プロローグ
今日も一人の少女が、沢山の男に囲まれ、苦悶の表情を浮かべている。とは、言っても男達はあくまで紳士的にその少女に接し、危害を加えようとはしない。ただ、その男達は自分を選んで貰おうと必死だからだ。
なぜなら、自分達の子孫を残すことが出来るのはこの少女だけなのだから。いや、もっと言えばこの国のの中で新しく人間を「製造」する機能を持ち合わせているのはこの少女だけだからだ。
しかし、そんな真剣な男達の苦労も虚しく、いつものように彼女が彼らに投げ掛ける言葉は、
「ごめんなさい」
の一言だけであった。
男達は落胆の表情を見せたが、すぐにそれを認め、それぞれの家へと帰っていくだけであった。
そこには、いつも通りに一万人ほどの男達が順番に施設から出ていく光景があるだけであった。
これで十日目――と、嘆く少し歳のよった男性の姿と、それに不満の色を隠しきれない少女の姿が残っていた。が、それもいつも通り。
そんな毎日に嫌気の差す少女は今日も同じように叫ぶ。
「俺は男だっつうの!!!」
その叫びはいつものように部屋に響きわたり、二人の耳を劈いていた。
少女はひとしきり叫び終わると、面会用の部屋から出ていき、自室へと戻っていった。
まだ“見た目”幼い少女には酷な毎日だか、それは選ばれた人間としては仕方ないことなのだった。
神から選ばれた、天使のお仕事として――。