2.早速の寄り道と霧雨の魔女
クリスマスに向けて、と思っていましたがウッカリ年明けになってしまったー!今年もマイペースにやっていきます。
どうぞ、よろしくお願いします。
さて、今回は3人と1匹の4人旅である。
カミラ宅は玄関を出ると四方を深い森に囲まれる、一般的には中々に険しいとされるエリアだった。が、カミラは魔女でヒースもキースも人狼。楓はカラスである。当然、飛んでの移動となった。魔女は箒で、烏は己の翼で。そして、人狼はその自慢の脚力で一気に森を駆け抜けた。
「まぁ、自分のお庭だしねぇ。うふふ」
「「いつもパトロールしてるし」」
「カァァ!」
この調子である。
普通の人族からしたら大人も真っ青ものの不気味な呪われた森は、住んでる当人達的にはちょちょいのちょいだった。アッサリ馴染みの森を抜けて、やっと旅が始まる。今回は山がある方へと向かう一向。ちなみに途中で泊まろうとしている村は山を越えた先の谷の手前にある。
「さて、ついにお隣の山ね!
お友達に会えるかしら。」
「え、何?カミラ、隣の山の主人と友達?」
「山の主では無いけれど、そこに住んでいるお友達はいるわ。たまに留守にしてるから、いつも会えるわけではないんだけど」
「どんな人なの?聞かせて欲しいな」
「そうねぇ。霧雨の魔女って呼ばれてる子で、ちょっとふわふわした印象かしら。」
カミラの頭の中に、防水加工の深藍色のケープと水色のワンピースを着た小柄な女の子のイメージが浮かぶ。ボブヘアに帽子を被り、傘を常に手にしている。相棒はアマガエルとケルピーである。物静かで存在感は薄いが、水の扱いはずば抜けている。
カミラが空を見上げると、少し先に雨雲があり、山の途中にかかっていた。おそらく、進めば雨が降ってくるのだろう。楓は烏なので羽根を濡らせない。飛べなくなってしまっても肩に乗ればいいのだが。魔法で雨除けする事も考えたが、ひとまず、友達には会えそうなので寄り道する事にする。
「ちょっとこっちに寄っていきましょう」
「いいけど。会うの?」
「えぇ、きっとこっちにいるわ」
「楓はこっち来い。入れてやる」
「クルルルァァ」
楓は即キースの首元に入り込み、モフモフで暖かい毛並みに満足げだった。キースは人狼スタイルで二足歩行の服を着た狼になっている。カミラと似た唾の広い防水加工済みのとんがり棒をかぶっているので、顔の近くは影になり雨に濡れない。ヒースも同様である。しかし先に進むにつれ雨がひどくなってきたので、カミラは全員に雨除けの魔法を使った。
雨雲と雨を頼りに山の中を歩いていると、そのうち、開けた場所に出た。中央に家がある。家の真上は雨雲の層が厚く、家の周囲は池になっており中心の家に行けるよう橋がかかっている。ひとまず側にかかっている渡り橋を使い、お家の前まで行くとベルを鳴らした。
ジリリリリ…
(…パタパタパタ!)
「良かった、ご在宅みたい!時雨〜!!」
「ハーイ」
ガチャ
「あら?カミラ、いらっしゃい〜」
「久しぶりね、急にごめん」
「いいよ。…上がってく?」
「ありがと〜!あ、この2人は私の使い魔」
「初めまして、ヒースと申します」
「初めまして、キースと申します」
「カァァ」
「友達の白カラス、楓です。」
「あら、どうもご丁寧に。
霧雨の魔女、時雨です。こちらはケロとケル」
((エッ、使い魔の名前、そのまますぎんー!!?))
ヒースとキースはツッコミをこらえた。
時雨は、濃紺の青い目に濃紫色のボブヘアな女の子だった。小柄だが、愛想はあるようで無い。表情筋があまり動かないからだろうか。その割にはスムーズに招き入れてくれた。その肩には不思議な色合いのアマガエルと背中越しにイケメンのケルピーが見えた。
「時雨はね、雨に愛されているの」
「「だよねー!」」
「どうぞ、ソファに座って。」
サァァァー、と降りしきる雨の中、パタンと思いの外優しい音でドアが閉まった。部屋の中は暖かく、カラリとした空気でどこか優しい雰囲気を感じる。会ったばかりの霧雨の魔女は一言で言うなら意外性の塊だった。
果たして村に辿り着くのはあとどのぐらいなのだろうか。作者の思惑をよそに早速寄り道するカミラさん一行次第です。
そうは言っても、だって降ってきたから仕方ない。
カミラさんと可愛い時雨さんのツーショットが頭に浮かんでしまったからには描かないわけにいかぬ。