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Angelworks  作者: miЯai
第二部
30/44

EP28 そこにいる影 

遅くなりました、更新です

いつも通り、蔭山は家を出て行った。それを窓から見送る真人。その背中が見えなくなったこと確認するとクローゼットの中を漁りだす。何か着るものを探すためだ。


しかし、中にあるものは全て大きいサイズしかない。仕方なく、Tシャツを手に取り、ワンピースのように身にまとった。羽がごわごわするかと思ったが、以前よりもかなり小さくなっていたため気にするほどではなかった。


しかし、まだ傍目から見れば目につくぐらいなので、適当なジャケットを見つくろい、それを羽織った。結構衣類が揃っていたのは幸いであった。


「よし、行こう」


玄関に向かい、蔭山のサンダルを履き、自分サイズに目一杯絞ると、さっそく玄関を出た。







そこは、一件の廃屋だった。今にもつぶれそうに見えたが、妙に頑丈な作りであることがわかる。


表面はトタンで被われているのだが、その内側はコンクリートなのだ。それが一階。二階は一見すると木造にしか見えないが、こちらも木目をあしらった金属メッキで出来ている。


このヘンテコな廃屋の前に、真人は腰掛ける。


なにかを探しているのだ。


まるで、目当てのものがそこにあるとわかっているかのように、地面を素手で掘りすすめていく。柔らかい土ではあったが、湿っているため作業は難航する。


手を真っ黒にしながらも数分で目的のものを見つけだした。それは、箱なんかに入れられていなく、裸のままの鍵だった。これだけ小さなものだ、少しでも場所を間違えれば見つけることは出来なかっただろう。


埋めてから何年も過ぎていたが、見つけられたことで、一息つく真人。それを強く握りしめると、廃屋の扉へと向かう。


扉の鍵穴にそれを差し込み、左に回すと、カチッという音がなる。引き戸になっているため、全力を込めて右へと引く真人。扉自体もいくらか質量のあるものだ。錆付いていることあり開けにくい要因になっていた。


開け放たれた扉から真人はその中へと入っていく。


電気などつくわけもない廃屋をひたすら進む。いくつも部屋が見受けられるが、目もくれず行くべき場所へと誘われていく。


そこは、ごく普通の部屋だった。どこやかしこほこりを被っていおり、みすぼらしい家具ばかりであるが、配置は整っている。


一つだけある机に真人は近づく。そして、そっと引き出しを開く……。


「……今さら意味あるのかな」


取り出したのは、日記帳だった。


「でも、もしかしたら、なにかわかるかもしれないし。それに……」


さまざまな感情が真人のなかを駆け巡る。それが日記帳を開くことに戸惑いを与えた。だが、迷ってる場合ではないのだ。今、真人がしなければいけないこと、それは真実を確かめることだ。


その日記帳は、真人が暁零にあげたものでであった。そしてこの部屋は以前に彼の住んでいた部屋。この建物は彼の家のようなものだった。


真人は、よくこの家に遊びに来ていた。いや、ほとんど自分の家になっていたぐらいだ。自分の家には帰らなくなっていたのだ。親友のために。


真人は暁の素行が悪くなっていくことに気がついた。詳しい理由はわからなかったが、それは他人に危害を加えるほどにエスカレートしていたのだ。それを芳しく思わなかった真人は、暁を監視することにし、いつも近くにいることに決めたのだ。それが結果的に真人まで非行に走ったと思われる原因となった。


しかし、それでも構わなかった。自分がだれになんと思われようとも、親友が少しでも悪い道からそれてくれるのなら構わないと思ったからだ。


そんな生活を続けているうちに、もっと真面目になってくれないかと考えた結果、誕生日に日記帳を渡すことにしたのだ。自分自身くだらないと思ったが、毎日なにをしたか書くことによって、いろいろと反省すべき点に気がついてくれるのではないかと思ったのだ。


男らしい暁に本当に意味があるのか、下手したら捨てられるのではないかと思いながら気休めに渡したものだったが、以外にも一日一日、分量は少ないものの書いてくれたのだ。


真人自身、彼が何を書いていたかは知らない。だが、日々に関するなにかは間違いなく記されているはずだと思った。親友が机に向かってなにかを書いているのをしっかりと見ていたのだから。


いつまで続けてくれていたかはわからない。そもそも真人が死んでから彼がどういった生活を送っていたかはわかるはずがないので、ここに日記帳が残っていることすら奇跡と言ってもいいぐらいなのだ。


場合によればここで鉢合わせになることもありえると思っていた真人だが、さすがに警察に追われているだけあって、住処を変えているのは仕方ないことだった。


だから、せめて、残されていた日記帳だけでも見て何か手掛かりをつかみたかったのだ。


心を決めた真人は、ゆっくりとその表紙を開いた。




最初に書いていたことは何ともないことばかりだった。


真人から日記をもらった。面倒だが暇つぶしに書いてみることにした。だれとケンカをした。そんなことだった。


読み進めていくにつれ、徐々に行うことが過激になることも確認できた。それは、真人の記憶しているものとも一致していた。


どこの窓ガラスをわった、どこのものを盗んだ、誰を殴った――。


一ページ一ページ、読み飛ばすことなく進める。自分が止められなかった数々の行為を噛みしめ。


たが、しだいにペースを落としていく。読み進めるのを怖れているためだ。


その日を越えてしまったら、知りたくないことを知ってしまうかもしれないから。


その日以降に、誰かを殺した――などと書いてあれば、連続殺人犯である確率は高くなる。


だが、確認するしかない。親友が何をしていたとしてもそれを認めるしかない。そして……しかるべき行動をするまでなのだ。


ふと手を止める。真人はあることに気がついた。


出来事ばかりに目を通しがちだったが、毎日毎日、暁の心情も少なくはあるが書かれているのだ。


それが、日を追うごとに不気味に変化している。そして、それは全部出来事とは直接関係のないことに思えた。


――この世界は腐っている。


――生きていく意味なんてどこにあるんだ。


――もう人類に未来なんてないのに。


――何をしたって構わないだろ。


――俺の意志は誰が継いでくれるっていうんだ。


――死ぬが怖い。でも、命がつながらないことのほうが、怖い。


真人は暁のことを思い出す。よく、難しいことを一人考えていたことを。


昔は思春期によくあるものだと考えていたが、そんなふわふわしたものではなかったのだ。常になにかに追い詰められているようで、悩みを抱えているようであった。


――自分が死んでも、子供が入れば、魂はその中で生き続けるんじゃないのか。


神様について二人で話してから、暁は宗教じみたことを口にするようになっていた。


そのなかでもよく言っていたのがそれだった。


「ひょっとして、子供が産まれることがなくなったから……暁は――」


日記は、真人の命日まで続けられてはいなかった。飽きっぽい性格ではあったため、不思議とは思わない真人だったが、気味悪さだけが残った。


今までと同じ流れで突然途切れたならまだよかったが、最後の最後には意味深な文章が記されていた。


『神様は、善行にだけ目を留めるのか。神様は、俺を見てはくれないのか』


暁は、救いを求めていたのだ。人間にはどうしようもない、世界の終わりに。


死を、誰より怖れていたために――。


真人は日記を閉じた。


結局事件について直接関わるようなことはなかった。


ただ、親友の心の闇を覗いてしまっただけであった。


そして、再び自分の無力さを悔いた。なんの助けも出来ていなかったのだから。


鍵を閉め、廃屋を後にする。なんの手掛かりも得られなかった真人だが、仕方なく蔭山の元へと帰るのであった。


廃屋が見えなくなるくらい歩いたそのときだった。真人の身体は何者かに後ろから引き寄せられてしまい、人の目に入らない路地の方へ連れ去られてしまった。


なにが起こったのか理解できない真人であったが、それでも自分を押さえている人物の顔を確認しようと首を捻ったが、時すでに遅く、頭から麻袋のようなものを被せられてしまった。


胸の当たりで器用にそれをきつく締められると、今度は両腕も後ろにはビニールテープで固定されてしまった。


身動きが取れなくなってしまった真人は、そのまま担ぎ上げられると、どこへかと連れ去られてしまうのだった。

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