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下級魔法しか使えない魔法使い~何いいいこの俺を追放だとお!? おいおいつまんねえギャグ……え、マジなの?~  作者: 彼方
一章 追放と罰~パーティーを追放されたけどなんだかんだで上手くやる~
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14 よく覚えとけ、俺は戦死なんてしねえよ。俺は人生でやりたいこと全部やってから美女の膝の上で死ぬって決めてんだ。まだまだ金は欲しいし、女にモテたいし、美味いもんも飽きるまで食いてえ。だから大丈夫だぜ


 盗賊団のアジトとなる洞窟からアリーダは脱出した。

 出る前に一度広間の様子を見たが誰も居なかったため、仲間や盗賊団員は無事に外へ出たのだろうと安心している。実際、外に出てみれば森の前で縛られたまま寝ている盗賊団員を見つけた。他にも奴隷として売られかけた男達、仲間のアリエッタの姿がアリーダの視界に入る。


「やはり勝利したか」


 洞窟入口の傍に立っていたイーリスがアリーダに声を掛けた。


「当たり前だろ? 勝算がないなら戦わねえよ」


「奴は?」


「今頃は燃えて体が崩れているんじゃねえかな。ま、生きちゃいねえだろ」


 アリーダが今回受けた依頼は盗賊団の壊滅と団員の身柄拘束。

 雇われていた傭兵である槍男はグレーな立場だが、盗賊ではないので死体すら必要ない。逆に盗賊は殺しても死体を持って帰らなければいけないので大荷物だ。今回は全員生け捕りにしたので、見張りもあってもっと大変な帰り道になる。


「アリーダさん!」


 眠る盗賊の見張りをしていたアリエッタがアリーダに気付き、笑って駆け寄る。


「大丈夫だって……信じて、いました。だけど心配でしたあ!」


 駆けて来た彼女に対してアリーダは同じように笑い、両手を広げて受け止めた。

 抱きついてきた彼女は顔を擦り付けてくる。何度も何度も、何かを落とすように。


「よく覚えとけ、俺は戦死なんてしねえよ。俺は人生でやりたいこと全部やってから美女の膝の上で死ぬって決めてんだ。まだまだ金は欲しいし、女にモテたいし、美味いもんも飽きるまで食いてえ。だから大丈夫だぜ」


「……欲に塗れた奴」


「なら、安心、ですよね!」


 顔を擦り付けていたアリエッタがやっと顔を離すと、彼女の瞳は潤んでいた。

 さっきは服で顔を拭いているように見えた彼女の行動と気持ちをアリーダは悟る。


 彼女は泣きそうなくらい、いや実際に泣いてしまうくらい心配していたのだ。さっき顔を擦っていたのは涙を拭うためである。涙を見られたくないからだと察したアリーダは彼女の顔が擦られた場所を見ると、服は確かにほんの少し濡れていた。なんとなく触ってみると『ぬちゃっ』なんて音がした。親指と人差し指の腹を付けてから離すと糸を引く。……鼻水である。

 マジかよと少し腹が立ったがアリーダは何も言わないことにする。


「あの、『アリーダスペシャル』のみなさん」


 鼻水について考えていた時、捕まっていた男達がアリーダの前に居た。


「ん、何だお前等まだ居たのか。解散解散。帰っていいんだぜ?」


「確かに盗賊達の移送はあなた達の仕事、我々は不要でしょう。ですが別れの前にもう一度、助けてくれたことへの感謝を伝えたかったのです。あなた達の名前と活躍、一生忘れません。盗賊達の手から解放してくださり、ありがとうございました」


 僧侶らしき男が頭を下げると、他の男達も礼を言って頭を下げる。

 合計十三人からの感謝を前にイーリスは無表情、アリエッタは笑顔になり、アリーダは目を逸らす。感謝されるなら女からがいいと考えるアリーダだが、男から感謝されても嬉しくは思う。つまり、目を逸らしたのは照れたからである。


「そんなに感謝するってんなら、城下町のエルマイナ孤児院って所に寄付でもしてくれや」


 アリーダがそう言うと男達は頭を上げた。


「エルマイナ孤児院、ですね。ええ必ず。……では、我々はこれにて」


「気い付けて帰れよお前等。もう盗賊に捕まるんじゃねーぞ」


 男達はもう一度頭を下げてから森に向かって歩き出した。

 帰るべき場所は各々違うだろうが、監禁生活で仲良くなった彼等は別れ道まで共に居ようとしている。その絆は不幸中の幸いとでも言うべきか、彼等の強い繋がりとなって人生を助けるだろう。


「そんじゃ俺達も王都に帰るか。盗賊共を引き摺ってな」


 アリーダの言葉にイーリスとアリエッタが不満そうな顔をする。


「さすがに酷いだろう。盗賊共を引き摺るのは疲れるぞ」


「……イーリスさん、そういう問題じゃないと思います。引き摺られる方達が可哀想なんです」


 悪人に容赦ない二人にアリエッタは戸惑う。

 いや、アリーダの場合は誰に対しても容赦ないのだが。


「確かに疲れるか。あいつらには歩かせよう。さあ、かーえろかーえろ」


 アリーダ達は睡眠中の盗賊達を起こしてから王都に帰った。

 縄で繋がれた盗賊達が歩く様はまるで犬の散歩のようだった。


 王都に帰還後、孤児院に誰かからの寄付が届いたのは数日後の話である。


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