2話 初めての戦闘とムフフ⋯
【クエスト オブ サンハルト2 2話】
ケンイチ達がレイル国外に出て初めて出くわしたのは、大ネズミ2匹だった。
(初めての戦闘だ⋯大丈夫かな⋯?)
(大ネズミか、いつもなら逃げるんだが、そうもいかんよな)
(私は、みんなが危なくなったら回復をすれば良いのよね)
(ファイアーボールで倒せるはずだけど⋯)
全員が、初の実戦で不安を隠せなかった。
(やっぱり僕がやらないと⋯!)
「僕とバチョーが攻撃して、アヤノはファイアーボール、フュリアは様子をみてから行動。誰か怪我をしたら回復魔法を頼む、そうでなかったら攻撃してくれ!」
「お、おう!」
「は、はい」
「分かったわ!」
「行くぞ!」
ケンイチは、自らを奮い立たせるように声を上げると、魔物に向かっていった。
それを見てバチョーが、ケンイチに続いた。
「だーっ!」
バチョーは、ケンイチを追い抜いて、大ネズミAを殴った。
「ガーッ!」
大ネズミAが、バチョーに反撃してきた。
「おっと!」
バチョーは、素早く身をかわした。
「火の精霊よ…集いて我が敵を焼き尽くせ! ファイアーボール!」
「ギャーッ!」
アヤノの手のひらから、小さな火の玉が飛び出し、大ネズミBを黒焦げにした。
「うおーっ!」
ケンイチが、大ネズミAを木刀で叩き気絶させた。
「勝った⋯!」
「ああ⋯」
「私、出番ありませんでした⋯」
「やったわね⋯」
無事に初陣を勝利で飾り、ケンイチ達は、胸を撫で下ろした。
「よ、よし⋯バチョーが素早い動きで敵を翻弄して、僕はその隙に接近戦を挑む。アヤノは魔法で遠距離攻撃、フュリアは戦況をみながら皆の援護をする。それで良い?」
全員が頷いた。
ケンイチの作戦は当たり、この付近の魔物には、難なく勝利することができた。
戦闘経験を積むため、1日中戦っていた。
「もう日が暮れてきたな」
「はい」
「帰って休もう」
「うん」
ケンイチ達は、宿に泊まった。
この日の夕御飯は、焼きたてで小麦粉の香りが漂うロールパン、細かくスローされて綺麗に盛り付けられた山菜のサラダ、黒胡椒がまぶされ脂が滴っている鶏肉のソテー、ほのかに湯気が立ち黄金に輝くコーンスープだった。
「美味しい!」
アヤノは、表情を輝かせた。
「本当にとても美味しいです」
「旨い!」
ケンイチも思わず唸った。
食事を済ませた後、彼等は大浴場に向かった。
アヤノとフュリアは、ルンルン気分で風呂に向かった。
何者かが、気配を断ちその場から姿を消したことに誰も気づかなかった。
「気持ちいい~♪」
「ですね〜♪」
(ここだ⋯)
何者かが、風呂の窓の真下にたどり着き、しゃがみこんだ。
(さて、どうやって覗くか? 窓はしまってるし⋯窓は透明かな?)
気配を完全に殺し、そっと⋯ゆっくり⋯ゆっくり⋯⋯窓まで目線をあげ、窓越しに中を覗いてみた。
(湯煙で何も見えん! ヌ⋯? い、いかん⋯!)
「はっくしょいっ!」
思いっきりくしゃみをした。
「きゃあっ!」
「だ、誰!?」
(や、やべ⋯)
アヤノは、勢いよく窓を開けた。
「誰もいないわ⋯」
(や、ヤバい⋯見られたかな?)
「アヤノさん、誰かいますか!?」
「ううん⋯気のせいだったのかな⋯?」
アヤノは、恐る恐る窓を閉め、覗きをしていた人物は、大急ぎで逃げたのだった。
(ま、良い⋯覗くチャンスはまだまだあるはずだ、ヒヒヒ⋯!)
覗き魔は、不適に笑った。