9話 新たな強敵と新たな地へ
【クエスト オブ サンハルト2 9話】
北の村で装備を新調し、ケンイチに青銅の刀、フュリアに銅の杖、ケンイチとバチョーに皮の鎧、全員に皮の帽子を購入した。
更に北に向かい、フライ地方への道に向かった。
北の村から、北は森が広がり、森を抜けると深い山岳地帯に入った。
彼等の前に、軍隊アリが5匹現れた。
「気を付けて! こいつはすぐ仲間を呼ぶわ!」
「もう5匹もいるぜ⋯」
「僕に任せろ!」
ケンイチが青銅の刀で薙ぎ払い、軍隊アリ達を5匹まとめて真っ二つにした。
あっという間の出来事にバチョー達は、驚いた。
「すげぇ⋯」
「僕も驚いたよ」
ケンイチも、まさか5匹1度に倒せるとは思っていなかった。
「す⋯すごい! すごい!!」
「頼もしい御方⋯」
山岳地帯の奥の山道を進み、崖崩れがあった場所にたどり着いた。
「よし、ダイナマイトを使う。危険だからみんな離れていてくれ」
(チャ、チャンス⋯い、いや⋯またアタマが燃えるのはゴメンだ⋯よこしまな気持ちは捨てよう⋯)
ケンイチは、崖崩れにダイナマイトを設置して点火した。
大爆発で崖崩れを吹っ飛ばし、山道を通れるようになった。
その先は、狭い山道になっていた。
森が深く、狭い山道の足場の悪さ、火薬工場以上に感じる魔物達の殺気、この先の地方で通用するか試されているかのようだった。
(なるほど、やはりゲームとは雰囲気が違うな。油断するとあっという間にやられてしまいそうだ)
「みんな、油断せずに行こう。隊列は、バチョー、フュリア、アヤノ、僕の順だ」
「!? 魔物だ!」
バチョーが声をあげ、全員身構えると、魔法使いが3匹現れ、3匹ともファイアーボールの魔法の詠唱を始めた。
「ファイアーボールがくる! バチョー引き付けてくれ! フュリアはバチョーの援護、アヤノはブリザードだ」
「おう!」
「はい!」
「うん!」
ケンイチの号令で全員が一斉に動き、バチョーはファイアーボールに備えて防御の構えをし、フュリアはバチョーを援護する為にすぐ後ろに付き、アヤノはブリザードの魔法の詠唱を始めた。
ケンイチは、後方の安全を確認し、前進した。
魔法使いは、3匹ともファイアーボールを唱えた。
「ふん⋯この程度⋯!!」
3発の火の玉がバチョーを包んだ。
バチョーは、火傷を負ったが、攻撃を耐えきった。
フュリアが、すぐにバチョーにヒールをかけて、バチョーの火傷を癒した。
「ブリザード!」
アヤノの手から吹雪が巻き起こり、魔法使いAを包んで氷付けにした。
ケンイチが青銅の刀で薙ぎ払い、Bを斬り裂き、Cにも深手をおわせた。
更にバチョーがCを刺した。
彼等は再び山道を進んだ。
「危ない! みんな、横に飛べ!!」
バチョーが叫び、全員が慌てて横に飛ぶと、巨大な車輪のように魔物が通過し、魔物が姿を現した。
大アルマジロだ。
全長2mはある。
(こんなにデカいとは⋯)
「ケンイチ! 指示を出して!」
「わ、分かった! バチョーが攻撃、アヤノはブリザードだ。フュリアは戦況を見ながら援護に回ってくれ、僕は後方に警戒しつつ行動する」
「了解!」
「分かりました!」
「分かったわ!」
バチョーが、ブロンズナイフで切りかかったが、魔物は再び勢いよく転がってきて、呆気なく弾かれた。
「うおっ!」
バチョーは、そのまま魔物にひかれてしまった。
「ブリザード!」
吹雪が、魔物を包みこんだが、ものともせず、そのままの勢いでアヤノに向かって転がってきた。
「う、うそ⋯キャーッ!」
「アヤノ!」
アヤノは、現在の最強の魔法を堪えられた事に驚き、回避が遅れた。
すぐ後ろにいたケンイチが、アヤノの前に出て、皮の盾を構えて魔物の攻撃を受けた。
「ア、アヤノ⋯今の内に身をかわすんだ⋯」
アヤノは、ケンイチの声で慌てて飛び退き、ケンイチは、魔物の攻撃を堪えきれずに下敷きになった。
「ケンイチ!」
魔物はそのままケンイチを押し潰そうと回転しながら飛び上がり、ケンイチを押し潰す直前、魔物の皮膚からおびただしい鮮血が飛び散った。
バチョーだった。
バチョーはひかれた後、フュリアのヒールで傷を癒し、素早く接近し魔物の回転と逆方向からブロンズナイフを突き立てたのだった。
魔物自身の回転力と重さで深々と刺さった。
魔物は、地面に落ちてもがいている。
「ブリザード!」
アヤノが、吹雪が魔物の傷口から内部に注ぎ込んで凍りついた。
「うりゃーっ!」
ケンイチが渾身の力を込めて、大アルマジロを斬り、ようやく倒した。
「タフな野郎だったぜ⋯」
「うん⋯」
彼等は、この戦闘で疲弊し、思わず座り込んだ。
(こいつが、ここまで手強いとは思わなかった⋯やはりゲームとは違うな⋯)
彼等は、一息つくと再び山道を進んだ。
何度も魔物と出くわし、行き止まりや川に行く手を阻まれながらも奥へ進んだ。
道中の宝箱からアイアンナイフを手に入れた。
「これは、バチョーにあげるよ」
「ありがたい、ブロンズナイフじゃキツくなってたからな」
「ブロンズナイフは、アヤノが護身用に持っていてくれ」
「うん、分かった。ありがとう」
アヤノは、ブロンズナイフを受け取り嬉しそうに微笑んだ。
ケンイチは、その笑顔に思わず見とれた。
彼等は更に先に進むと大蛇が5匹現れた。
「えっ!? きゃあっ!」
大蛇達は、目の前のバチョーに目もくれず、フュリアに殺到し、1匹がフュリアの足に巻き付いて転倒させた。
「きゃあっ!」
瞬く間にフュリアの両手、両足、首に巻き付いた。
「あぅっ⋯ぅ⋯」
フュリアは、両手、両足、首をグイグイと締め付けられ、全く身動きが取れなかった。
「フュリア!」
「ど、どうしよう!」
「みんな落ち着こう。アヤノはフュリアにバリアをかけてくれ。バチョーは首を絞めている奴を攻撃する。僕は後方の安全を確かめてから行動する。良いね」
「お、おう」
「う、うん!」
バチョーは、フュリアの首を絞めている大蛇Aに向かっていき、アヤノはバリアの詠唱を始めた。
「うぅ⋯く⋯ぅ⋯」
フュリアは手足が痺れ、更に呼吸が困難になり、意識が朦朧としていた。
「た、助けて⋯」
フュリアは、みるみるうちに顔色が悪くなった。
バチョーが、フュリアの首を絞めている大蛇Aにナイフを突き刺した。
「はぁっ⋯はぁっ⋯!」
「バリア!」
フュリアを目映いバリアが包み、両手両足の拘束を跳ね返した。
「はぁっ⋯うぅ⋯」
フュリアは、拘束がとけたが、呼吸が困難なままで、両手両足が痺れていた。
「ヒール」
ケンイチが、後方の安全を確認した後、フュリアに駆け寄りヒールの魔法をかけた。
「大丈夫か?」
「はい!」
大蛇達は、今度はアヤノに狙いをつけ、殺到しようとしている。
「い、いやっ!」
「行かせるか!」
バチョーが、素早く大蛇Bの頭をナイフで刺した。
「うおおっ!」
続いてケンイチが、青銅の刀で大蛇Cを斬った。
「よくもやったわね!」
フュリアは、銅の杖を振り下ろし大蛇Dを叩いた。
「ファ、ファイアーボール!」
アヤノは、怯えながらも大蛇Eの口内に火の玉を浴びせた。
「ふぅ⋯」
「フュ、フュリア⋯怖かったでしょう?」
アヤノは、半泣きで訪ねた。
「はい⋯でも、きっと皆さんが何とかしてくださると信じてました」
フュリアは、微笑んだ。
彼等は、先に進みとうとう山道を抜けた。
北にフライの町が見え、町に入った。