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[第五部完結]【書籍化】大魔術師様に嫁ぎまして~形式上の妻ですが、なぜか溺愛されています~  作者: 狭山ひびき
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キノコパニック 1

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 チュンチュンと、窓の外からは可愛らしい鳥の鳴き声が聞こえます。

 カーテンはまだ閉めたままですが、隙間から白く輝く光が差し込んでおりますので、どうやら朝のようです。


 ……もしかしなくとも、朝寝坊をしてしまったかもしれません。


 グレアム様に抱きしめられた体勢で目を覚ましたわたくしは、寝過ごしてしまったことへの申し訳なさを感じつつも、同時に昨夜の出来事を思い出して急に気恥ずかしくなってきました。


 結婚式を終えて、ドウェインさんという珍客の相手をした後、予定通りパーティーを開いて、そしてわたくしはグレアム様と一緒に眠りました。

 メロディが「夫婦の部屋を使うのは結婚式を挙げるまでは禁止です」と言っていたので、昨夜はじめて夫婦の寝室に足を踏み入れたのです。

 白を基調に整えられた寝室は、おそらくわたくしの好みを優先してくださったのか、とても可愛らしい雰囲気でした。

 どきどきして恥ずかしくて頭がおかしくなりそうになりながら、グレアム様と夫婦の夜を過ごして、今日。

 眠りについたのが遅かったからなのか、わたくしはいつもの時間に目覚めなかったようです。


 ……疲れていたからかもしれませんね。その……いろいろと。


 わたくしがグレアム様の腕の中で熱くなった頬を押さえておりますと、もぞもぞとグレアム様の腕が動きました。

 わたくしの後頭部に手が触れて、優しく髪を梳くように撫でられます。

 顔を上げますと、グレアム様が綺麗な金色の瞳でわたくしを見つめていました。


「おはよう、アレクシア」


 寝起きのかすれた声に、わたくしはさらにドキドキしてしまいます。


「お、お、おはようございます、グレアム様……」


 わたくしは少々どもってしまいました。

 気恥ずかしくて仕方ありません。

 世の中の夫婦は、どなたもこのような気持ちを味わっているのでしょうか。

 ドキドキして、くすぐったくて、恥ずかしくて、でも嬉しくて、「きゃあっ」と叫んでごろごろとベッドの上を転がりまわりたくなるような変な気分になるのです。

 グレアム様がどこかとろんとした目をして、わたくしの額にこつんと額をくっつけます。

 そして戯れるように、額や頬、鼻の頭や目じりなどに口づけた後で、ゆっくりとわたくしの口を塞ぎました。


「ん……グレアム様、起きないと……」


 普段ならとっくに朝ごはんを食べている時間だと思います。もしかしたら食べ終わっている時間かもしれません。メロディが起こしに来なかったのは気を使ってくださったからかもしれませんが、いつまでも寝室にこもっているとご迷惑でしょうし、それにとても恥ずかしいです。


「まだいいだろう。あいつらもわかっている」


 なにをわかっていると言うのですか⁉


 なんだかちょっと怪しい雰囲気になってきましたよ。

 これは危険です。よくわかりませんが危険な気配がします。ドキドキして心臓が壊れる予感大です。いえ、嫌というわけではありませんがでもでもでも……!

 わたくしが葛藤している間に口づけが深くなります。


 ……どうしましょうどうしましょうどうしましょう……!


 妻としてはこのまま夫の意志に従って身を任せるべきでしょうか。

 何が正解ですか? 誰か教えてください!

 わたくしがおろおろしながらも、グレアム様のお望みどおりにしようとしたときのことでした。


「ぐげげげげげげげっ」

「「…………」」


 チュンチュンという可愛らしい鳥の鳴き声に交じって、今、聞きたくない音が聞こえましたよ。

 数秒固まったグレアム様が、ゆっくりとわたくしの唇を解放してくださいます。

 それからぐりんと窓の方を振り返りました。


「……おい。あの珍妙なキノコは、あれ一個じゃなかったのか⁉」


 えーっと……。

 昨日ドウェインさんが持ってきた混沌茸は、グレアム様が箱に閉じ込めて地下の研究室に置いてあります。わたくしにはよくわかりませんが、混沌茸の何かを調べたいそうです。

 あの「ぐげげげげげ」という音はこう、どうしようもなく不安を感じる……と言いますか、ぞっとさせますので、音が聞こえないようにグレアム様が何重にも箱を重ねて閉じ込めたはずです。

 なのに、なぜあの音が……。

 わたくしとグレアム様が互いに無言で固まっていますと、バタバタという足音が聞こえてきて、ドンドンと部屋の扉が叩かれました。そして間髪入れず――


「ちょっと旦那様‼ 今すぐ起きてあのキノコ馬鹿をなんとかしてください‼」


 メロディの悲鳴なんだか怒号なんだかわからない声が、響きました。





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