8.ついに朝、青空市の下準備
誰もツッコミませんが、楓はただのカラスではありません。実は魔物とカラスのハーフという裏設定。極限の魔女ゲロニカの相棒なだけあって、カラス顔負け(?)の超強力な魔法を巧みに使いこなします。
翌朝、宿屋の1階に集まり、朝食を食べる一同。キース、ヒース、楓とカミラである。が、なんと、吸血鬼たちもいる。
「ちょっと、店長たちは?!」
「何でここに?!!」
「カァァ!」 ポワン!
キースとヒースが少し引き気味に答えると、楓により目を紫に変えた2人はしれっと答えた。
「大丈夫、我らの眷属を置いてきた。以前購入した、携帯・防犯転移魔法陣(カミラお手製)もそれぞれに渡してあるので2人か眷属たちに攻撃がなされた瞬間、迎撃・防御魔法発動と同時にこちらまで転移する。」
ヒースとカミラが、なら良いか。という空気を醸す中、キースが驚く。
「エッ?!あれを実際に買ったのって貴方達だったの??完全カミラのおふざけというか、主にヒース誘拐直後の憂さ晴らしに作ったやつで高額な上に過剰品質だから、あまり人気なくて今でも在庫余ってる代物なんだけど」
「在庫があるならまだ買うが?」
((目が本気すぎてコワイ))
「吸血鬼にも色々あるのだよ」
「自衛はやってもやりすぎる、と言う事がない。」
「ま…まぁ、2人の守りはひとまず大丈夫なんだな。」
「「満月の夜はまだ先だから大丈夫。」」
そう言うと、2人が椅子に座る。
ヨイはキースの向かいに、アサメがヒースの向かいに座った。ホットトマトとコーヒーを頼んだ2人は、語り始めた。
「朝から何だが、実は速報だ。パウロ氏が人ではない、という結果が出た。」
「「あちゃーーー!!!」」
キースもヒースも驚きつつその場に突っ伏した。
ちなみに朝ご飯は完食済かつ片付け済みである。そばにあったコーヒーが少し揺れた。
「それで?」
カミラは食後の紅茶をすすりながら聞いた。
「店長・秘書の考察によると、パウロ氏は御年50歳の初老で、ここ数年の事件を鑑みるにおそらく犯人ではない、との事だ。彼が黒なら、3年前と言わず、もっと前に何かあったはずだとの事。」
おもむろに、ヨイがキースの耳を触り始めた。キースは少し動いたがそれを許す。
「ちなみに彼は行商人で村不在の事もあるが、ここ数年の事件当日前後にはこの村に居ない。半年砂漠方面であれこれ売り買いしてて犯行はほぼ不可能らしい。」
「実際にパウロから砂漠で仕入れた物を店長が買っているし、販路のツテで砂漠の友人にも問い合わせたが事件当日に砂漠の国にてパウロを目撃しているとか」
アサメもヒースの髪を撫で始めたが、ヒースも抵抗はしなかった。耳が動いている。
「なら、やはり通常通り、協力依頼をしましょう。何かの際にはこちらで止める事も視野に、行動を把握できた方が色々と都合が良いわ」
「「了解した」」
話がまとまったところでホットトマトとコーヒーが来た。全員で飲み物を飲みながら、しばしボーッとする。
一息ついてから、ヨイとアサメに店長達への伝言を頼み、一行は自室にて青空市の準備にはいった。
「さて!梱包作業をするわよ〜!!
…あ、貴方達も自分で何か出品したいかしら?それはそれで面白そうね」
「え!良いの?!」
「やりたい!」
「カァァー!(ぱぁぁぁ)」
そんなこんなで、数の多いカミラの商品を梱包しつつ、各自準備を進めた。もちろん、カミラの真似をして、各自買い込んだ敷物を広場に敷く予定なのか全員が敷物も準備していた。
「さて!ここで大事な重要事項の共有です。皆、心して聞くように!」
「「はい、カミラ様」」
「カァ!」
カミラが、全員の注目が集まるように声がけして、赤いミニカーペット・青いミニカーペットに置いたアイテムを見せる。
「いいわね?今回のターゲットは人狼か吸血鬼。
単独か複数かは不明だけど、赤い方は人狼が好む物。青い方は吸血鬼が惹かれる物を置いたわ。
赤い方は、羊、ヤギ、シカ、イノシシクマ、シャケの缶詰セット!グルメにはたまらない逸品ね!あと、変わり種で満月が映るライトや月モチーフの小物、暖房グッズと帽子や被り物一式かしら。
青い方、吸血鬼にはみずみずしくて生命力溢れる薔薇各種!少しマジカルなロイヤルローズも取り揃えてみたわ。ワイン、トマトジュース、光り物、棺桶モチーフのグッズと黒い遮光100%のカーテン、サングラス、日傘と言った所かしら。
村の一定の場所に、それぞれが嫌うとされるアイテムも隠してきたから、そっちも様子を見るわ。そのエリアに来る人は自然除外出来るかも!
この色付きカーペットの商品を手に取った人には要注意よ!可能な限り、記憶しておいてね。一応アイテムの方にも追跡マーク魔法つけたけど」
「「「ハイ(カァ)!!!」」」
全員良い返事である。
こうして、青空市1日目、村生活2日目が始まった。
楓が毎回吸血鬼コンビに使っている魔法は鎮静化の魔法です。興奮・高揚した気持ちを抑え、頭をスッキリ冴え渡らせるのに向いている魔法。
ちなみに、カッカして怒りまくっている人にも有効の割とメジャーな魔法ですが、楓はその効果を独自に強化しており、効き目は倍になっているようです。