11話 勇者の苦悩と頼もしい相棒
【クエスト オブ サンハルト2 11話】
彼等は、村の宿で順番に風呂に入ることにし、今はケンイチが入っている。
ケンイチは、黙り込んで考え事をしていた。
(ゲームじゃ意識してなかったけど、勇者って重いな⋯今日アヤノが、重体になって初めて感じた⋯リーダーとして仲間の命を預かってるし、仲間は、僕の為に命をかける覚悟を持っている⋯魔王を倒す事が僕等の使命だけど、キラービーに苦戦してるようじゃ、打倒アラモスなど無理だ⋯そもそも僕に勇者など勤まるのだろうか⋯?)
「あ、ケンイチ上がったんだ」
「あ⋯うん」
「じゃあ、次は、あたし入るね」
「あ⋯うん」
「フュリア、一緒に入りましょ」
「はい」
アヤノとフュリアは、嬉々として風呂に向かった。
「ケンイチ」
「⋯」
バチョーが声をかけたが、ケンイチは気付かなかった。
「ケーンーイーチー!!」
バチョーは、ケンイチに顔を近付けて叫んだ。
「わっ! な、なんだよ!?」
「お前を、男と見込んで話がある」
「な、なに?」
「風呂、覗きに行こーぜ⋯」
「な、何言ってんだ!?」
「良いから来い!」
「や、止めろよ⋯」
バチョーは、半ば強引にケンイチを外に連れ出した。
しかし、バチョーは風呂とは違う方向に向かった。
「ど、どこ行くんだ?」
バチョーは、何も答えずケンイチを連れて村の中央付近まで来た。
「さて、ここらで良いだろ」
「何しに来たんだ?」
「お前、悩んでるだろ?」
バチョーは、単刀直入に言った。
「な、なんで?」
「顔に書いてあるぜ。話してみろよ」
「うーん⋯考えがまとまらないんだ⋯」
「じゃあ、ありのままを話してくれ」
ケンイチは、風呂で考えていたことをありのままに話した。
もちろん、別世界から来たことは伏せて。
「なるほどな⋯」
「正直、自信が無いんだ⋯」
「じゃあさ、とりあえず今できることをやっていこうぜ」
「今できること?」
「ああ。例えばだな、自分で言うのもなんだが、俺は体力と素早さには自信があるから防御は1番だと思うぞ。だから、俺はみんなの盾になる」
「バチョー⋯」
ケンイチは、バチョーの言葉がとても嬉しく、救われたような気分にだった。
「お前に出来ることはなんだい?」
「リーダーシップをとることと、攻撃力の高さを生かした攻撃かな⋯」
「そうだ。じゃあ、フュリアとアヤノの長所と短所は?」
「長所は、豊富な魔力を生かした回復、攻撃、補助魔法。短所は2人とも打たれ弱い。特にアヤノはそうだな⋯」
「じゃあ、2人の短所は、俺が補えるよういっそう奮起しよう」
「バチョー⋯」
「まぁ、力不足な時もあるかもしれんが、最善を尽くすぜ」
バチョーは、フッと笑った。
「ありがとう」
ケンイチは、心から礼を述べた。
「俺は、お前ほど重い使命は無い。だから少しお前の重荷を背負わせてくれ」
「バチョー⋯ありがとう」
バチョーの言葉は、ケンイチの心にとても響いた。
「俺だって、この旅に自信なんか無い。だが、それでも行かなきゃならない。違うか?」
「ああ」
「戦闘は、常に命懸けだから、俺も含めて、不幸にも命を落とす仲間がいるかも知れない。だが、お前さえ生きていてくれればそれでいい。少なくとも俺はそう思っている。昼の話じゃ多分フュリアとアヤノもその覚悟がある」
「うん、それは分かってる。けど⋯」
「お前は優しいな」
「そ、そうかな⋯?」
バチョーはニコリと笑い、ケンイチは少し謙遜したような表情を浮かべた。
「だから俺は、お前を信頼しているし、ついていけるんだ。多分、フュリアとアヤノもそうだぜ」
「バチョー⋯」
ケンイチは、とても嬉しかった。
「お前の立場だったら、俺だって悩むだろうし、自信なんか持てないと思う。だからこそ、みんなで力を合わせて頑張ろうぜ」
「うん。そうだね」
ケンイチは、励まされて新たな勇気が湧いてきた。
「もし、悩みがあったらすぐに言ってくれ、今度は、フュリアとアヤノも交えて話し合おう。仲間なんだからさ」
「うん、すまない」
「少しは、気が晴れたかい?」
「うん。ありがとう」
ケンイチは、気分が楽になり心から礼を言った。
「じゃあ良かった。とりあえず、今日は、ゆっくり休もう」
「そうだね」
ケンイチとバチョーは、晴れ晴れした表情で、コツンと拳を軽く合わせると、宿に戻っていった。
一方、風呂に入ってるフュリアとアヤノは、湯船に2人で浸かっていた。
「ね、ねぇ⋯」
「はい?」
アヤノが、恥ずかしそうにフュリアに聞いた。
「あ、あたしってやられてから、ずっとケンイチにお姫様抱っこされてた⋯の?」
「確か⋯そうですね」
「そ、そっか⋯」
アヤノは、顔を赤らめた。
「どうしたのですか?」
「え? て、照れちゃって⋯」
「そういうものなんですか?」
フュリアは、キョトンとして聞いた。
「そ、そうよ! だってお姫様抱っこ⋯よ?」
「うーん⋯私は、されたこと無いから分からないですね⋯」
フュリアは真顔だった。
「さ、されたこと無くても、自分が抱き抱えられたら照れない?」
「そうですね⋯ちょっと恥ずかしいかも知れませんね」
「そ、そうでしょう?」
「はい」
アヤノは、顔が真っ赤っかで照れを隠せない。
フュリアは、いたって真顔のままである。
(す、凄く顔が近くって、ケンイチの腕は、ガッチリしてて、逞しくって彼の顔を見たら、すっごく嬉しそうにしてて⋯あの表情⋯ま、眩しかったわ⋯)
アヤノは、ますます顔が赤くなり、火照ってしまった。
「ね、ねぇ⋯あたしが教会で目を覚ました時って、どう思ったの?」
「もちろん嬉しかったですよ。私、涙が止まりませんでした」
「あ、ありがとう⋯ケ、ケンイチも?」
「もちろんですよ、あなたが倒れたとき一番心配したのは、ケンイチ様です。普段、穏やかなケンイチ様が熱くなってあなたを助けたいって一生懸命でした」
「そ、そうなんだ⋯」
アヤノは、顔を赤らめて顔を隠した。
嬉しくてたまらないのか、その表情はほころんでいる。
「アヤノさん、ケンイチ様の負担を軽くできるように私達も強くなりましょう」
「うん。そうね。もっと強くならなきゃ」
フュリアとアヤノが、風呂から上がると、ケンイチとバチョーも戻ってきていた。
「あれ?どこに行ってたの?」
「ああ、ちょっとケンイチに相談事があって聞いてもらってたんだ」
(ありがとう。相談事があったのは、僕の方だ⋯)
ケンイチは、バチョーの気遣いがとても嬉しかった。
「そうなんだ」
「どんな話だったんですか? 差し支えなかったら教えてくれませんか?」
「へ? えーとな⋯」
バチョーは、思わず口ごもった。
「戦い方を二人で考えてたんだ」
今度は、ケンイチが助け船を出した。
「そうなんですね」
フュリアは、感心した様子だ。
「うん」
(助かったよ⋯)
(お互い様さ)
「じゃあ、そろそろ休もうか」
「うん」
就寝し、翌朝宿を出て、村人から西のシーラの港町に行くには、山賊の山を抜ける以外に道がない事を聞いた。
武器防具屋で、ケンイチに鉄の刀と鉄の鎧と鉄の盾、フュリアに鉄の杖と青銅の盾を購入した。
ケンイチ達は、先日苦戦した事もあり、数日この村を拠点に、この辺りの魔物と戦い、戦闘経験を積んだ。




