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[第五部完結]【書籍化】大魔術師様に嫁ぎまして~形式上の妻ですが、なぜか溺愛されています~  作者: 狭山ひびき
大魔術師様の形式上の妻になりまして

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エイデン国にご招待されました 2

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「た、高いですね……」


 一週間後。

 わたくしは、鳥車の窓から下を見下ろして、ごくりと唾を飲み込みました。


 数人の鳥の獣人たちが引く鳥車は、動き出した途端にぐんぐんと上空へ向かい、雲の上まで上がってしまいました。

 見下ろせば、白い雲と、それから雲の合間から地上が見えますが、建物も森もすごく小さくて、いまだかつて経験したことのない高さに眩暈を覚えそうです。


 エイデン国へは、グレアム様とわたくし、それからメロディとオルグさん、そしてロックさんが向かうことになりました。

 ロックさんが一緒に行くのは、何かが起こったときにすぐにコードウェルを任せてきたデイヴさんと連絡が取れるからだそうです、鳥の獣人であるロックさんなら、コードウェルまでひとっ飛びで帰れますからね。


 留守は、デイヴさんとマーシア、そして、前領主であるバーグソン様にお任せです。

 エイデン国には五日ほど滞在予定ですが、もしその五日の間にコードウェルで何か問題が起こったとしても、この三人に任せておけばよほどのこと以外は大丈夫だとグレアム様がおっしゃっていました。


「お前って過保護だったんだなぁ」


 対面に座っているエイブラム殿下が、グレアム様と、それからわたくしを見てにやにや笑いながら言いました。


「うるさい。震えていたんだから当たり前だろう」


 ええっと、ですね。

 わたくしは今、グレアム様のお膝の上に横抱きにされております。

 鳥車が飛び上がった瞬間。急に訪れた浮遊感に怖くなって、わたくしがびくりと震えたところ、このような体勢になりました。


 まだ少し怖いには怖いですが、さすがにもう震えておりませんのに、グレアム様はしっかりとわたくしを抱きしめて放しません。

 ここにメロディがいたら、また「セクハラ」と言い出しそうですね。


 ちなみに、メロディ、オルグさん、ロックさんの三人は後続の鳥車に乗っています。

 ロックさんは飛べるので乗る必要はないのですが、わたくしたちはクウィスロフト国の客人一行ですので、体裁というやつだそうです。


 メロディはグレアム様がわたくしに触れるたびに「適切な距離」とやらを取るようにグレアム様に注意しますが、その、わたくしは、こうしてグレアム様に抱きしめられるのは嫌ではありません。

 ドキドキしますが、特に今のように少し不安なときは、グレアム様に抱きしめられている方が安心するのです。


 ですので、別に「セクハラ」とやらでもいいのですけどね。それが何かはまだよくわかっておりませんが。


「しっかし、見れば見るほどいい魔力持ってるねぇ。なあアレクシア。グレアムに飽きたら、いつでも俺の嫁になりに来ていいからなー」

「え⁉」

「ふざけるな‼」


 わたくしがびっくりして瞠目するのと、グレアム様がエイブラム殿下を一喝するのは同時でした。

 エイブラム殿下はけらけらと笑っていらっしゃるので、きっと冗談だったのでしょうけれど……驚きました。


 ……エイブラム殿下は獣人なので、わたくしの金光彩の入った目も平気なのですよね。


 コードウェルに移り住んでからというもの、それまでの生活環境と一変しすぎて、いまだに戸惑うことがあります。

 王都にいた時と違って、この目について何か言われることはございませんし、皆さまとてもよくしてくださいますが、まさか隣国の王子殿下に「嫁いで来ていい」と言われるとは思いませんもの。驚愕しますね。


 グレアム様がわたくしの腰に回した手に少し力を込めました。


「そんなに警戒しなくても、無理やり奪い取ったりはしねえよ。さすがに俺でも、お前と本気でやりあいたくはねぇからな。本気で殺しあったら俺の方が負けるだろうし」


 エイブラム殿下のことは、なんとなくお強いのだろうなとは思っておりましたが、グレアム様の方が力は上のようです。


 ……何でしょう。わたくしのことではございませんのに、嬉しいと言いますか、誇らしいと言いますか、なんだかわたくしが褒められたみたいにむず痒くなります。不思議です。


「アレクシア、寒くないか?」

「はい。大丈夫です」


 エイデン国は、コードウェルよりもさらに北にありますから、とても雪深く寒い国です。

 メロディとマーシアの計らいで風邪を引かないようにと、ドレスの下に温かい下着を何枚も重ね着いたしましたし、上にはとても暖かいコートを羽織っておりますから寒くはございません。

 それに、鳥車の中は、グレアム様が水と火の複合魔術で温めてくださいましたから。


 暑がりなエイブラム殿下は「暑い!」と文句をおっしゃいましたが、グレアム様は聞こえないふりをして、暖炉を焚いているお部屋くらいの暖かさにしてくださったのです。


 ……そしてさらに、こうしてグレアム様がお膝の上に抱きかかえていてくださいますからね。寒いはずがありません。


「そろそろつくぞー」


 エイブラム殿下がおっしゃいましたが、窓の外を見ても雲しか見えませんでした。

 ただ、エイブラム殿下がそうおっしゃって三分としないうちに、鳥車が静かに地上に向けて滑空をはじめました。


「んっ」


 上空に駆け上がったときにも感じましたが、なんでしょうか、内臓をふわりと持ち上げられたかのような、なんだか奇妙な感覚が襲ってきます。

 慣れない感覚にぎゅうっと体を縮こませると、グレアム様がぽんぽんと背中を叩いてくださいました。


 鳥車がゆっくり地上に降りて、外側から扉があけられました。

 エイデン国に到着した模様です。


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