかかる。
「『雪よ舞え』」
その言葉に応えるように冷たい衝撃波が生じて、前方の狼が凍った。
「ぃよしゃ!このままいくでー!」
そう意気込んでいると狼の群れの後方から鋭く大きな手が勢いよく伸びてきた。
「避けて!」
バシュッ───
隣の少女から鮮やかな赤が吹き出し体が宙を舞う。何とか致命傷は避けたがそれでもかなりのダメージを負っただろう。自分の横腹から激しい痛みが生じる。感覚共有によるものだ。思わず膝をつく。こんな痛み、食らったのはいつぶりだろう
「ふはははは どうした?我を倒すのではなかったのか?」
狼の影から余裕そうに現れたソイツ。さっき貫いたはずの肩の傷は既に塞がっている。どうして...〖超再生〗は楓が封じたはずなのに...ひとつだけ思い当たるものを思い出した。
「....『狼喰』か」
前に読んだ書物でこういう記述が残っていた。
「『古のオオカミは他の狼を従え、その身に宿すことで体を癒し、力を得る』か.... 狼系種の習性はいつになっても理解出来ないね」
「だがそれがあの子らの生きる意味であり、希望だ。我はそれに応えてやらねばならん」
さぁ、どうする?手数を増やすだけだと回復されて終わりだ。アイツは一撃で屠る必要がある。 一撃、一撃かぁ〜..... 大魔王の力ならいけなくはないけど見られる訳にはいかないよなー...仕方ない
隅で倒れている少女に近寄り、問いかける。
「...大丈夫?」
「大..丈夫やで。あんたを....1人には..させへんよ」
嗚咽まじりの掠れた声でそういう彼女。まるで秋のもみじのようだ。
「...ありがとっ。」
そう言って上級の回復魔法をかける。
「...でも、ごめんね」
無属性の魔法陣を展開し、楓を取り囲む。そこから光の粒子が出てきて、彼女を包む。
「...待って香蓮ちゃん!私は..まだっ.....」
その言葉を待たずに楓は光の粒子となって空中に分散した。
「ふっ..殺したのか?」
「なわけないでしょ?入口付近に転移させただけ」
「そうか、つまらんな。それで?貴様一人でどうするつもりだ?」
「あんたを倒すよ」
「笑わせるなよ。二人がかりでも無理だったものを一人で成し遂げられるものか」
「いいや?できるね」
その瞳には自信が宿っている。
「...そうか、ならば見せてみろ!貴様のその自信というものを!!」
もう誰も、私を止められない!
私は杖を構えた




