アイス
ちょっと際どい描写になっているかも知れません。
ノアルが警察に捕まっていると弁護士を名乗る男の人から電話があった。
付き合っていた人に振られ、ストーカー行為をしていた。
エスカレートして玄関の郵便受けにお酢を流し込み、防犯カメラに写っていたので事情聴取を受ける事になり、出頭してそのまま逮捕に至ったそうだ。
他にも迷惑行為をしていた様で、一部否認しているので、接見禁止の措置を取られ面会はできないと言う。
現在親と弁護士が奔走して被害届の取り下げに動いているのだそうだ。
この間数字が気になってノアルの話をちゃんと聞いてあげる事ができなかった、、、
今思うと、何か相談したくて誘ってくれたのかも、
そう思うとやるせない気持ちになってしまった。
ノアルのお母さんから仮釈放で警察から戻ったとの連絡が入った。
戻ってから食事も摂らず部屋に引きこもって三日が立つと言っている。
私にならあっても良いとドアの下からメモが出てきたので、会いにきて欲しいと電話口で泣きながら懇願されたので課長に嫌味を言われながら会社を早退させてもらいノアルの実家に向かうことにした。
部屋に入ると薄暗くテーブルの上には蝋燭が灯っている。
カーテンを閉め切りノアルは生気もなく、眼だけがギラギラとしていた。
あれっなんかおかしい?
カウントダウンの数字がマイナス表記になっている?
どう言う事なの?
訳がわからず、戸惑って立ち尽くしていると、ノアルはストローを咥え蝋燭に試験管を翳して炙る様にしている。
試験管に咥えたストローを入れて何かを吸い込んで恍惚の表情になっている。
「な、何をしているの?」
「アイスよアイス、これでも吸わないとやってらんないのよ、あんたもやる?」
「アイスってなんなのよ、ねえ大丈夫?ご飯食べてないんでしょ?どうしちゃったのよ、ねえ、ねえ」
「覚醒剤」
「皆んなやってるでしょ」
言葉が出なかった、麻薬に逃げた親友の姿があまりにも汚らしく見えてしまって、ここから早く出たかった。この部屋の空気も吸いたくない、薬くさい変な匂いがしてくる。
嫌だ、早く出たい。
ハンカチで口を押さえて立ち尽くしていると。
「こんな街無くなっちゃえば良いのよ。親も警察も、あいつも、、、あっでもイツキは別よ親友ですもの、、、ママにはアイスの事言わないでね、もう二度とあんな所には行きたくないのよ」
「8月になったら旅行に行ったら良いと思うの、そう8月になったら、、、ふふふふふ」
「きてくれてありがとう、それだけ伝えたかったの、私これから部屋の掃除をするの、忙しいのに来てくれたのに、、ごめんなさいね」
背中を押される様にドアから出されてしまった。
カチリとロックの音がノアルの心の鍵を閉めた音にも聞こえた。
挨拶もそこそこに逃げる様に出てきた。
どうすれば良いのかわからず、混乱して、心配で、同時に薬に逃げた友人に怒りが込み上げる。
様々な感情が入り乱れてガシガシと歩く。
気がつくといつものコンビニの前に着いていた。
死神ちゃんは私の事を見つけるとちょっと驚いた顔をしたが優しく微笑みかけてくれた。
出なかった涙が溢れ出して来た。
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