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流光のオラシオン  作者: ふぇんりる
7/13

第7話 ~砂の乾きと血の渇き~

フェリス「そろそろつくよー!」


後刻、フェリスの家を出立し砂漠の渓谷を歩いていた。


ルシウス「そうか、それにしてもその魔物の特徴は?そしてなんか砂嵐が強くなってる気がするな……」


フェリス「? 別に嵐は強くなってないよん♪ この嵐はなんと言っても移動しないの! しかも千年! 私達がたまたま近づいているだけだよー錯覚したのかもね♪ ああそうだ、魔物の特徴はね……」


ルシウス「なるほど、夜空の様な黒く透き通った体の中に星々の様に輝く点状の模様、そして形は不定形でメテオライトと思われる装甲で身を守ったり攻撃に転用したり……おまけに青白いエネルギー放つ攻撃をしてくる……まるであの魔物だな……」


フェリス「? こころあたりがあるの?」


ルシウス「実は……」


フェリス「ふぇ〜、つまりミルアルヴを滅ぼした魔物の仲間ってこと?だとしたら私が見たのは随分と小さい部類になるけど……」


ルシウス「まぁとにかく用事が必要だ。……それにこの剣光さえあれば……」


2人は砂嵐の中渇いた谷坂を下る、しばらくすると"それ"は谷底の曲がり角、その奥で蠢いていた。


ルシウス「しー……待て、フェリスこっちだ」


2人は岩壁の遺物に身を潜め、蠢く"それ"を観察する。


フェリス「……あいつだよ! あ・い・つ」


フェリスは小声でそれを指を差しルシウスを見つめる。


ルシウス「わかった俺が出るからここでじっとして……あれ?」


ルシウスが剣を柄を握りしめ奇襲を仕掛けようとするが当の本人は怪訝な顔を示す。動けずにいた。


フェリス「ちょっと! どうしたのさ!」


ルシウス「おかしい……いつもなら魔力を込めれは剣が輝きだす……フェリスまずい! こいつが使えなきゃ奴らを倒すことは出来ない!」


フェリス「ちょっと! どうゆうことなのよ!」


ルシウス「あの魔物は凄まじい再生力で並の攻撃じゃ倒すことはできない……さて、どうしたものか……」

しばらく身を潜めて難儀していると、魔物に動きがあった。


フェリス「ねえねえ、奥から人が出てきたよ」


渓谷の底、そこに点在する遺跡の中から薄汚れた黒いローブを羽織り、仮面をつけた2人組が出て来た。


仮面の人物A「まったく、こんなところにレムナントを置き忘れやがって…もし部外者に見つかったら俺ら処分されちまう……大司祭様に知られる前にちゃっちゃと回収を済ませよう」


仮面の人物B「回収用の遺物だ、使え」


ローブの隙間から四角い鉄の塊のような遺物を取り出す、魔物にむけると4つに分裂して魔物をとり囲うよう宙を浮く。


その後、魔物の爪などメテオライトのような物でできた部分以外が光の粒子となって消失、怪しい二人組は残った残骸を回収しだした。


ルシウス「なんだ? あの遺物は……奴らの会話から察するに魔物の力を封じ込めたようだが……それにあの魔物、レムナントといったか……フェリス、この砂漠であの恰好をした人物を見たことがあるか?」


フェリス「うんうん、全っ然無い! 初めて見るよあんなの!」


仮面の人物A「さて、回収も終わったことだし戻るぞ」


仮面の人物B「了解した。……いや待て、戻る前にこの渓谷の道を封鎖しよう、誰かが迷いこんで見られたらまずい、幸い俺達はこの道は使わないから壊し得だろう。」


仮面の人物A「了解した」


すると一人が爆弾を取り出し道沿いの岩壁に投げつけつけた。衝撃により脆い岩が崩れ落ちる、道が塞がれたのを確認すると怪しい2人組は奥へと戻って行った。


フェリス「ああもう! まずいよルシウス! 道が塞がれちゃったよ! ……戻れないよお!」


ルシウス「塞がれたか……待てよ、あの2人この道以外の通路を使ってるみたいだったな、そこからならあるいは……」


フェリス「ぐぬぬ……僕ここ以外の道知らないよ!? でもこのままじゃ帰れないし……ええい! わかったよ! 腹くくるよ!」


ルシウス「よし、なら奴らの向かった遺跡の奥地へ向かう。ただし俺は今、何故か剣の力を行使することはできない、極力戦闘は避けて見つからないように進もう」


そう言ってルシウスとフェリスは谷底の奥地、その遺跡に足を踏み入れた。


ルシウス「よし、遺跡の入口は手薄みたいだな、付いて来て。」


フェリス「はぁ…なんとか入れた、心臓バクバクで今にも死にそうだよお…」


壁に掛けられた松明の灯りが辺りを薄暗く照らし出す。その通路は埃っぽく渇きに飢え、緊張の汗を空気が飲み干して行く。


ルシウス「下がって、扉を開ける」


奥まで行くと扉があった。ゆっくりと覗きながら開けていく。


ルシウス「大丈夫そうだ、入るよ」


フェリス「ひぇぇ……怖いよぉぉ」


周囲の安全を確認し中に入る、この部屋は階段により吹き抜けで2段構造になっている。


ルシウス「見張りが2人……俺が奇襲を仕掛ける。ここで待ってて、大丈夫になったら手を振って合図を送る」


フェリス「……わかった!」


ルシウスが上の階から敵に飛びつく


仮面の人物C「……!?」


ルシウスのナイフは頸椎を貫いた。


仮面の人物D「……ん? どうした?」


ルシウス「まずい、どうする……」


仮面の人物D「!? ……うっ!?」


しかし、間一髪のところで上から投げられた横槍が頭を狙って貫かれていた。


ルシウス「流石!」


フェリスが笑顔と共に親指を立てこちらに向く。


ルシウス「よし……フェリス、こいつらの服を着て中に潜り込むぞ」


フェリス「おっけー!」


全身を覆うローブに仮面、潜入するには充分に適した格好だ。


ルシウス「さぁ……ここの扉を開けるぞ!」


フェリス「そろり……そろり……」


さっきと同じ様に扉を慎重に開けていく。


ルシウス「……!? なんだこれは……」


中に入ると大勢の人物が同じ格好をし、祭壇の上に乗せられた子供を崇めている。


フェリス「取り敢えず後ろの方に行って様子を見よう」


ルシウス「あぁ」


2人は後ろから祭壇の様子を覗く。


子供「や……やめて……」


縛り付けられた子供は涙を流しながら抵抗する。しかしこの状況ではあまりにも無力、ただただ恐怖と不安を受け止め絶望する。


しばらくすると祭壇奥の扉から周囲の人とは別格の雰囲気を放つ2人が出てきた。1人は金の装飾が施されたローブに鹿の様な骨格をした悪魔の頭蓋骨を仮面の様に付けていた。露出した頬と腕には何かに侵食されたような模様が浮かび上がっている。


もう1人は黒いシスター服を見に纏い、白い長髪で赤い瞳の色白な女性、不適な笑みを浮かべるその表情は見る物全てを凍りつかせる。その瞳に光は宿っておらず狂気だけがそこにある。


仮面の人物達「おぉ! 大司祭カース様にシスターレギーナ様…!!」


カース「静かにせよ! ……我が教団は地底へと調査へ赴きこれを入手した」


すると男は魔法で空間からこれまでに無い程輝く粒子を纏った遺物を取り出した。


カース「これは我々の知覚し得なかった古代、数多の生命を屠った兵器の残滓だ! 其方達の祈りによって、この少女は魔力で満たされた器となり、この遺物をもって次世代のレムナントへと顕現するだろう! ……さぁ後日、嵐の神殿にて儀式を執り行う、明日は早い、我々の目標の為これより今日は解散とする」


そして集団の中から代表の者達が出てくると、子供は奥の部屋へと運び込まれた。同様に大司祭と黒聖女も奥へと来た道を戻る。残りの人々はこの部屋の右側、3つ目の扉を開けた通路の先へと行く。


ルシウス「フェリス……もしかしたらついて行けば出られるかもしれない……行くぞ……」


フェリス「でも、あの子……」


ルシウス「……まともに力を引き出せない中この人数、そしてこの閉鎖空間…正直、勝算は無いに等しいだろう……辛いのはわかる……だが一旦ここから出るぞ……」


フェリス「……わかった……」


2人は教団に紛れついて行った。しばらく進むと薄暗い通路に外の光が差し込む。外だ。


気付けば来るときに通った崖の上にいた。教団の人々はそれぞれ別の道に別れ散り始める。


フェリス「ねぇルシウス向こうに宿場が見えるでしょ?一旦あそこで今後どうするか話し合わない?」


ルシウス「あぁ……そうしよう……」


――――


レギーナ「はぁ……やっぱり何百年経とうが血はいつも私を潤してくれる…早く妹に会いたいわ♪ めちゃくちゃにしながら舌の上で血汁を転がして味わいたい……はぁ……待ちきれないわぁ……ほら、もっと寄越しなさい……」


血で満たされた浴槽に浸かる黒聖女、浮かび上がった人の骸に口付けをしながら血を啜る。


カース「そう急くなシスターレギーナ、次世代のレムナントさえ完成すればブリザルデ平原を越えることなど容易い。」


レギーナ「ん♪ そうね……本当ならいいわ……だからといって貴方の目的が叶ったとき裏切らないことね……あくまで私達は目的地が同じで協力してるだけ、立場は貴方の方が上だけど単純な力はどうかしら? ……ふふっ……考えるまでもないわね♪ ……ねぇそうでしょう? 裏切り者のカース♪」


カース「黙れ……」


レギーナ「あら……怖い怖い……」


カース「彼の地ブリザルデ平原の古城、ボレアリス城、かつて原初の魔術師達が収集した古代の遺物や強力な魔法が記された書物などをそこに保管したという。私の目的はそれらの物を使い世界を破壊、かつてあった姿へと戻し再創生をする。この腐った世を正す為に」


レギーナ「ふふっ♪ ……自国が戦で滅ぼされただけで世界を壊すなんて……盛ってるわね♪」


カース「妹を辱めるためだけに生きている快楽主義者には言われたくない言葉だな……」


レギーナ「ふふっ♪ そうね……一本取られたわ♪」


カース「はぁ……」


大司祭は呆れたため息を吐きながら部屋を後にした。


レギーナ「……あぁ、待っててね……アリア……もうすぐお姉さんが貴女を犯してあげる♪」


嵐の山、その麓に眠る谷底の遺跡。2人がそこで耳にした闇。それは谷より深く血に塗れていた。時が経ち歴史が風化してもなお消えることはない。人間とは案外そうゆう生き物なのかもしれない。


砂漠の渓谷《ザビ遺跡》にて。

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