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[第五部完結]【書籍化】大魔術師様に嫁ぎまして~形式上の妻ですが、なぜか溺愛されています~  作者: 狭山ひびき
竜の巫女と言われても困ります!

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砂漠の国バラボア 4

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 わたくしが混乱している間に、彼らの中の魔術を扱える方が、慌ただしく空を飛んでどこかへ向かいました。

 ほかの方々は、いまだにわたくしを取り囲むようにして跪いていらっしゃいます。


 ……に、逃げていいですか?


 先ほどまでも怖かったですが、今は輪をかけて怖いです。

 急にどうしたんですかこの方々は!

 先ほどまで怖い顔をしていたのに、なんだか感激しているような顔をなさっています。中には泣き出した人もいますよ。


 ……嫌な予感がしてきましたよ。わたくし、もしかしなくても妙なことに巻き込まれていませんか?


 グレアム様、どうしましょう⁉

 わたくし一人では、この状況は難解すぎて対処法がわかりません!


 せめて言葉が通じればいいのですけど、それも絶望的ですし。

 わたくしが泣きそうになっていると、先ほどどこかへ飛んで行かれた方が、大勢の人と、何やら大きな絨毯のようなものを抱えて戻ってまいりました。


 ……人が増えてしましました‼ どういうことですか⁉ そしてその絨毯は何ですか⁉


 わたくしはほかにすがれるものがないので、背後の岩にひしっとしがみつきます。

 すると、彼らの中から一番年配そうな方が歩み出て来られて、にこにことわたくしに微笑みかけました。


「カボ、カボ」


 ……カボ? カボチャですか?


 わたくしが首をひねりますと、彼は手招くようなしぐさをしながら繰り返しました。


「カボ、カボ」

「来いってことですか?」


 男性は砂の上に広げた絨毯を指さして「カボ」と繰り返します。

 あの絨毯の上に来いってことでいいのでしょうか?

 何をされるかわかりませんのであまり行きたくありませんが、従わなかったら従わなかったで彼らが怒りだすかもしれないので、ひとまず言わるままに絨毯に近づきます。

 結界魔術を使っていますからね、多少のことでは大丈夫なはずです。


 恐る恐る絨毯に近づきます。

 男性は絨毯の上に乗って「カボ」と繰り返します。

 あそこに行けということですね。


 何故砂の上に敷いた絨毯の上に乗る必要があるのかわかりませんが、言われるままに絨毯に乗ると、男性がその上に座りました。

 座れとジェスチャーで示されたので従いますと、その直後、ふわりと絨毯が浮き上がります。


 ……じゅ、絨毯が空を飛びましたよ⁉


 これは絨毯のようで絨毯ではないのでしょうか?

 目を白黒させていると、絨毯はほかの方々を置き去りにどこかへ飛んでいきます。


「ま、待ってください‼ どこに行くんですか⁉」


 わたくしは叫びましたが、言葉が通じないので意味がありませんでした。

 空を飛ぶ絨毯は不安定で立ち上がることはできません。

 少し動くとしたに転がり落ちそうで上体を低くしつつ、にこにこ笑っている男性を見やります。


 ……なんなんですかいったい⁉


 本気で泣きそうです。

 絨毯はどこまでも果てしなく続いているような砂の上をまっすぐに進みます。

 しばらく飛んでいると、黄金色の砂しか見えなかった中に緑色の何かが見えてきました。

 近づいていくと、砂の丘と丘に埋もれるようにして、大きな湖のようなものが見えます。湖の周りには背の高い木がたくさん生えていて、石を積んで作られた四角い家のようなものがたくさん見えました。


 ……まあ。砂に囲まれた中に町があるなんて。


 絨毯が町の上空を飛びますと、地上から「ダナ、ダナ!」と声が聞こえてきました。


 ……ですから、ダナってなんですか?


 ダナがわたくしを指しているのはなんとなくわかるのですけど、わたくしはダナという名前ではありませんし。

 絨毯は町の上空を飛び、町の中で一番大きなお城のような建物に向かいました。


 ……わたくしの知るお城とは少し形が異なりますが、お城でいいのでしょうか。


 石を積み上げて作られた建物は横に長く、屋根がありません。代わりに、人が歩けるようになっている屋上のようなものがあります。

 大きな柱が何本もあって、てっぺんには球体のようなものが乗っていました。

 絨毯はこのお城のような建物の玄関前で地上に降ります。


「カボ、カボ」


 多分この「カボ」は「来い」ということだと思うので、わたくしは言われるままに男性について行きました。

 ここまでくればついて行くしかありませんもの。逃げるにしても、状況判断が先です。

 先ほどの岩の山の中もそうでしたが、このお城の中もひんやりとして涼しいです。岩で建物を作るのは、外気を遮断するためなのでしょうか。

 男性の後をついて行きますと、二階の、大きな部屋に案内されました。


「カボ」


 はい、ここに来いということですね。

 どうやら「カボ」は通じると判断されたのか、男性はさっきから「カボ」しか言いません。

 手招かれるままに室内に入ると、あ! 地図です! 地図が描かれたタペストリーが飾られています!


「あの!」


 わたくしはタペストリーに駆け寄って、クウィスロフト国のあるあたりを指さしました。


「わたくしはここから来ました。ここはどこですか?」


 男性は何度か首をひねっていましたが、何度か繰り返しているうちにわたくしがこの国の場所を訊いていると判断してくださったようです。

 クウィスロフト国のある大陸の、南の端っこを指さしました。


「バラボア」


 ……バラボア。


 ここはバラボア国、ということでいいのでしょうか。


「バラボア、ですね」

「シー」

「シー? あっているということですか? バラボア?」

「シー」


 言葉が通じない方と、多少でも意思疎通ができると嬉しいものですね。

 わたくしは地図から指を話して、床を指します。


「バラボア?」

「シー。ファラ・ドゥ・バラボア」

「ふぁ、ふぁらどぅ……?」

「ファラ」

「ファラ?」


 男性は困った顔をして、それから頭に巻いていたターバンを外すと、くるくると王冠のような形のものを作って頭にかぶりなおします。


「ファーラ」

「ふぁーら? ……あ、王様ってことですか?」


 男性はターバンで作った王冠をかぶったまま、ソファに座ります。

 王様が、座る……?

 つまり、王様がいる場所っことですか?


「わかりました、ここは王都なんですね」


 ファーラが王様で、ファラが王都。……多分これでいいと思います。

 わたくしが頷きますと、男性はホッとした顔をして、ターバンをもとのように巻きなおしました。

 そして、ひらひらと手を振って部屋を出ていこうとします。


 ……え⁉ ちょ、ちょっと待ってください! わたくしをおいて行っちゃうんですか?


 目の前の男性が誰かはわかりませんが、悪い方ではないようです。ここに一人おいて行かれるのは不安なのでできれば一緒にいていただきたいのですが……!

 けれども、わたくしの願いも虚しく、男性はそそくさと部屋を出て行ってしまいました。


「どうしましょう……」


 ひとまず、ここがバラボア国の王都だとわかっただけでもよしとすべきでしょうか。

 わたくしは、窓ガラスのはめ込まれていない窓の外を見やって嘆息しました。






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