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3.優しい恵みの雨と新作雨具

新しいカミラのお友達の登場です。新しいアイテムをゲットし、次へ進みます。

「「お邪魔しまーす」」

一行が時雨に招かれて部屋に入ると、中は思った以上に広く奥行きがある。


「嘘でしょ、こんなに広かった?」

「いや、多分空間魔法だ」

「カァァァ!(超かっこいい)」


 外観は池のそばのコテージ、といった雰囲気だったのだが時雨の家の中はロフトタイプになっており、部屋の中央には大きくて縦に長い暖炉がある。大きな炎がパチパチと爆ぜており、存在感がすごい。この暖炉のおかげで室内は暖かくカラリとしているのだろう。快適である。2階のロフトの方は本棚がちらりと見えている。おそらくプライベートゾーンだ。ちなみに屋根裏スペースもありそうな雰囲気である。


「久しぶりだけど、相変わらず素敵なお部屋ね。元気にしてたかしら、時雨」

「えぇ、変わりなく絶好調よ」

「それは良かったわ」

「さぁどうぞ、ソファに座って」


 時雨に勧められたソファは暖炉の前に置いてあり、3人掛けで全員がゆったりと座れるサイズだった。そこにソファテーブルがあり、時雨がコーヒーとお菓子も出してくれた。なんと出されたおやつはドーナツである。キースとヒースは大喜びで内心ガッツポーズした。

 ちなみにこの部屋の片隅には何故か猫足のバスタブが置いてあるのが非常に気になる。また、ソファ横のコーヒーテーブルには大きな蓮の鉢が置いてあり、そちらも気になるといえば気になる。ちょいちょい気にはなるが、全体的にはくつろげる落ち着いた雰囲気である。終始落ち着いた時雨の人柄が表れている気がしなくもない。


 暖炉前には3人掛けソファの他にロッキングチェア、1人掛けソファも置いてあり、時雨は1人掛けソファの方に座る。カミラも案内されたソファに座る。

 すると、肩に乗っていたアマガエルのケロが例の鉢の蓮の上に乗った。そして、時雨の後ろをついてきたケルピーが時雨にすりすりした後、例のバスタブの中に収まり、じっとこちらを眺めている。

((ナルホドね!君たちの定位置ね!!))

ヒースとキースは密かに納得した。


 ソファを勧められたが、序盤に少し雨に降られて雫がついていた為、キースとヒースは狼の形態を取り暖炉前で毛皮を乾かす事になった。楓も少し濡れた羽根を一緒に乾かしている。その間、カミラはソファに座って時雨と談笑した。


「久々に里帰りしようと思って。」

「あら、カミラは確かウルラ山林の出身よね?」

「そうなの。正確にはウルラ山の麓のアルア森林群かしら。例年通り、ウルフフ村に立ち寄って何日か泊まりつつ、のんびり里帰りしようと思ってるんだけど」

「そうね、それが良いわ」

雨音と暖炉の音をBGMに、ゆったり話す2人はコーヒーを飲みながら一息ついた。


「今年は水質検査、終わったのかしら?」

「えぇ、もう完了済み。ただ、私がここにいると例の雨が止まないから予想の範囲内の結果だったわ」

「なら、ここの生態系はきっと問題無しね」

「ある意味ね。恵みの雨なんてよく言うわ」

 カミラはため息をつく時雨を見て、少し苦笑した。彼女は雨に愛されており、彼女の頭上には必ず雨雲がある。つまり彼女の周辺は常に雨模様なのである。そのおかげか彼女は水の扱いに長けており、雨に対する理解も深い。もちろん、雨の中での暮らしについても詳しかった。

「あ!雨具の魔道具の方の売れ行きはいかがかしら?新作があれば是非見てみたいわ」

「それなんだけど、カミラ。少し時間もらえるかしら?

 この雨薬草図鑑貸すから少し待ってて」

「えぇ、急がないから良いわよ。」

「ケロ、おもてなしは任せたわ」

「ケロロ」


 時雨はケルピーを連れて、2階の方に消えていった。カミラは図鑑をめくりながら、コーヒーとドーナツを楽しむ。すると、ひょこっとキースとヒースと楓が横から覗き込んでくる。カミラはキョトンとした後、ひらめく。

「ふふふ、ちょっと待ってね」

 愛用の長杖を一振りすると、大きな水鏡を目の前に出現させた。そこに図鑑の内容を投影する。そして、図鑑に載っている薬草の実物まで隣に出し始める。どうやら、カミラによる雨薬草のミニ講義の始まりである。コーヒー・ドーナツ付きなのが豪華だ。

「ウォン!」

「ウォフ!!」

「ケロロロロ」

「カー!!!」

キースとヒースが喜んで目をキラキラさせる。そして、次の瞬間には人型に戻った。楓はカミラの肩に乗り、特等席を確保する。ケロはペタペタと歩いて図鑑のそばのポジションを確保した。

「じゃあ、まずこれね!これは…」


 じっくり図鑑を読んで楽しく学ぶ事、しばらく。ケロがカミラの持っていなかった薬草でこのあたりに生えているものを提供してくれたり、逆にカミラが手持ちの薬草を分けたりしつつ、楽しく過ごしていたが時雨がケルピーと戻ってきた。いつもの商品を収めている木のケースの他に何か持っている。


「待たせたわ、これを貴方達に」

時雨はキースとヒース、楓の前にそれぞれ何かを差し出した。

「エッ!ありがとうございます!!!」

「…嬉しいです。良いんですか?」

「カッ、カァァァ!!!」

 三者三様の反応だが、全員とても喜んでいた。なんと、時雨は3人専用の雨具をくれた。ヒース・キースにはフード付きのレザー雨除けケープ、楓には足で持てるタイプの傘と超軽量の雨除けケープである。そして、3人お揃いの魔法石ブレスレットもあった。雨除け魔法のかかったものだ。


「良いインスピレーションをもらったわ」

「まぁ!良いのかしら、ありがとう!

 おいくら?言い値を払うわ」

「いや、対価はいらないから、使用感の感想をお願い。モニターだと思って。」

「「ハーイ!お任せください!!」」

「魔法石の方はケロとケルにお礼を言ってね。2人の共同制作なの。」

「「ありがとう、ケロさん、ケルさん」」

「ケロロ!」

「…ブルルルン」


 カミラ達はそれぞれほくほくした気持ちでいたが、時雨は友達になったら必ずこういった物を渡しているらしい。というのも、彼女が雨に愛されている関係で、彼女と一緒にいる間は雨とも上手く付き合わなければならない為だ。中々に苦労しているようだが、時雨は繊細な見た目によらず新進気鋭の優秀な雨具作家なので商魂逞しいとも言える。流石、魔女である。


「すっかりのんびりしちゃったけど、お邪魔しました。そろそろお暇するわね。今日は本当にありがとう」

「こちらこそ、ありがとう。貴方に会えて楽しかったわ。また近くに来たら立ち寄って。通信機で連絡するわね。」

「「お邪魔しました。手厚いもてなしをありがとうございました。」」

皆んなで楽しく話していたが気がつけば夕方近くなり、さすがに夕飯の準備もあるだろうとカミラ達は出発する事にした。


「時雨が元気そうで良かったわ!」

「「良い人たちだったね。」」

「カァァ!」

 ばっちり雨具を装備したお供を連れて、カミラが先を目指す。カミラはカミラの持っているカバンから、ガラスケースに入ったゲロニカの薔薇のレプリカを出した。

「生憎の雨だけど、貴方にとっても恵みの雨かしら?皆んなと一緒だと雨でも楽しいわね。」

薔薇が言葉に反応するようにほのかに優しく光った。瓶から取り出すと、雨粒に濡れた薔薇が心無しか艶めいた。今日の雨は量が多いものの小粒でまさしく霧雨である。優しい恵みの雨だった。


 実はハロウィンのお茶会のパーティの後、カミラはゲロニカの薔薇の花びらを一枚使って、ゲロニカの薔薇の複製を作った。

「貴方はとても楽しくて面白いものが好きだから、私と一緒にまだまだいろんな物を見ましょう。私が色んなところに連れて行くわ」

 カミラはそんな想いで、安全と言われた花びらの部分を使い薔薇の花びらをミニサイズで再現し茎部分は特殊金属で再現した。花びら一枚だけでもかなりの魔力量で、話しかけると反応するかのようにほのかな菫色の光を散らす。茎部分は花をしっかり支えて、守るような保護魔法がかけてある。万が一にも花部分に衝撃が加わっても跳ね返す仕様だ。

 頑丈な薔薇のオブジェはぱっと見、鑑賞用の芸術品としての完成度が高く、とても美しい。だが、調べた所によると防魔・耐魔・呪い除けの効力がずば抜けて高く、いわゆる御守りとしての能力がとても高いようだ。普段は薔薇本体もレプリカも楓に管理させているが、出先ではレプリカの方をカミラが管理する事になった。楓はどちらかと言うとキースにべったりで基本家にいることが多いから比較的外出の多いカミラが持ち歩く担当となったのである。


 しとしと降る霧雨の中、カミラは歩きながら薔薇に話しかける。

「ゲロニカは薔薇に愛されたけど、時雨は雨に愛されている。薔薇咲き病と同じ奇病の泡沫(うたかた)病にならないか心配だったけど、元気そうで本当に良かったわ。一応梅鳴にも伝えておこうかしら」

それがよい、と言うように薔薇が菫色の光を散らした。


 一行が歩いていると、雨雲を抜けて夕暮れに照らされた森林が広がった。通常ルートに戻ってきたようである。このまま山を越えて夜の間に村に着きたい所ではあるが例年のカミラの記憶によると確かウルフフ村は人間の村の為、夜の訪問は好ましくない。夜間は野営してから昼間にたどり着くように向かう事にする。となれば、そこまで急ぐ必要がない為、日が落ち切る前に今夜の寝床を決める流れとなった。のだが、そこでカミラが一言つぶやく。


「やっぱり快適安心なのはツリーハウスよね」

「「え?カミラさん??」」

おもむろにカミラが目の前の大木に向かって長杖を振ると、周辺のツタがいつぞやの時のように伸び始めて、ヒースとキースはカミラにつかまれた。

「「ぴ!((またかよ!!!))」」

ちなみに楓はカミラの肩にばっちり乗っていた。一気に上昇し、背の高い大木にはツタが巻き付いた後、木の幹部分にそこそこ大きいログハウスが出現した。カミラは安定した足取りで着地する。

「ちょちょいのちょいっと」

「「一言言ってからにして!」」

一悶着あったが、カミラのおかげで今夜はツリーハウスにてお泊まりとなった。

村に着きたいのはやまやまなのですが、今夜はツリーハウスにて一休みです。魔法が使えると色々便利!キラキラマジカルファンタジーが大好きです。

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