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64 それぞれの動き

 今回は少し短め










 白い長髪の男が王城を歩き、大臣の私室へと遠慮無く入る。

 ノックもなしに入ったせいで大臣サーランは軽く驚くが、入室したのが知り合いと分かりすぐに落ち着く。


「なんだ、お前かフェルデス。指切りは順調なのか?」


「順調順調。だけどもうやる必要はないかな。本当に人間社会へ溶け込んだ魔人を見つけたし、それをきっかけとしてもっと面白い情報も得られた。だいたい二ヶ月後に魔人の死体を持ち帰ってくるよ。大量だから持ち帰るの大変だけどさ」


「何、どういうことだ。詳しく話せ」


「四日前、偶然とある魔法使いとクビキリに遭遇してね。詳しく話すと――」


 フェルデスが話したのはアリーダ・ヴェルトと出会った一件について。

 ギルドに所属するアリーダが実は魔人であり、殺人鬼であるクビキリと共に逃走。しかし、二ヶ月後にアリーダと決闘の約束を交わしているので、居場所は知っておく必要がある。ブラックに後を追わせた結果、フェルデスにとって嬉しい誤算の情報が報告された。


「――ってわけ」


「本当なのかそれは。もし本当なら」


「二度も滅ぼしたと思い込まされた。あの村の魔人の中には厄介な能力持ちが居るみたいだね。まあ、あの村も、アリーダ・ヴェルトも戦争前の準備運動には丁度良い」


「お前のことだ、心配はしない。もう戦争まで時間がないから早く済ませろ」


 フェルデスは自分が最強の魔法使いだと自覚している。

 誰にも負けるはずがない。戦いは常勝無敗が当然と思っている。

 彼にとって戦いとは人生のちょっとした刺激(スパイス)


「……アリーダ・ヴェルト。僕を楽しませるのが君の役目だ」




 *




 とある森の中に二人の女性が身を潜めていた。


「……想像より大変な事態になっていますね」


 左目に眼帯を付けた白いローブ姿の女性、セイリットは呟く。

 彼女は精霊談術スピリット・オブ・クンベルサという技で微精霊の話を聞くことが出来る。微精霊は世界中に居て、ありとあらゆる情報を交換しているため、今欲しい情報を聞くことは容易。距離が離れすぎていれば情報を得るのに時間が掛かるが、ノーリスクで情報収集出来るのは精霊談術の特権と言える。


「ミルセーヌ王女。状況を簡単に説明します」


 まず知らなければならないのはヒュルス王国大臣サーラン陣営。

 サーランは兄である帝国大臣ムーランと手紙で連絡を取り合い、互いが居る国の情報を交換しながら戦争開始を企んでいる。既に帝国は兵士を王国領土へと向かわせたらしく、攻め込まれるのは時間の問題。そんな時だというのに、フェルデス率いる魔人殲滅部隊は王国内の魔人を殺すために動いている。二ヶ月後には王国内の魔人と戦う約束までしていた。


 次に知らなければならないのは王女暗殺部隊。

 メンバーはムーランの部下から選ばれた強者六名だがワロス、ボンマ、マダルカルスの三名は死亡。セイリットは裏切り、今や残りはヨシュアとアルニアの二名のみ。彼等の狙いは相変わらず王女ミルセーヌ、皇女アリエッタの殺害。任務放棄はありえないので放置しておくと厄介だ。


 簡単に纏められた情報を聞いたミルセーヌは思案する。


「帝国の皇帝と話し合って戦争を止めたいところですが、その前にまずは自国の問題を解決しなければなりませんね。私を狙う暗殺部隊は捕らえ、サーランの企みをお父様に報告しなければ。そのために味方の戦力を整えましょう。クビキリと……」


「さっきミルセーヌ王女が居場所を調べてくれと言っていた男ですね。名前はアリーダ・ヴェルト。彼等の居場所も微精霊が教えてくれました。しかし彼等の居場所には驚きましたよ」


 フレザールの町でミルセーヌはクビキリやルピアとはぐれてしまった。

 協力関係である二人、そしてアリーダ率いるパーティー『アリーダスペシャル(仮)』は魔人殲滅部隊に襲われてから行方不明。不幸中の幸いだったのはミルセーヌがセイリットと新たに協力関係を結んだことだろう。


「王国領土の端に魔人と人間が共存する村があるようです。どうやらフェルデスの襲撃を受けて壊滅しかけたようですが、村人はなんとか生き延びていたようで。あなたの捜し人はその村に運ばれています」


「クビキリから聞きました。コエグジ事件の生き残りがひっそり暮らす村があると。場所までは聞きませんでしたが……セイリット、あなたなら分かりますね? 道案内は任せます」


「ええ行きましょう。例の村で味方が増えればいいんですがね」


 セイリットとミルセーヌは新コエグジ村へと向かい出す。

 戦いの時は静かに、それでいて確実に近付いていた。


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