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10話 戦いの恐怖⋯仲間死す!?

【クエスト オブ サンハルト2 10話】


 彼等は、フライの町に着きすぐに宿に行き、一泊し翌朝をむかえた。


「ふぁ~、おはよぅ⋯」

「おはよう、良く寝れたかい?」

「うん」

「フュリアは?」

「まだ寝てるよ」

「ここは⋯どこですかぁ⋯?」

「フライよ」

「フライ~、わたしはフュリア~」


 フュリアは、寝ぼけ眼で目を擦りながら呟いた。

 一同呆然とし、ケンイチ達は思わず顔を見合わせた。


「フ⋯ハハハッ!」

「ハハッ!」

「アハハ」


 バチョーが、思わず吹き出し、つられてケンイチとアヤノも笑った。


「なぁにがおかしぃんですかぁ⋯?」

「クス⋯ごめんね。顔を洗ってきたら?」

「ふぁい⋯」


 フュリアは、とぼとぼと洗面台に歩き、

顔を洗い再び戻ってきた。


「みなさんおはようございます」

「お、おはよう⋯」

「気持ちの良い朝ですね」

「あ、ああ…⋯」


 ケンイチとバチョーは、先程との変わりように、少し驚きつつ、笑いを堪えるのに必死だった。


「どうかされましたか?」

「ううん。気持ちの良い朝ね」

「はい!」


 フュリアは、シャキッとした表情で答えた。

 その後、宿屋を出て、武器防具屋でバチョーに鎖かたびらを購入した。

 この町から西に、シーラの港町がありそこには船が売っていて、彼等は次の目的地をそこに決めた。

 町を出て西に向かうと、山岳地帯となった。

 彼等は、いくつもの山を越えた。


「あっ! あそこ⋯」

「村かしら?」

「多分、そうだろう」

(ふぅ、ゲームの世界ってやっぱりキツいんだな⋯魔物も出るし⋯山登りがこんなにキツいなんてな⋯砂漠とかどうなるんだろ?)


 彼等は、村に向かって一気に山道を下ろうとしたが、魔物の群れが立ちふさがった。

 凶暴なキラービーが、5匹現れた。


「バチョー、惹き付けられるか?」

「やるだけやってみるぜ」

「よし、フュリアはバチョーの援護、アヤノはブリザードだ」

「はい」

「分かったわ!」


 いつものようにケンイチが指示を出し、バチョーがキラービーを惹き付けようと前進し、フュリアが援護に続いた。


「早い⋯!」

「アヤノさん!」


 キラービーは素早く、バチョーはA、Bを惹き付けるのが精一杯で、残りのC、D、Eは一気にフュリアを置き去りにし、アヤノに殺到した。


「ブリザード!」


 アヤノは、吹雪でCを倒したが、残りのD、Eが向かってきた。


「きゃーっ!」


 アヤノの悲鳴が響いた。

 ケンイチが、アヤノを庇おうとするよりも早く、アヤノに襲いかかり、キラービーD、Eの大アゴで頭と首を挟まれた。


「ぁ⋯ぅ⋯」


 アヤノは、首を挟んでいるアゴを必死に両手で外そうとしているが、キラービーは小柄な見た目に似合わず力が強く、ビクともしなかった。

 また、皮の帽子を突き破り頭から血を流し、首からも血を流していた。

 アヤノは、みるみるうちに顔色が悪くなり、抵抗できなくなりアゴにかけた手はだらんと落ちた。

 キラービーが、アゴを離すと、そのままアヤノは崩れるように倒れた。


「くっ!」


 ケンイチが、青銅の刀を振り、キラービーD、Eを斬り裂いた。


「アヤノ!」


 ケンイチが、アヤノを抱き抱えたが、アヤノは頭と首から血を流し、顔面蒼白でぐったりして倒れたまま、全く動かない。

 その頃、バチョーとフュリアは、キラービーA、Bと戦っていた。

 既にバチョーは、キラービー2匹に攻撃され傷だらけだった。

 キラービーAが、バチョーに攻撃をしかけ、バチョーは肩にキラービーAの攻撃を受けた。

 しかし、バチョーはものともせず、キラービーAの頭をアイアンナイフで刺した。

 フュリアが、ヒールでバチョーの傷を回復させ、バチョーはキラービーBの首を斬り落とした。


「アヤノ! アヤノッ!!」


 ケンイチが何度呼び掛けても、アヤノはぐったりとしたまま返事をしなかった。

 慌てて、バチョーとフュリアも駆け寄った。


「私が見ます!」

「頼む⋯」


 フュリアは、まずはヒールをかけた。

 アヤノの頭の流血は止まり、布で血を拭いて改めてアヤノを見ると愕然とした。


(酷いわ⋯)


 アヤノは、顔面蒼白、唇は紫色で、生気が無いように見えた。

 フュリアは、アヤノの脈を測り微かに動いていた。


「何とか生きてはいます⋯でも⋯」

「なんだ!?」

「ヒールでは、治療できません⋯このままじゃ⋯」

「そんな⋯助ける方法は無いのか!?」

「教会に連れていけば助かるかもしれません⋯」

「そ、そうか! すぐに連れていこう!」


 ケンイチは、アヤノを軽々と抱えまっしぐらに村に向かって走った。

 バチョーとフュリアも慌てて、ケンイチの後を追った。

 ケンイチは、アヤノを抱え走りながらヒールをかけ続けた。


(くそっ! 僕のせいだ⋯仲間を守れないなんて⋯)


 ケンイチは、目に涙が浮かんでいた。

 彼等は、無事に村に到着し、急いでアヤノを教会に連れていった。


「おや、血相変えてどうなさいました?」

「アヤノを⋯この子を助けて下さい!」


 ケンイチは、すがるように神父に訴えた。


「大丈夫ですよ。おお、全知全能の神よ、聖なるご加護をアヤノに与えたまえ!」


 まばゆい真っ白な光が、アヤノを包むと、みるみるうちに顔色が良くなり、目を覚ました。


「あ、あら? あたし⋯」

「良かった⋯アヤノ⋯」


 ケンイチは、心から安堵の表情を浮かべ微笑んだ。

 フュリアは涙を流しており、バチョーは胸を撫で下ろした。


(ケンイチ!? か、顔が近いよ⋯え⋯? あ、あたし、お姫様抱っこされてるの!?)


 アヤノは、顔を真っ赤にして思わずそっぽを向いた。


「あ、あの⋯ケ、ケンイチ⋯お、降ろして⋯」

「あっ! あ、ああ⋯」


 アヤノは呟き、ケンイチはそっとアヤノを降ろした。


「あ、あたし⋯ど、どうしたの?」

「君は、キラービーに攻撃を受けて⋯」


 ケンイチは、まだ気が動転していて説明出来なかった。


「重体になっていたのです。命が危なかったのですよ」

「そうなんだ⋯心配かけてごめんね、みんな⋯」

「いや、君を守れなかった僕が悪いんだ」

「自分を責めないで⋯」

「けど⋯」

「あたしはもう大丈夫よ。それに戦いである以上、覚悟してるわ」

「すまない⋯」

「謝らないで。あなたは勇者よ。あたしに万が一の事があっても、あなただけは生き残らなくてはならないわ」

「アヤノさんの言うとおりですわ。ケンイチ様の使命を全うされるためならば、この命惜しくはありませんわ」

「一緒に旅をしていて分かったよ。アラモスを倒せるのはお前だけだ。仲間の俺達はその手助けをする為にいる」


 3人の言葉には、強い意志があった。


「みんな⋯頼りない勇者ですまない⋯」


 しかし、ケンイチには、言葉が重く響いた。


「さっ! あたしは大丈夫だったし、気を取り直して行きましょう」

 

 アヤノは、気持ちを切り替えようと意識して明るい口調で言った。

 彼等は、旅の疲れを癒しに宿へ向かった。

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