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[第五部完結]【書籍化】大魔術師様に嫁ぎまして~形式上の妻ですが、なぜか溺愛されています~  作者: 狭山ひびき
大魔術師様の妻をやめるつもりはありません

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コルボーンからの知らせ 2

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 今日のティータイムはグレアム様と一緒です。

 お時間が許すときは、グレアム様はこうして一緒にティータイムをすごしてくださるのです。

 たまには外もいいだろうとグレアム様がおっしゃって、今日は裏庭にティーセットが準備されました。


 朝から雪がぱらついておりますし、もちろん足元にも積もっておりますので、寒いのではないかと思ったのですが、そこはさすが大魔術師様。

 火魔術であっという間に足元の雪を解かし、土魔術で少しぬかるんでいる地面を固め、風魔術で半円状の結界を張って、風魔術と火魔術の複合魔術で結界内の空気を温め、あっという間に雪も入り込まないぽかぽかの空間を作ってしまいました。

 少し薄暗いからと、光魔術で灯りまで灯してくださいます。

 見渡す限り真っ白な世界にいるのに、ここだけ寒くないなんて、とても不思議な気分です。


 わたくしの後ろにメロディが、グレアム様の後ろにマーシアが立ち、お茶を入れたりお菓子を取ってくれたりしてくださいます。

 グレアム様がいらっしゃらないときのティータイムは、メロディもマーシアも一緒に席についてくれるのですけど、グレアム様がいらっしゃるときは二人とも遠慮してしまうのです。


「今日は、結婚式後のパーティーで出すデザートの試食をお願いいたしますと料理長が。この中に気に入ったものがあれば教えていただければ候補に上げておきますのでおっしゃってください。もちろん、これからも試作品をいくつも作りますので、今日のデザートの中にお気に召したものがなくても大丈夫です」


 マーシアがわたくしとグレアム様の前にラズベリーソースのかかったチョコレートムースを置きました。今日は五種類ほど味見をしますので、サイズは小さめです。

 今日は味を確かめるだけでシンプルな見た目ですが、結婚式当日は生クリームやフルーツ、食用の花などで飾り付ける予定だとマーシアが言いました。ビターなチョコレートムースに鮮やかな赤いソースがかかっていて、今でも充分見た目が華やかだと思うのですけどね。

 ぷるぷると揺れるムースを口に運べば、つるんと心地のいい舌触りがいたします。


「甘すぎなくていいな」


 グレアム様がおっしゃる通り、ムースは甘さ控えめで、ソースが甘酸っぱいので、見た目よりもさっぱりしていてとても食べやすいです。美味しい。


「グレアム様、候補に上げますか?」

「いや、待て。もちろんお前が気に入ったのならいいんだが、今日はあと四種類もある。候補を大量にあげると最終的に選ぶときに困ることになるから、今日は多くても二つに絞った方がいい」

「二つですか……」


 ほかのものはまだ食べてはいないのですが、どれも美味しそうです。


 ……二つ。選べるでしょうか。


 コードウェル城の料理人たちは毎日とても美味しい食事を作ってくださいます。美味しくなかったことがありません。だから間違いなく全部美味しいはずなので、選ぶとなると悩みそうです。

 ムースの次に出されたのは、一口サイズのタルトでした。タルト生地の上にカスタードクリームが乗っていて、その上をフルーツが彩ります。これは、フルーツを変えていろんな種類を作るようです。わたくしの前に出されたのはイチゴで、グレアム様の前に出されたのはオレンジでした。


 そういえば、コードウェルは寒い地域ですので、食糧事情がとても気になっていたのですが、この地域で育たない野菜や果物は他領から輸入をしたり、温室栽培をしたりしているのだそうです。

 グレアム様は、そのうち農業に役立つ魔術具を開発して、巨大な温室を作りたいと言っていました。コードウェルは自給率というものが低いので、それを向上させなければならないらしいです。

 そんなわけで、オレンジは南の領地から輸入し、イチゴは温室栽培で採れたものだそうです。

 グレアム様がナイフとフォークを使って、小さなタルトを器用に半分に分けました。


「ほら」


 半分に切ったタルトを、わたくしのお皿に載せてくださいます。

 半分こですね! ではわたくしも!

 グレアム様をまねて慎重にタルトを半分にしたわたくしが、同じようにグレアム様のお皿に載せて笑いますと、グレアム様がちょっとだけ顔を赤くしました。

 魔術で結界の中はぽかぽかしますので、グレアム様には暑いのかもしれません。


 ……イチゴのタルトもオレンジのタルトも美味しい!


 タルトを食べ終えたところで、メロディが新しい紅茶を用意してくださいます。

 結婚式では紅茶も数種類準備するのですって。

 さっきまではベルガモットで香りづけした紅茶を準備してくださっていたのですけど、今度は茶葉を変えてミルクティーにしてくれました。


 あ、ミルクティーに蜂蜜が入っています! 蜂蜜入りのミルクティー、大好きです。

 メロディは目が合うとにこりと微笑んでくれました。

 お次はスコーンです。でも、ただのスコーンではありません。ジャムが一緒に練られて焼かれています。しかも、ハートや星形の形をしていてとてもかわいいです。


「味はついておりますからそのままでも構いませんし、ぼそぼそするのがお嫌であればクリームをつけてお召し上がりください」


 マーシアが生クリームとクロテッドクリーム、そしてチーズクリームの三種類を用意しながら言います。


「アレクシア、スコーンは胃にたまる。半分にしておけ」

「はい!」


 グレアム様がご自身のスコーンを半分わたくしにくださいました。

 わたくしはまだ胃が小さいので、おそらくスコーンを一個まるまる食べてしまうと、残りの二つのお菓子が食べられなくなりますからね。


 まずは何もつけずに一口。

 どうやらこれはリンゴのジャムが入ったスコーンですね。普段食べるスコーンより少ししっとりしています。

 次に悩みに悩んでチーズクリームを添えました。美味しい! クリームがなくても美味しいですが、あったほうが好きです!

 グレアム様もクリームがある方がいいなとおっしゃっています。

 スコーンは口の中の水分が持っていかれますから、ミルクティーで喉を潤して、わたくしが次は何が出てくるのかしらとマーシアを見やったときでした。


「グレアム様、デイヴさんです」


 お城から、デイヴさんが急ぎ足で歩いてくるのが見えました。


「旦那様、コルボーンからの知らせが」

「コルボーンから?」


 グレアム様が眉を顰めます。

 コルボーンはもともとクレヴァリー公爵領にあった村の名前で、今は狼の獣人のブルーノさんがコルボーン子爵として治めている土地です。

 異母姉ダリーンが王命で嫁いだ場所でもあります。


「今、ロックの指示で諜報隊を数名向かわせて状況の確認をさせていますが……、その、ダリーン・クレヴァリー公爵令嬢……いえ、ダリーン・コルボーン子爵夫人が、行方をくらませたそうです」





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