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エタニティ教会

 「私はエタニティ(永遠)教会の巫女でアリア・テイラーと申します」 法曹の巫女は名乗った、銅色の髪に緑色の瞳、澄んだ白い肌が神秘的だ。

 「私達は・・・・・・怪しい者ではないといっても信じては貰えないだろうな」

 「いいえ、おおよそ分かります、貴方たちもこの世界とは別の世界からお出でになったのではありませんか?」

 アリアが肩にかけていた小銃を差し出した。

 「これは・・・・・・日本軍のものか!?」手に取ると銃身に菊紋が刻んである、九九式短小銃と呼ばれるものだ。

 ボルトを引いて弾倉を確認すると空だ、弾は七.七ミリ、連合軍にはない口径。

 「弾は数発残っています、以前にこちらに渡ってきたホシジロ・シン様より譲り受けたものです」

 「!」「やはり日本人か」

 「その方は何処に?」クロワが上体を起こしている、すかさずフレディが背中を支えた。

 「既に亡くなりました、神殿と魔王イーヴァン様を守るために異世界の武器で自爆なされました」

 「自爆?異世界に来てまで自爆とはジャップは余程死にたいらしい」

 「羨ましいぜ、道理で親近感を覚えるわけだ」

 「そちらのお二人はお怪我をなさっているご様子、よければ教会で手当を、お薬の用意がございます」

 「本当か!?治せるのか」

 「はい、その傷をつけたものは見えなかったのではありませんか?」

 「あの化け物を知っているのか」

 「それはイザナギアリ、冥界の神殿と地下迷路に巣くう魔獣です、あの針で獲物を刺し殺して中身を吸い取る恐ろしい山の使徒です、最後は紙のようになった皮だけしか残りません」

 「ゾッとするな、俺達はまだ運が良かったのだな」

 「他にも危険な使徒はいます、ここは早く移動した方が良いと思います」

 「しかし、夜の森は危険じゃないか、朝までまって移動しよう」

 「いいえ、どちらにしても太陽の光はありませんから」

 アリアが松明を向けたのは洞窟の奥だった。


 洞窟は迷路だ、幾重にも分岐する道を登り下る、方向感覚が早々に消失していた、同じような岩肌が続く、大きさもあまり変化はない。

 「どこまで続くのだ、鍾乳洞ではないようだが人力で掘ったものなのか」

 「言い伝えでは、古の時この世界を支配していたのは竜であったそうです、この山は竜たちの墓であり偉大なる竜の王が眠る場所が神殿であるとされています」

 「というとはここは竜の腹の中なんだな」

 「はい、この洞窟は朽ちて積み重なった骨の中です、何千、何億の星の下を過ごした神々の躯」

 前を行くアリアは得体のしれない四人の男に対しても怯える素振りも警戒するところもない、よほどこの世界は道徳に満ちているか、それとも対応する力を持っているかだ、油断できないとマットは警戒レベルを大にする。

 途中で何度かの休憩を挟み、着いたところは山の中腹に縦横五十メートル程度の開けた台地、山際に白い石を組んだ教会と住居があった。

 扉を潜ると中央に見えるのが祭壇か、翼のある神は竜というより鳥に見える。

 「さあ、どうぞお入りください」

 蝋燭が照らす灯が白い、そして白色電球のように明るい、灯具を除くと石のような青い玉が燃えている、そして温かい。

 通された部屋にはベッドとテーブルもあった、山小屋のような雰囲気だ、生活感がある、先日まで誰かが暮らしていたようだ。

 「ここは山で暮らす方々の避難小屋の役割も兼ねています、結構利用する方が多いのですよ」

 巫女は笑った、慣れているから恐れなかった?今は巫女以外に人気はない。

 「まずは治療です、患部を洗って化膿部分を取り除きましょう、そのあとエリクサーを使用します」

 桶に清水と清潔なタオルが用意された。

 「エリクサー?こちらの薬か」

 「はい、とても良く効きます、だいたいの疾病や怪我は完治できます、エタニティ(永遠)の由来にもなっているものです」

 傷口は太い鉛筆ぐらいの穴がポッカリと開いている、吸い込むためなのだろう貫通はしていない、グレイの方は一部組織が融解して腐敗臭を放っている。

 「溶解液が残っているようです、少し痛みますが吸い出します」

 アリアは注射器のようなものを傷口に押し当てるとポンプを引いた「ぐくっ!!」グレイが痛みに顔をしかめる、腐った組織が吸い出された。

 「クロワ様の方は大丈夫ですね」

 アリアは一度部屋を出ると数分で戻ってきた、盆の上には金色の小瓶が乗せられていた」

 「それがエリクサーというものか」

 「そうです、人類の起源を源とするもの、ですがこの世界でももはや遺物、その伝承は失われつつあります」

 「貴方も伝承者?」

 「エタニティ教会は各地にあり伝承者の巫女が在籍する教会も数か所ですが残っています」

 小瓶の栓を開けると良く磨かれたティーポットのような容器に移すと二人の傷口に少しずつ流し込んでいく、傷口に触れると蝋燭を落としたように瘡蓋となって傷口を塞いでいく、痛みはないようだ、二人は自分の足を不思議そうに見つめている。

 「後はこちらを飲用してください、毒ではありませんからご安心を」

 言うとアリアはティーポットにあった残りをショットグラスに移して自分の口に運び飲み干して見せた。

 「わかった、頂くとしよう」

 「興味深い、何から創られているのでしょう」

 「クロワ様!」フレディは呑ませることを躊躇している。

 「大丈夫さ、いずれにしてもこのままでは敗血症になる、神は裏切らない」

 二人は小瓶の中身を飲み干した。

 「・・・・・・」クロワは空になった小瓶を少し酔ったような目で見つめている。

 「美味いな」グレイは感嘆した。

 「大丈夫ですよ、これは人間用ですから、拒絶反応は起きません」

 「人間用?さっき魔王とかいったな、別種なのだな」

 「この世界には人間族、魔人族、エルフ族、そして神獣がいると言われています」

 「言われているとは未確認ということですね」クロワの顔に血色が戻っている。

 「ふふっ、神獣は見たことないです」笑った顔がかわいい。

 「ちょっと期待しちまったぜ、神が顕在化しているなら会ってみたかったな」

 「でも魔人とエルフは本当です、証拠に私はエルフ族です」

 髪をかき上げると耳が長い 「こう見えて皆さんの三倍は生きています」

 「!?」四人は目を見張った。

 

 「私も転移者です」


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