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[第五部完結]【書籍化】大魔術師様に嫁ぎまして~形式上の妻ですが、なぜか溺愛されています~  作者: 狭山ひびき
大魔術師様の妻は譲りません!

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女王との勝負 2

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 叫んだ後で、わたくしは「しまった!」と思いましたが後の祭りです。

 女性にのしかかられていたグレアム様が目を見開いて、窓の方を見ました。


「……アレクシア?」


 見れば、グレアム様の両腕が何やら縄のようなもので括り付けられています。魔術の気配も感じますよ。この方、グレアム様に魔術をかけて体の自由を奪ったのですね! 許せません‼


「ちょっと姫……」

「ドウェインさん、魔術を解いてください‼」

「えー……」


 ドウェインさんのあきれた声がしますが、もう今更です。

 それに、今のグレアム様は魔力を封じられているので、姿を消しているわたくしたちを見ることはできません。


 ドウェインさんがわたくしの後ろから部屋に入って、仕方なさそうに魔術を解いてくださいます。

 わたくしはベッドに駆け寄って、グレアム様にのしかかっている女性をキッと睨みつけました。

 わたくしが睨んでも迫力はないかもしれませんが、わたくし、妻ですから‼ 夫にひどいことをする女性は許せません‼


「わたくしの夫に何をするのですか‼ えっとえっと……ドウェインさん!」

「こういう時は『泥棒猫』というのがセオリーですよ姫」

「そう、この、泥棒猫さん‼」

「さん、はいりませんでしたねー姫」


 うぅ、全然格好がつきません。でもいいのです。わたくしが格好つくつかないは関係ありません。グレアム様が無事ならいいのです。


「メロディが言った通りでした! ええっと……そう! 一服盛ったのですね! その上縛り上げて魔術で動けなくするなんてなんてひどいことを……!」

「姫、見る限り薬は盛られていないと思いますよー」

「そうなんですか? でも縛り上げて魔術で動けなくしているのは真実です‼」


 グレアム様をかばうように女性との間に割って入って抱き着くと、驚いていたピンク色の髪をした女性はハッと我に返りました。


「く、曲者じゃ‼」


 その声に反応して、扉の外にいた見張りの兵士たちが部屋の中に押し入ってきました。

 でも、わたくし、このくらいなら大丈夫ですよ! 風の魔術で吹き飛ばしてしまいます!


「ドウェインさん、あとは任せました! わたくし、グレアム様を縛っている縄をどうにかします!」

「仕方ありませんね、私のサンゴキノコのためです」


 サンゴキノコのためだろうとなんだろうとこの際どうだっていいです。

 魔力量を見るに、女性も兵士たちもドウェインさんにはかないません。加えて高度な魔術も難なく操るドウェインさんですから、絶対に負けませんよ! 珍しい毒キノコがかかったドウェインさんは無敵です!


 わたくしはその隙に、グレアム様の手首を縛っている縄を風の魔術で慎重に切っていきます。


「アレクシア、その……」


 グレアム様の顔が少し赤いです。縛り上げられてきっと苦しいのですね。お可哀想に。


「グレアム様、すぐに助けて差し上げますからね!」

「あ、ああ……」


 縄を切ってグレアム様を解放した後で、グレアム様にかけられている魔術を解きます。ただの拘束魔術でしたから、このくらいならわたくしでも解けますからね!

 縄と拘束魔術から解放されて動けるようになると、グレアム様がベッドに上体を起こしました。


「と、とんだところを見られたな……」

「はい、危機一髪でした!」

「いや、そうじゃなくて……」


 グレアム様、まだお顔が赤いです。


 ……は! まさかお熱があるのでしょうか?


 わたくしはあわててグレアム様の額に手を伸ばしました。


「熱くはありませんが、体調が悪いのですか? どうしましょう⁉」

「いや、大丈夫だ……」


 グレアム様が赤い顔のまま顔をそむけます。

 首を傾げていると、ドウェインさんのどうでもよさそうな声がしました。


「姫、今はそっとしてあげたほうがいいですよ。多分恥ずかしいでしょうから。男の沽券というやつです」


 さきほどドウェインさんが言っていた男の沽券ですか。よくわかりませんが、そういうことなら黙っておいた方がいいですね。

 グレアム様が小声で「ドウェイン、うるさい」と言っていますし、やはりそっとしておいてほしいことなのでしょう。


 ……って、ドウェインさん……もう終わっちゃってました。


 振り返ると、ドウェインさんは風の魔術で作った檻のようなものに全員閉じ込めてしまっていました。声も聞こえてこないので、魔術で声も封じ込めているのでしょう。すごい早業です。


「私、この国の女王に用があるんですけど、この方であっていますか?」


 ドウェインさんが風の檻に閉じ込められたピンクの髪の方を指さして問います。

 ピンクの髪の方は引きつった顔をして小さく頷きました。


 するとドウェインさんはにっこり笑って、案の定と言いますか、空気を読まないと言いますか、訊ねました。


「ああよかったです。サンゴキノコが欲しいのですけど、ございますか?」


 ……女王陛下が、奇妙なものを見る顔になってしまいましたよドウェインさん……。






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