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[第五部完結]【書籍化】大魔術師様に嫁ぎまして~形式上の妻ですが、なぜか溺愛されています~  作者: 狭山ひびき
竜の巫女と言われても困ります!

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歓迎パーティーは切ないです 2

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 ……メロディ。予想が外れましたよ。


 夜、メロディによって頭のてっぺんから足の先まで艶々ピカピカに整えられていざパーティーへと出陣したわたくしは、王族の席にすわっていらっしゃったルイーズ殿下を見て思わずびくっとなりました。


 どこからどう見てもご機嫌斜めです。

 椅子のひじ掛けに頬杖をついて、先ほどから「はぁ」とため息をつかれています。目は三角です。眉間にも深いしわが刻まれています。

 ルイーズ殿下は、赤茶色の髪に緑色の目の、容姿端麗な方でございます。ドレスもとっても豪華できらびやかなので、その……不機嫌な顔をされていると、とんでもなく迫力があるのです。


 思わず、グレアム様の腕をつかむ手に力が入ってしまいます。

 王妃殿下と、それから王太子のドニ殿下とは、昨日の晩餐で顔を合わせておりますが、アンリ殿下とルイーズ殿下とはご挨拶しておりませんので、まずは挨拶をせねばなりません。

 本来はわたくしたちの方から挨拶すべきなのでしょうけど、今日のパーティーは、ホークヤード国を救った(ことになっている)わたくしたちのために開かれたパーティーですので勝手が変わります。

 グレアム様とジョエル君、そしてわたくしたちは、挨拶を受ける側になるのです。


 わたくしたちに用意されている席は、国王夫妻の隣でございます。

 国王夫妻の席を挟んで左側がグレアム様とわたくし、右側がジョエル君です。

 ジョエル君はまだいらしていませんね。

 国王陛下と王妃様もいらっしゃっていませんので、ご一緒に来られるのかもしれません。


 本来であれば、十一歳のジョエル君は成人しておりませんので、夜のパーティーには出席なさらないのですけど、今回は特別ですもの。保護者のかわりを国王夫妻が務められるのでしょう。

 まあ、ジョエル君は十一歳とは思えないほどにしっかりしていますから、保護者役は必要ないかもしれませんけどね。


 席に着きますと、さっそくお隣に座られていたドニ殿下がにこやかに声をかけてくださいます。

 そうしていますと、アンリ殿下が立ち上がられてご挨拶に来てくださいました。

 アンリ殿下とのご挨拶が住むと、ルイーズ殿下がいらっしゃいます。


「……ルイーズ」


 不機嫌顔のままのルイーズ殿下に、ドニ殿下が眉を顰めました。


 ……ど、どうぞお構いなく! ルイーズ殿下の心中はわかりますから!


 ルイーズ殿下の元婚約者様のお姿はまだいらっしゃらないようですが、来るとわかっていて微笑めと言うのは酷というものです。

 ルイーズ殿下と元婚約者のバンジャマン様とのことを知らないグレアム様は怪訝そうですが、グレアム様も他国の王族の態度を咎めるようなことはなさいませんし。

 ルイーズ殿下がドニ殿下を一瞥してから、口端だけ持ち上げます。目が笑っていないので余計怖いですが、もちろんそんなことは申せません。


「ルイーズですわ。グレアム殿下には昔ご挨拶させていただいたことがございますが、奥様ははじめてですわね。この度は我が国のためにご尽力下さりありがとうございました」


 表情は怖いですが声は優しかったです。

 グレアム様とルイーズ様は、十年ほど前にお会いになったことがあるのだとか。十年前では、グレアム様は十六歳で成人なさっていらっしゃったでしょうが、ルイーズ様はまだ十歳のはずですのに、記憶に残っているのがすごいですね。


 ホークヤード国とクウィスロフト国は、国同士仲がいいですので、お互いの王族の親交も厚いそうですが、グレアム様は基本的に外交をなさいませんから。十年前の外交は、魔術関連のものだったので特別だったそうです。


 ルイーズ様は挨拶をすまされると、そそくさと席に戻りました。

 ちょうど、バンジャマン様がいらっしゃったのです。

 バンジャマン様のお隣にはおっとりとした雰囲気の女性の姿もあるので、その方が例のバンジャマン様が心を移されたという方でしょうか。

 ルイーズ様はバンジャマン様を視界に入れたくないようで、席についてぷいっとそっぽを向きました。

 バンジャマン様と婚約者の方が挨拶に来られて、ルイーズ様とは反対側のあたりにあるお席に着きます。


 ……席が離れていても、これではルイーズ様がつらいですね……。


 ドニ殿下が話し相手を務めてくださって、グレアム様と魔術具のことで盛り上がられています。ドニ殿下も魔力が多い方らしく、魔術師としての強い素質をお持ちです。率先して国に魔術具を取り入れようとされていて、そのあたりがグレアム様と大変お話が合うのです。


 パーティーのはじまる時間の直前になって、国王夫妻とジョエル君がやってきました。

 ジョエル君、今日はとってもお可愛らしいですね!

 どこからどう見ても王子様の出で立ちですよ。……本人はちょっと嫌そうな顔をしているので、おそらく国王陛下に着せられたのでしょうが。


 パーティーの最初に、国王陛下がハイリンヒ山の噴火について触れられ、ジョエル君とグレアム様を国を救った英雄として紹介なさいました。


 ……お二人とも、どこか居心地悪そうですが、真実は秘めておかなくてはなりませんからね。


 パーティーの間、わたくしたちは座っていればいいとのことでした。

 もちろん、ダンスがしたければダンスをしに行っても構わないそうですが、わたくし、ダンスが得意ではありませんから座っていたほうが気が楽です。

 バンジャマン様と婚約者様は、陛下のご挨拶が終わるとそそくさとダンスホールへ向かいました。

 ちらりとルイーズ様を見ますと、ワルツを踊られている二人へ睨みつけるような視線を向けていらっしゃいます。


 ……さすがにはじまってすぐに中座できませんからね。お可哀想です……。


 わたくしは楽しそうに笑うバンジャマン様と婚約者様を見て、ルイーズ様がいらっしゃるのに、どうして平然としていられるのかしらと少々不思議に思いました。





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