第3話 ~冒険者~
霞みががる森をかき分け、四人は奥地へと足を進める。
ルシウス「もうすぐ目的地に着くよ、辺りに注意してね」
ルシウス達は辺りを警戒しする、すると霧の向こうから魔物が現れる。
ガレアス「どうやらここみたいじゃのぉ。いっちょやったるか!」
ルミネ「私とエルドは後方支援を! ルシウス達は前衛お願いね!」
4人は臨戦態勢に入る。
エルド「エンチャント……穿て! 魔導の矢!」
エルドが魔法の矢で敵を穿ち、戦いが始まる。
ガレアス「ほう……やるのお」
ルミネ「ルシウス! 上!」
ルシウスの頭上からフォレストウルフが襲い掛かる。
ルシウス「ネビュラスラスト!」
ガレアス「どらぁ!」
輝く斬撃と鈍く重い一撃が敵を討つ。
ルシウス「ルミネ! 敵が多い。時間をガレアスさんと稼ぐから範囲魔法よろしく」
ルミネ「わかった!」
ルミネは魔物の群れを一掃するため、範囲魔法の詠唱を始める。
ルミネ「空よ、天の氷槍と……」
エルド「おい! 1匹そっちに行ったぞ!」
詠唱中のルミネにオーガが棍棒を振りかざす。
ルミネ「きゃっ!」
ガレアス「おっと! うちの嬢ちゃんに触れさせねーぜ! どらぁ! ほれ! 嬢ちゃん詠唱を続けな!」
ガレアスが間一髪のところてオークの一撃を盾で防ぎ、斧で反撃する。その後ルミネは詠唱を再開した。
ガレアス「おい 坊主共! わしの盾に隠れろ!」
ガレアスは盾を傘のように構え、ルシウスとエルドを守る。
ルミネ「空よ、天の氷槍と成りて敵を凍て刺せ! アイシクルレイン!」
ルミネが放った魔法は無数の氷の槍となり、雨の如く大地に降り注ぐ。
ルシウス「ふう、やっぱりルミネの魔法はすごいね」
エルド「まったくほんとだぜ…少し分けてもらいたいくらいだよ」
魔物は一掃され緊張した空気が緩み、空間に日常が訪れる。しばらくすると辺りの霧は少し薄くなっていた。
ガレアス「いやはや、お主達は本当に駆け出しかのう? 良い戦いじゃったぞ!」
ルシウス「いえいえ、ありがとうございます!ガレアスさんこそルミネの魔法を盾で受け切れてて凄かったです!」
ガレアス「ガッハッハッハ! 口がうまいのぉ!」
エルド「よーし! 依頼も終わったことだし街を戻ろうぜー」
ルミネ「そうね、丁度霧が晴れてきそうだしかえりましょ!」
4人は来た道を戻り、街へと帰る。森から出る頃には夕日が街を照らし、果ての地平線は燃えるように煌めき出す。
ルシウス「今回はお手伝いありがとうございました!」
ガレアス「いいんだよ! そうじゃ! 折角初依頼をこなしたんじゃ! 祝いに飯に行こうじゃないか! 勿論、ワシが奢る!」
ルシウス「いえいえ!悪いですよ!」
ルミネ「ねぇールシウス。こうゆうときはお言葉に甘えなきゃ♪ 折角ガレアスさんが良くしてくれてるんだしさぁ♪」
ルミネがルシウスの肩を叩く。
エルド「そうだぜ!」
ルシウス「はぁ……わかった! すみませんガレアスさんよろしくおねがいします!」
ガレアス「気にせんでええ! とりあえず先の依頼の報告を済ませるぞ! ガッハッハッハ!」
石門をくぐりギルドへ向かう。日は沈み世界は暗くなっても街の喧騒は明るいまま。
エルド「報酬金イェーイ!」
ルミネ「ちょっと!お兄ちゃん!ちゃんと歩かないと危ないよ!」
ガレアス「あそこの店がうまいぞ! 行くか?」
ガレアスが向かいの店先を指差す。店名は"大衆食堂ビックホエール"以前ルシウス達が食事をしたところだった。
ルシウス「あ〜! 昨日街に着いたときそこで食事をしたんですよ。美味しいですよね!」
ガレアス「おおお、そうかそうか! お主達中々いい舌をしておるのぉ! では行くぞ!」
すっかり暗くなった頃、風と共に香りが食欲を掻き立てる。4人は店へと向かう。
ガレアス「ん、なんじゃ? ありゃ」
エルド「おい! ルシウス! 剣が!」
メトシエラが輝き出す。その光りは村での戦いを思い出させる。
ルシウス「!?……まさか……まずい! 奴らだ!」
そのときだった、街に鐘の音が鳴り響き街の喧騒がかき消される。
住人A「なんだぁ? うるせぇなぁ……」
住人B「おい! あれ! クソデケェーぞ!」
街中に警鐘が鳴り響く、空を見上げると見慣れない星が燃えるように赫く輝いていた。
ガレアス「!?……こんなときに隕石じゃと! お主ら! 急いで建物の中に入るんじゃ! 急げ!」
ガレアスがそう言うとルシウス達は建物に避難をし出す。そしてそれつられ、辺りに居た人々も身を守る行動をとりだした。
ガレアス「お主ら! ワシの背中に隠れてろ! 嬢ちゃん! 全力で防御魔法を展開させるじゃ!」
ルミネ「はい!」
ルシウス「いや……これは違う! あれはただの大きい隕石なんかじゃない!」
ルシウスは何かの異変に気付いたのか思考を錯綜させる。
ガレアス「大地よ! グレートウォール!」
ルミネ「聖域の結晶よ! 我らを守りたまえ! クリスタリア! 汝、黒鉄の加護を授けん!アイアンソウル!」
ガレアスが盾を構えると防御魔法を発動させ岩の障壁を周囲に作り出す。その後ろでルミネが魔法を発動させ結晶のドームを作り出した、その後ガレアスに防御系の強化魔法を施す。
住人C「ま! 不味い! 間に合わ…うああああ!」
外から逃げ遅れた人々の声が星の落ちる轟音と共に聞こえてきた。
間も無く、星が落ちる。
ガレアス「クソ! うおおお! 死んでたまるかぁぁ!」
ルミネ「……っ! ……はぁ!」
熱された瓦礫の波が、ガレアスとルミネの障壁を砕き、削り取る。
ルシウス、エルド「ガレアスさん!」
今にも吹き飛ばされそうなガレアスをルシウスとエルドが背中を押さえた。
凄まじい衝撃が鼓膜を叩き付ける。
ガレアス「うおおお!」
星が落ちた。
凄まじい衝撃が走り街は炎に包まれた。星は街の外に落ちたが、壊滅させるには充分過ぎるほどだった。
ガレアス「はぁはぁ……お主ら……大丈夫か?」
ルシウス「……えぇお陰様で……」
エルド「……いててて、あんなでかいの初めて見たぜ…」
ルミネ「……待ってて、今回復魔法をかけるからね……ヒール……」
先程の衝撃でボロボロになった仲間に自分も含め、ルミネは回復魔法を施した。
魔法使いA「……大丈夫か?」
騎士A「ええ……」
警護隊A「皆さん大丈夫ですか!? 聞こえていますなら返事をしてくださ〜い!」
ルミネ「良かった…何人か生き残ってる人が居るみたいね。」
ルシウス「……いや……おかしい、剣がまだ輝き続けてる。本当だとしたら近くにあいつらが居るはずだ、でもこの状態でどうする? 考えろ俺!」
ルミネ「どうしたの? 何か考え事?」
ルシウス「実は……」
エルド「おい! ルシウス! あれ!」
ガレアス「今度はなんじゃ!」
星が落ちて形成されたクレーターから1体の巨大な魔物が這い出てきた。その魔物は以前ルシウスたちの村を襲った魔物と比べ形や大きさが異なるが、似た雰囲気を放っていた。
エルド「おいおい! 嘘だろ! 街の半分くらいの大きさだぞ! あれ!」
ルシウス「……っ!」
瓦礫の街に更なる悲鳴が響き渡る。人々が魔物を恐れ、逃げ惑う。
未知の魔物「……」
住人D「キャーッ!」
魔物は人々を街ごと熱線で焼き払い、爪で辺りを切り裂いていく。
ガレアス「街が……ああ……なんてことだ……」
ガレアスは変わり果てた街を眺め、怒りと混乱が入り混じり、ただ呆然と立ち尽くす。
ルシウス「クソ……俺は奴をここで討つ!」
エルド「あぁ、お前なら言うと思ったぜ! 手伝ってやんよ! ルミネ! 残りの魔力はどうだ?」
ルミネ「ふんっ! 私を甘く見ないで! こんなことで私の魔力が無くなるわけないでしょ!? だってお兄ちゃんの妹だもの!」
エルド「へっ! いつもはバカにするくせに、全く都合の良い妹だぜ」
ルシウス「なに、嬉しそうにしてるんだよエルド! あんなこと言われたらちゃんとカッコいいところ見せなきゃだね!」
エルド「ああ!」
ガレアス「お主達……うし! ならワシも行ったろう!強い相手には盾が必要じゃろうて、血の気が多い若いもん共はどんどん攻めなぁ!」
ルシウス「ガレアスさん!」
ガレアス「なぁーに! ここでお前達に死なれたら旨い飯を奢ってやる約束はどうするんじゃ? なぁ!」
エルド「約束だぜ!爺さん!」
ルミネ「ふふ♪ じゃぁ張り切っちゃうよ!」
ルシウス「よし! 皆! あいつを倒して必ず生き残るぞ!」
エルド、ルシウス、ガレアス「おぅ!」
4人は意を決して、魔物に立ち向かう。
ルミネ「精霊の息吹よ! リジェネレーション! 猛き戦士に栄光あれ! 力を授けよ!バトルソウル!」
ルシウス「強化ありがとう! はぁっ!」
ルシウスは魔物のとの距離を一気に詰める。
ルシウス「ブレイブプレアデス!」
魔物「……!」
魔物が熱線を放つ。熱線が放たれた箇所はマグマの様に融解した。
ルシウス「……っ! あれに当たったらひとたまりもないなぁ…ガレアスさん!極力物理攻撃以外は回避に専念して!」
ガレアス「了解した! どりゃ!」
エルド「エンチャント! 穿て! 魔導の矢!」
ルミネ「イノセントブレイズ!」
魔物「……!」
4人は一糸乱れない動きで魔物を翻弄する。この光景はさながら英雄譚、人々の瞳に希望が灯された。
ギルドの女性A「皆さん! これより緊急クエストを開始します! 任務内容は突如出現した未知の魔物の討伐です。どうか、この街をよろしくお願いします!」
弓使い「仕事か……」
魔法使いA「こうしちゃいられないね、僕たちも行こう!」
騎士A「ああ! そうだな!」
戦士A「おい野郎共! 行くぞ!」
戦士B、C、D「おう!」
冒険者一同「うおおおお!!!」
街中の冒険者がルシウス達に加勢する。
ルシウス「よし! これならいける!」
ガレアス「燃えてくるのぉ! これこそ冒険者魂よ! ガッハッハ!」
絶望の後には希望が待つ。灯された火は戦士を鼓舞し、勇気を授ける。そしてそれは決して消えることは無い。
風鳴りの街にて。