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[第五部完結]【書籍化】大魔術師様に嫁ぎまして~形式上の妻ですが、なぜか溺愛されています~  作者: 狭山ひびき
竜の巫女と言われても困ります!

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砂漠の国バラボア 3

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 入口と、わたくしを取り囲むようにずらりと並んでいる方は、頭にはターバンを巻き、白い布を体に巻き付けてベルトを止めただけの不思議な服装に、編み上げのサンダルのようなものを履いていらっしゃいました。

 肌は浅黒く、髪は黒い方が多いです。

 そして一様に、わたくしを見る目は厳しかったです。


 ……やっぱりこの中には入ったらだめだったのかもしれません! どうしましょう……!


 もしかしてわたくし、泥棒さんか何かだと間違われたのかもしれません。

 とにかく誤解を解かなくては。中に入ったのはええっと……そう! 不可抗力というやつなのです。


「あの、その……この中には入ったらダメだったのでしょうか? 申し訳ありません。そうとは知らず……ええっと、急にここに来たものですから、何か情報が欲しくて……」


 わたくしを取り囲んでいる方の中には、三日月のような形をした剣を握り締めている方もいらっしゃいます。

 怖いので、わたくしは自分の周りに展開している結界を強化しつつ、ご理解いただこうと必死に言葉を重ねたのですけど……わたくしは、重要な問題に気づいていませんでした。


「バーダバーダ」

「ば、ばーだばーだ?」


 バーダバーダとはこの岩の山のことを言うのでしょうかと首を傾げた瞬間、彼らが口々にしゃべりはじめました。


 ……どうしましょう。何を言っているのかわかりません。


 言葉が通じないのです。

 エイデン国も、ホークヤード国も、クウィスロフト国と同じ言葉を話します。あのあたり一帯の共通語は一緒なのです。

 しかし、目の前の方々は、クウィスロフト国周辺で使われている言語とは異なる言語を使われるようでした。

 言葉が通じない可能性を考えていなかったわたくしは青ざめます。

 そして、「バーダバーダ」とはわたくしのことを言っているようです。どういう意味なのかはわかりませんが、表情を見るに、いい意味の言葉ではなさそうでした。


 ここは空を飛んで逃げるべきでしょうか。

 三日月の形の剣を手に、一人が一歩前に出ます。

 わたくしの背に冷や汗が伝いました。


 ……わたくし、こんなところで死にたくありません! グレアム様と離れたまま死ぬのは嫌です! それにそれに、グレアム様ともっと一緒にいたいのです!


 気配を探るに、この方々の中で魔術が使えそうなのは三人でした。

 魔力量はわたくしの方が多いですが、魔力量だけで魔術の修練度は測れません。

 ドウェインさんやジョエル君がいい例です。

 あのお二人はグレアム様より魔力量は少ないですが、グレアム様が驚くような洗練された魔術を使われるのですよ。


 ……わたくしが逃亡して逃げられる確率はどのくらいでしょうか。


 空を飛ぶことは可能ですが、わたくしはそれほど早く飛ぶことができません。

 彼らが空を飛べるなら、あっという間に捕まってしまうかもしれません。


 ……ならば隙をつくしかありません。ひとまず、結界をしっかりと張って、切りかかって来られても大丈夫なようにしておきましょう。結界はいっぱい練習したので得意ですからね。


 あとわたくしにできそうなことは、グレアム様から教わった、護身術というには危険すぎる魔術でしょうか。ですが、今がどういう状況ははっきりしない状態で、目の前の方々を問答無用で攻撃するのはまずいと思います。

 わたくしは、無意識に首から下げている鍵を握り締めます。

 すると、三日月の形の剣を持っている男性の一人が、目を大きく見開きました。


「ダナ」


 男性がそう発した瞬間、わたくしを取り囲んでいる方々が大騒ぎをはじめました。


 ……ダナ?


 ダナ、という言葉もわたくしを指しているようです。バーダバーダとダナ、何か関係があるのでしょうか。

 首をひねっていると、わたくしの目の前で次々に男性たちが跪きはじめました。


 ……え?


 何が起こっているのでしょう。

 パチパチと目をしばたたくわたくしの前で、彼らは大声で言いました。


「ダナ! ダナ!」

「グーヴェ・ダナ!」

「オイ・ルルシェーラ・ダーナ!」


 ……誰か通訳してください‼





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