内乱の仲裁と異母姉の婚姻 1
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今回はちょっと短めなので、今日だけ19時にも1話更新します!
そうと決めれば吉日とばかりに、翌日、エイブラム殿下は十数人の部下と、それからグレアム様とともに王都に向かって旅立ちました。
鳥車を使うので、王都までも一日足らずで到着するそうです。鳥車、早いです。
お留守番のわたくしは、一日たった今でも茫然としておりました。
だって、あの異母姉が、獣人さんと結婚ですよ?
絶対大騒ぎをすると思うのです。
異母姉も父と同じように、獣人に偏見を持っていますから、素直に受け入れるとは思えません。
しかも、もともと婿を取って大きな公爵領を継ぐ予定だった異母姉です。その未来を摘み取られて、小さな封土を治める獣人の妻になるのです。
わたくしがまだクレヴァリー公爵家におりましたら、癇癪を起した異母姉の八つ当たりで、傷だらけになっていたかもしれません。
「大丈夫でしょうか……」
メロディとともに午後のティータイムをすごしていたわたくしは、窓の外に視線を向けます。
今日の空は、重たく曇っております。
はらはらと粉雪も舞っております。
グレアム様たちは午前中に出発なさったので、いくら空に目を凝らそうとも、その姿を見つけられるはずもありません。今頃王都の近くを飛んでいらっしゃるか、すでに到着なさっていることでしょう。
「大丈夫でしょう。いくら公爵令嬢でも王命には逆らえません」
スカーレット女王陛下も、できれば無血で内乱を終結したいとお望みだろうとグレアム様がおっしゃいました。
ですので、エイブラム殿下の提案を飲まれる形で調整が進められるだろう、と。
……獣人さんはお強いので、異母姉の癇癪も平気でしょうけど、結婚生活は順風満帆とはいかないと思います。
「用意する封土は公爵領の一部なんですよね?」
「そうなるのではないでしょうか?」
つまり、実質的に領土が少し没収されるのです。これは父も大騒ぎをしそうですね。
「封土ということは、姉と婚姻を結ぶ方が新しい領主様になるのですよね?」
「ええ。爵位も新しく作られるのではないですか? 公爵令嬢が嫁ぐので、子爵あたりは与えられると思いますよ」
「ということは、この国ではじめての獣人さんの子爵様ですね」
「ああ、確かにそうなりますね」
クウィスロフト国は長きにわたり獣人を迫害しておりましたから、獣人で爵位を持っている方はいらっしゃいません。
つまり、はじめての獣人の貴族です。
「姉のことがありますので少々不安は残りますが、獣人さんたちが暮らしやすい領地になりそうです」
獣人が治める領地。コードウェルのように、獣人たちが楽しそうに暮らせる場所になればいいなと思います。






