第2話 ~ミルアルヴ~
朝日は照らす。夜ばかりでは寂しいから。
風は吹く、旅路を祝福する様に。
ルシウス「えーと、ミルアルヴはこの森の街道を直進……」
一向は地図を眺めながら街道を行く。
エルド「なぁぁルシウスぅぅぅまだつかないのかよぉぉ、俺疲れたぜぇぇ……」
ルミネ「はいはい、お兄ちゃん足貸して」
エルドは申し訳なさそうにルミネに両足を預ける。
ルミネ「面倒ね……ヒール……」
エルド「うっほ!やっぱりルミネの回復魔法は効くなぁ!これからも頼りにしてるぜ!」
ルシウス「二人共、見て街が見えてきたよ!」
街道を抜けると、眼下に広がるは石の外壁に守られた街、風鳴りの街。左には広大な草原と連なる山々、右には穏やかな大海原が広がる。水面が陽の光に照らされギラギラと輝き出す。
ルミネ「うわー♪ 綺麗♪」
ルシウス「街についたらまず宿を探そう」
エルド「りょーかい!」
ルミネは気分が乗ったのか歩く速度を少し早め、エルドはそんな妹を追いかける。しばらくすると、その後ろでルシウスがにこやかな笑みを浮かべ二人の後について行く。
エルド「よっしゃぁ! 一番乗りぃ! てか腹減ったぁ……」
ルミネ「ねぇルシウス、宿を探す前に何か食べない?」
ルシウス「そうだね、じゃまずは市場に行こう。あそこは美味しいお店が沢山あるからね」
エルド「よっしゃぁ!」
門をくぐり市場の大通りへと向かう。酒樽の積まれた馬車にさまざまな露店が立ち並ぶ。
ルミネ「んー、なになに? 大衆食堂ビックホエール……ねぇルシウス、ここにする?」
ルミネは店先の看板を読み、ルシウスに提案する。
ルシウス「うん、ここにしよう」
エルド「あ、そういえばミルアルヴって海産物が有名なんだっけ? 久しぶりに海のものが食えるじゃん! やったぜ!」
店に入るルシウス達は壁に書かれたメニュー板を見て注文する。
店員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
しばらくすると注文した品が届く。
店員「お待たせいたしました。ご注文の塩茹でアビサルクライブ、レッドシェルのトーマト煮込み、バター焼きストーンヘッドです。」
料理が目の前に並べられ、海の恵みを噛み締め、味わう。
エルド「あぁうめぇぇぇ!」
???「……生三つ!」
ルミネ「あの人、昼間からすごい量飲んでるね……」
髭長ドワーフの男が大酒を飲んでいた。幾つものジョッキが積まれている。
店員「かしこまりました。生三つ!」
三つのジョッキが運ばれると滝の如く胃へと流し込む。
???「ほれ、あんちゃん!4200ゴールド」
男は酒を飲み終わすと会計を済ませて店から出て行った。
ルシウス「全然フラフラしてなかったな…」
エルド「たしかに……てかあの人冒険者かな? 装備かなりゴツかったぜ、警護兵のバッジも付けていなかったし」
ルシウス「ギルドに行ったら居たりしてな、よし、二人とも食べ終わったね、そろそろ会計済ませるよ」
三人は店を後にし宿へと向かった。
エルド「はぁぁぁ久しぶりのベッドだぁぁ」
ルミネ「やっぱり野宿はきついよねぇー」
軋むベッドにもたれかかる。
ルシウス「当分はここで寝泊まりするから良かったね」
ルミネ「明日から早速ギルドに行くんでしょ? もう暗いし寝ない?」
ルシウス「そうだね、おやすみ」
エルド「りょーかぁーい」
ルシウスは蝋燭の火に息を吹きかけ、月明かりが差し込む部屋の中、三人は眠りにつく。
辺りの虫が寝静まったあとだった。ルミネは重い瞼を開ける。
ルミネ「……なんだ、ルシウスの剣か……」
部屋の隅に掛けられた剣が淡い光を放っていた。ルミネは寝床から降り、床を軋ませながらルシウスに近づいた。
ルミネ「……ねぇー起きてールシウス」
ルシウス「……なんだ?……」
ルミネ「なんか剣が光ってるよ」
ルシウス「本当だ、どれどれ……」
ルシウスは体を起こして寝ぼけたまま剣を掴む。
……その瞬間、全身に魔力が流れ込む。まるで体に新しい情報が刻まれるかのように。
まだ見ぬ景色が頭を駆け巡る。
広大な雪原、その果てに映る一つの古城、吹雪く世界の中でそれは霞むように見えていた。
《???「なら、話しは早い、それを手に取ればあとの事は剣が教えてくれるからはずさ」》
ルミネ「…ルシウス?…ねぇールシウス?寝ぼけてる?」
意識が戻る。
ルシウス「……あとの事は剣が教えてくれる……」
ルミネ「どうしたの? いきなりぼーっとして」
ルシウス「実は……」
ルシウスは身に起きたこと、知ったことをルミネに淡々と話した。
ルミネ「なるほど……じゃあそのお城について調べないといけないね。ほら名前とか、場所とか」
ルシウス「そうだね、なら明日ギルドの人にも聞いてみようか」
ルミネ「そうね」
エルド「……おまえら……うるさいぞぉぉ……」
エルドは眠そうに文句を言ったあと再び眠りについた。
ルミネ「そうだ、このことは私からお兄ちゃんに言っておくね」
ルミネは兄を起こさぬよう顔を近づけて囁いた。
ルシウス「ありがとう、よし、エルドをまた起こしたら悪いし寝るね。おやすみー」
ルシウスがそう言うとルミネは自分の寝床に戻り、再び眠りにつく。
やがて夜が更け、宿の外から人々の喧騒が聞こえてくる。開かれた窓からは朝日が差し込み、柔らかい海風が吹き込んで来る。
ルシウス「……おはよ……」
エルド「おーい! 起きろー! 寝坊助さーん!」
ルシウス「ごめん……すごい寝てた……」
エルド「ルミネから昨日の夜のことは聴いたぜ、その剣が教えてくれるみたいだな、とりあえず宿の受付の前で待ってるから早く支度しろよー」
エルドは部屋を後にして一階へ向かった。それを見てルシウスは急いで支度をし終えると二人の元へ向かう。
ルシウス「はぁ……はぁ……お待たせぇぇ」
エルド「おっ来た来た」
ルミネ「さぁ! ギルドにしゅっぱーつ!」
行き交う人混みの中、市場の大通りを真っ直ぐ進むとギルドについた。
エルド「いぇぇぇい! ついたついた! 早速登録と能力検査しようぜ!」
ルミネ「そういえば確かルシウスは能力検査したことあるんだっけ?確か魔法は使えないんだよね……」
ルシウス「大丈夫、魔法は使えなくとも何とかするさ、それに今はこの剣がある! さぁ行こう!」
門をくぐり、中に入ると登録受付を手早く済ませ、能力検査の申請をした。
受付の女性「かしこました。ではこちらの用紙に手を置いてください。」
ルシウス達は紙に手を置くと、受付の女性は煌めく水を手の甲に一滴ずつ垂らす。すると紙に文字が浮かび上がる。
受付の女性「数値の項目は最大100、それ以外はSが最高の値となります。参考程度に。」
エルド「すんげー! どれどれ……」
《エンド•リンド》
体力40 力40 技量60 俊敏60 魔力80
物理耐性C魔力耐性B
属性強化補正:火 特殊属性:無し
-取得スキル-
【エンチャント強化】【マナリジェネ】
エルド「うぉぉぉ、すんげー! 魔力80もある! 俺最強! 俺最強!」
ルミネ「さてさて、私は……」
《ルミネ•リンド》
体力40 力30 技量50 俊敏40 魔力95
物理耐性D魔力耐性B
属性強化補正:火•水•地•風•雷 特殊属性:光
-取得スキル-
【省略詠唱】【マナリジェネ】【属性複合化】
ルミネ「魔力95に補正は基礎属性全て、特殊属性に光、レアスキルの省略詠唱と複合化まで……私ったら最高! やった〜!」
エルド「俺……最強……俺……最強……」
ルミネ「そうだルシウスはどうだった?」
ルシウス「見たことないスキルが一つ増えてるみたいだ、変な特殊属性付いたみたい、ほらこれ」
《ルシウス》
体力50 力50 技量65 俊敏60 魔力100
物理耐性C魔力耐性C
属性強化補正:無し 特殊属性:無垢なる魔力
-取得スキル-
【魔力発動障害】【呪い無効】【認証コード:seraphim_δ】
ルミネ「無垢なる魔力……村で戦ったときの青白い光のことかな?」
エルド「にしても三番のスキルなんだこれ、読めないぞ?」
ルシウス「さぁね、自分もよくわからない。」
ルミネ「そういえば何か忘れてない?」
ルシウス「そうだ! すみません、永遠と吹雪いてる広い雪原にある古いお城って聞いたことありませんか?」
受付の女性「ブリザルデ平原のことですかね。古いお城については申し訳ありません。情報がありません。ここの領域は大変危険で入った途端に凍死するらしくて……」
ルシウス「いえいえとんでもない。その情報を聞けただけでも満足です!ありがとうございました。」
ルシウス達は残念そうにクエスト掲示板へ向かった。
エルド「んー、どれも三人じゃ無理そうなクエストばっかだなぁ……」
ルシウス「うん、人募集してみるね……ん、あれ? あの人、昨日食堂にいたドワーフの人だ声掛けてみるね」
ルシウスは一人で依頼を眺めるドワーフの男に話しかけた。
ルシウス「すみません!もしよかったら一緒にクエストに行きませんか?」
???「ほほぅ、見た感じ盾役がいなさそうじゃのう、よーし分かった! 協力しようじゃないか! 儂の名はガレアス•オットー! ガレアスと呼んでおくれよ! ガッハッハッハ!」
ルシウス「二人共ー! ガレアスさんが仲間になってくれたよー!」
エルド、ルミネ「よろしくお願いします」
ガレアス「おうよ!あと堅苦しいのは嫌いじゃ、タメ口で話そうじゃないか! んで、何を受けようとしてたんじゃ?」
ルシウス「オーガ三体とフォレストウルフ10体の討伐……」
ガレアス「うむ! 準備は良さそうじゃな? よし! なら出発じゃ!」
追い風は吹く、旅路を後押しするように。
新しい仲間を迎え入れ、未知への期待を抱きながら、歩み出す。
風鳴りの街にて。
気分で書いてるから投稿頻度少ないかも!?
一応、流光オラシオンは4シリーズ完結予定です。