7話 火薬工場の戦いと風のイタズラ
【クエスト オブ サンハルト2 7話】
「さて⋯どっちに行ったら良いのか?」
バチョーが思わず呟いた。
休憩室から出ると細い通路の先に、小部屋がいくつもあった。
「あそこから行ってみよう」
「分かりました」
ケンイチは、ゲームの時の地理を思いだしながら、仲間を誘導し彼らは一つの小部屋に入った。
「階段だ」
「ケンイチ、冴えてるわね!」
「たまたまさ、行こう」
彼らは、火薬工場の2階に上がった。
そこは、小さな部屋で2つ出口があった。
「ここは、どっちに行きますか?」
「こっちに行こう」
ケンイチの誘導で出口を出て進むと、途中、少し迷ったが、階段を見つけ登った先は小部屋だった。
「あっ! 宝箱よ!」
「開けてみよう」
(確か皮の帽子だったはず)
「薬草ですね⋯」
(あれ? 違った⋯)
「ここには、もう何もないみたいだな」
「そうね。ケンイチ、戻りましょうか?」
「ん? あ、ああ、そうだね」
彼らは今度は、別の道を探し進むと、外周が崩れている場所だった。
「落ちないようにしなきゃね」
「ああ」
(ああ、そうか、足場を気にして戦わないといけないのか。ゲームでは、飛び降りても平気なんだけどな)
正面に大モグラが3匹、フロッグが1匹、大ケラが2匹おり、一斉に向かってきた。
(カエル以外は、どって事はないはず⋯)
「バチョー! 敵を惹き付けてくれ! アヤノは、カエルにファイアーボールだ! フュリアは、バチョーの援護だ!」
「おう!」
「はい!」
「分かったわ!」
ケンイチの号令で、バチョーが前に飛び出し、フュリアが続き、アヤノは魔法の詠唱を始めた。
フロッグが、攻撃しようと飛び上がった。
「あなたの動きは読んでるわ! ファイアーボール!」
アヤノが、フロッグを火の玉で撃ち落とし、フュリアが樫の杖で叩いた。
バチョーは、1人で大モグラ3匹と大ケラ2匹を相手に互角に戦っている。
「んっ!?」
ケンイチが、背後に殺気を感じ振り向くと、フロッグが2匹向かってきていた。
「みんな、背後に敵だ!」
ケンイチは、皮の盾を構えながら叫んだ。
ケンイチの声にアヤノとフュリアが振り返り、バチョーはチラッと後方見て確認した。
「俺が、前方の敵を食い止める!」
バチョーは、魔物の群れを再び惹き付けた。
フロッグ2匹は、1匹がケンイチに向かって体当たりをしかけ、もう1匹はのしかかろうと飛び上がった。
ケンイチは、フロッガーBの体当たりを皮の盾で受け止め、次は、落下してくるフロッガーCを木刀で叩いた。
フロッグCを吹っ飛ばし、フロッグBにぶつけた。
Cは、すでに気絶していた。
Bは、Cをのけて立ち上がった瞬間、アヤノの火の玉が直撃し、黒焦げになった。
フュリアは、後方のフロッグが倒されたのを確認すると、バチョーの援護に向かった。
その頃、バチョーは魔物達の攻撃を捌き続け、隙をついて魔物を1匹倒していた。
「バチョーさん! 援護します!」
バチョーは、守勢から攻勢に回った。
バチョーは、目にも止まらぬ早さで大ケラをブロンズナイフで突いた。
更に、魔物2匹の攻撃を難なく避け、もう1匹の攻撃は、フュリアが防いだ。
直後に、ケンイチとアヤノも加勢に来て、魔物の群れに勝ち目は無くなり、魔物の群れは全滅した。
「ふぅ~、みんな大丈夫か?」
「はい」
「あたしも大丈夫」
「俺も平気だ」
「バチョーさん、体をちょっと見せて下さい」
フュリアが、バチョーを見ると、体のところどころに軽い擦り傷や打ち身があった。
魔物の群れを1人で相手をした際、少し手傷を負い、フュリアはそれを見抜いていた。
「治療しますわ」
「大丈夫だよ、これくらい」
「ダメです。いざというときに困りますよ」
「そ、そうだな⋯」
フュリアは、バチョーに回復魔法をかけ、バチョーの傷が癒えた。
「みんな聞いてくれ、今日みたいに挟みうちにあった時の事を想定して、新しく役割を決めようと思う」
「僕とバチョーが、前後の守り、フュリアは、攻撃を控えて回復を重視する。アヤノは、僕の代わりに司令塔になってくれないか?」
「おう」
「はい」
「あたしに出来るかなぁ⋯」
「出来るよ、パーティーで一番の切れ者だからさ」
「うん、分かったわ! やってみる!」
アヤノは、やる気満々で答えた。
「よし。フュリアも余裕があれば戦況を見極めてくれ」
「はい。分かりました」
彼らは、先に進み、また外周の壁が崩れていた。
「きゃっ!」
「きゃあっ!」
突然、風がおもいっきり吹き、フュリアとアヤノのスカートが、捲り上がった。
(あ⋯見ちゃった⋯! 白い⋯)
「どうした!?」
バチョーが、振り返った時は、2人ともスカートを抑えて顔を赤らめていた。
「あの⋯勇者様⋯」
「な、なんだい?」
「み、見ました?」
「あ、あたしのも見えたよね⋯」
「ご、ごめん⋯」
「いえ、あなたが謝る事じゃないですわ⋯」
「うん⋯」
(な、なんで俺だけ見えなかったんだ~!)
3人が、少し気まずい雰囲気の外で、バチョーは愕然とした。
「き、気を取り直して行きましょう!」
「そ、そうね!」
「う、うん!」
その後、登りの階段を見つけ3階へ登った。