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流光のオラシオン  作者: ふぇんりる
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第4話 ~星刻~

冒険者達「うおおお!」


瓦礫の街に戦士達の雄叫びが鳴り響く、眼前に映る魔物を討つため必死に力を振るう。


魔法使いA「炎の精霊よ! ファイアーボール!」


剣士「切り裂く! とりゃあ!」


魔法使いB「唸れ雷鳴! サンダーザッパー!」


魔物「……!」


人々の連携が魔物の体制を崩す。


ルシウス「ルミネ! 最大火力まかせた!」


ガレアス「盾役はまかせな!」


ルミネ「おっけー!」


ルミネは詠唱を開始し杖を輝かせる。


ルミネ「荒れ狂うは雷の魔風、天地を翔る奔流なり……」


魔法使いC「な、エルフの王族に伝わる魔法!?」


戦士A「ヤバそうだな! 一旦ずらかるぞ!」


戦士達「了解! ボス!」


エルド「おい! 爺さん来るぞ」


魔物が熱線をルミネめがけて放ってきた。


ガレアス「クソがあ! マズい!」


ガレアスは攻撃を受け止めるも少しずつ盾がドロドロに溶かされていく。


???「……隔て一刀……」


突然瓦礫の影から刀を持った女性が渾身の一太刀を放つ。その刃は魔物の熱戦を解くように打消し、ガレアスを魔物から救う。


エルド「ひえ! ギルドのお姉さん!」


ギルドの女性「もうすぐ詠唱が終わるようです。集中しなさい」


ガレアス「世話をかけたな、すまねえ」


ルミネ「駆けて均し、吹き焦がせ! 我の名はルミネ・リンド! 精霊王の血筋の末端なり! トルトニアテンペスト!」


ルミネの魔法は街を覆い尽くす程の雷風となり魔物を攻撃する。


魔物「………!」


魔物はルミネの渾身の魔法によりその巨体を大地に身を倒す。


冒険者達「やっ、やったぞー!」


ルミネ「ふぅ…」


崩壊した街に勝利の歓喜が鳴り響く。


エルド「流石!俺の妹だぜ!な!ルシウスもそう思うだろ?」


ルシウス「そ、そうだな…」


エルドが自慢げにルシウスの肩を掴む。しかしルシウスの表情は曇っていた。


エルド「どうしたんだよー! そんな考え込んで」


ルシウス「なぁエルド、前に村で倒した魔物はどうやって倒した? そのあとその魔物達はどうなった?」


エルド「そりゃ、全部ルシウスの剣で倒して、魔物達は光になって消え……おい、もしかして」


次の瞬間、エルドの眼前が赤く染まる。普段陽気な顔からは想像がつかないほど表情が凍りつく。


エルド「……おいおいおい、嘘だろ!」


ルシウス「グハッ!」


その鋭いそれはルシウスの心臓を確実に貫いていた。ルシウスは糸が切れたかのようにその場に倒れこむ。


魔物はまだ生きていたのだ。


エルド「おい!しっかりしろ!」


ガレアス「おい、どうなっとるんじゃ!? ……クソ! こりゃまずいなぁ、しっかりと心臓を貫かれておる……」


ルミネ「そんな……嫌だ嫌だ嫌だ!」


後からガレアス、ルミネが駆けつける、ガレアスがルシウスの状態を見るがとても無事とは言えない状況だった。悲惨な光景を目の当たりにした、エルド、ルミネは泣き崩れ、ルシウスに抱きつく様に寄り添う。


エルド「……待ってろ……仇を……とってやる……」


ルミネ「駄目よ! お兄ちゃん! あんなのに勝てっこない! もう私の魔力も残ってないのよ! どうするのよ!」


エルド「なんでだよ! ルシウスが殺されたんだぞ! それで良いのか!」


ガレアス「残念じゃが、お嬢さんの言うてることは真っ当じゃ、誰が見ても勝算があると思えん」


エルド「そんな……ちくしょう!」


魔物「……!」


魔物が怒り狂い暴れ回る。


騎士A「未だ魔物は健在……まずいな」


ギルドの女性「チッ……」


風は全てを連れ去り、絶望だけを残した。


エルド「なぁ……起きろよ……ルシウス……お前、こんな時に寝てんじゃねぇーよ……」


エルドは涙と共に拳を地面に叩きつけた。


――――――――


ルシウス「ん……ここは……そうか僕は死んだんだ……」


ルシウスは意識の世界で目を覚ました。そこには数々の記憶が世界を駆けていた。


ルシウス「これは……誰かの記憶? ……なるほど、やがて記憶や意思、残滓は星を巡る……そういうことか……ん? あれは……」


数多の記憶が流れるように飛び交う。まるでルシウスを導くかのように。


ルシウスは記憶に沿い、しばらく歩くと行き着く先に一つの扉があった。


ルシウス「なんだろう、この扉、なんだか懐かしい……」


ルシウスは扉を開く、「懐かしい」ただそれだけが心を動かす。


扉を開く、眩い光を放ちルシウスは別の空間にいた。


ルシウス「これは……」


無機質な鋼鉄とガラスの白い部屋の中、2人の男と1人の少女がいた。そのうち1人の男はルシウスにとても似た容姿をしている。


ルシウス似の男「やぁやぁ、今日も診察に来たよー」


少女「ワーイ! 博士だぁー! あれ? 今日はダンテも一緒なのー?」


ダンテ「そうだよー! まぁこいつが記録を手伝えって言うんだー! 酷いでしょ? 忙しいのに! しかも突然!」


ミカエル「えーでもミカエル、ダンテに会えてうれしいよー♪」


ダンテ「えへへ! そりゃどうも!」


ルシウス似の男「ほら、診察するから記録の準備!」


ダンテ「ほいほいー」


ルシウス似の男が着々と診察を行い、ダンテと言う男性は一生懸命記録する。ミカエルという少女は無邪気な笑みで診察を受けている。


ルシウス「やっぱり知らない……けど懐かしい……」


ルシウスはただ唖然と傍観していた。知りもしない光景に何故かルシウスの目から涙が溢れる。


ルシウス「どうしてだろう……あの3人を見ると涙が止まらない……」


ルシウス似の男「よーし! 診察終わりー! よしよしミカエルは偉かったねぇ♪」


ルシウス似の男がミカエルの頭を撫でる。ミカエルはただ無邪気な笑みを返す。


ルシウス似の男「よし、明日もまた診察に来るから良い子にしておくんだよー」


ミカエル「うん! わかった! ミカエル良い子にするー!」


ダンテ「じゃ! ダンテ兄さん達は帰るからばいばいー!」


ルシウス「微笑ましい記憶だなぁ……ん?」


ルシウスの真横に扉が再び現れる。


ルシウス「ふむ、開けと……」


ルシウスが扉を開けると、大海に浮かぶ鋼鉄の要塞にいる事に気付く、海は時化、空は今にも泣きそうだ。


ルシウス似の男「経過観察2921日目、ミカエルの状態は非常に安定しているが、メテオライトによる影響か? 魔力係数がここ最近彼女の器の許容量を遥かに超えている。なのに、他に異常もなく正常、ダンテ、これについてどう思う?」


ダンテ「何って自分も初めて見た数値だよ、前例がないんだ、わかりっこない。とりあえずこれまで以上に経過観察は続けよう。敵国に目をつけられたら彼女にも自分達にも状況が悪くなる」


ルシウス似の男「了解した、全く、ついこの間10歳の誕生日を迎えたばかりだというのに…」


ルシウス「こんなところでも、メテオライトが出るのか。それにしても何か不穏だな。」


ルシウス似の男「ん、警報?」


ダンテ「おい、あれを見ろ!」


ダンテが指差す先に要塞の数倍はある津波が押し寄せていた。


ルシウス似の男「津波?地震なんて無かったぞ!」


ダンテ「ええい!とりあえず、地下研究室に避難するぞ」


ルシウス似の男「おう!」


ダンテ「?……クソ! 扉が開かない! 開閉システムの電源がショートしてやがる!」


ルシウス似の男「まずい! ダンテ!」


2人を津波が攫う。


――――――――


ルシウス「……2人はこのあとどうなったんだろうか? ミカエルがこのあとどうなったのか、そしてあの人はどうしてあそこまで自分と似ていて……まぁ、いずれわかる……もう死んだんだ、どうせこの流れの一つになる……ルミネ、エルド……許してくれよ……」


ルシウスの意識は遠のく、暗く冷たい海の底へ沈みゆく。



???「……」


???「……」


ルシウス「……光? ……暖かい……」


外界から声が聞こえる。手を伸ばすと深淵へ陽光が差し込む。


ルシウスは光を掴んだ。


ルシウス「あぁ、そうか…」


掴んだ光、それは星に刻まれた強い意志と祈り、確かにそれは紛れもない《星刻》だった。


ルシウス「そうだ…僕はまだ…死んじゃいけない。運命?定め?そんなものこの世界ごと断ち切ってやる!」


《星刻》は眩い光を放ち世界を照らし。ルシウスは光を掲げて目を瞑る。


ルシウス「……」


――――――――


ルシウス「……皆、ただいま」


エルド、ルミネ、ガレアス「!?」


ルシウスが目覚めた。気づけば魔物によって貫かれた胸の大穴が塞がっていた。


エルド、ルミネ「うあああん!」


双子は家族に抱きくつ。


ガレアス「なんと! 奇跡じゃ!…」


ルシウス「エルド、ルミネ、ガレアスさん……もう大丈夫……後は僕に任せて」


ルシウスは剣を天に掲げる。掲げられた剣は光を纏い、天を穿つ光柱を顕現させる。やがて剣の出力が落ち着くと剣にはただ純粋な光の刃が現れていた。これまでの輝きとは格の異なる威光。


ルシウスはそれを手にした。


ルシウス「――認証コード、セラフィム・デルタ……武装接続……第一ウェポンコマンドを開放、自身の魔力出力量を最大とする――」


ルミネ「すごい……属性に変換せずに純粋な魔力として魔力を出力してるなんて……」


エルド「ルシウスお前……」


ガレアス「こんなの初めて見るわい……」


ルシウス「あぁ…この感じ、まるで身体が力の使い方を知ってるみたいな…力が溢れてくる…」


魔物「……」


魔物はルシウスへ威嚇を行う。まるで剣に怯えるかのように。


ルシウス「さぁ次はお前が狩られる番だ……いくぞ!」


紡がれた意思、祈り、全ては《星刻》に刻まれていた。


星に流れる記憶の中、個を維持するほどそれは強く、旅路の果てへと少年を導き続ける。それはまるで船人を導く夜空の地図のようだった。


風鳴りのミルアルヴにて。

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