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10.お疲れ様会という名のパジャマパーティ

思ったより長くなってしまいました。

賑やかですが、もし良ければお付き合いください。

 仕切り直して午後17時。お風呂を浴びたり荷物整理したり身支度をしているうちに、再度ヨイとアサメがカミラ達の部屋に来る。夜遅くまでいるつもりなのか、なぜか窓から入ってきた2人は完全に寝巻きであった。

「「いや、まだ17時ー!!!!」」

双子が突っ込むがどこ吹く風。

「打ち上げだろう?我輩、パジャマパーティはしたことなくてな。」

「私もこのメンツでやりたいと思ってな」

「「え?何この人たち、今夜ここに泊まる気?!」」

「あらぁ、良いわねぇ!パジャマパーティ、面白そうじゃない!!」

 カミラはマイペースに言うや否や杖を一振り、問答無用で3人パジャマになる魔法をかけた。楓には眠る時に被る帽子とミニサイズの枕まで手渡している。

「カァァ!クルル」

 部屋にある机と椅子を寄せて、さらに椅子を2つ魔法で追加する。

ボワンッ!ゴトゴト!

「「ありがとう、カミラ嬢」」

「いいのよ、どうぞかけて?」

「「もー!!!」」

 ヨイとアサメをもてなし、ガンガンパーティの段取りを進めるカミラにキースもヒースも何も言えない。 ヨイとアサメが外から買ってきた大量のご飯を机に並べ、止める間も無くパジャマパーティが始まってしまった。


 席に座って落ち着いた後、その机に所狭しと並べられたものはヨイとアサメの戦利品である。量がすごい。

「いけめんとやらは、得なのだな?」

「確かに、どこに行っても沢山おまけがついてきたな」

「「ぐぬぬ」」

 キースとヒース的には実に腹立たしいが、2人は麗しさ漂うイケメンである。人が好むような造形は、人の血も主食とする吸血鬼の特徴とも言える。

 つまりイケメン2人は市場の買い出しで沢山サービスしてもらったようだった。今回はカミラ達もその恩恵を預かるのでヒースとキースは何も言えない。

「今夜は我々のおごりだ!さぁ、食べよう」

「今宵の月の美しさに乾杯!」

「いや、だからまだ17時ー!」

「ワーイ、ご馳走さまです!」

諦めずに突っ込むキースを尻目にヒースは頭を切り替えたのか、料理に釘付けだ。

「楓、ご馳走ね。食べましょう?」

「カァァァァー。」


 屋台で売っていたであろう、熱々のホットスナックやラップサンドを食べ始める。ちなみにキースもヒースもお茶会以来、装飾品は装着したままであり、最早なじんでさえいた。何を食べても心配ご無用である。

「そういえばカミラ嬢、我らに魔道具を作ってもらう事は可能だろうか?」

「可能な物なら何かと交換で作成しましょうか。どんなものが必要なんですか」

「魔女と同じとまではいかないが、せめて人族と同じ物が美味しく食べれる魔道具を!」

「「あぁ、なるほど。食事は血やトマト、ワイン等赤い物しか基本的に美味しく無いんでしたね!」」

「厳密には差異はわかるのですが、どちらかというと血の方が味の繊細な区別が可能です」

沢山のご馳走様を目の前にアサメはため息をつく。

「魔女達が食べる物については未知だな」

ヨイは目の前の食べ物をじっと見つめた。

「魔女は悪食というだけあって、お腹も胃も強いし、様々な物を食べるから確かに味覚も鋭いですね。そうねぇ…」

 キースやヒースを眺めながらカミラも何かを考え始める。そして、ポケットから黄緑色の飴を出した。

「こちらをどうぞ。一時的に私の味覚をトレースします。感じ方が同じになるので、食事が楽しくなるかと…」

「「えっ!懐かしい!!自分も欲しい」」

 実は昔、キースとヒースの2人がカミラの所に来たばかりの時、変換期で狼と人型を行ったり来たりした時があった。元々人として生きていた2人は狼の食事を受け付けなかった為、カミラと味覚をリンクさせる事で狼の食事を慣らしたのだ。


「「スゴイ(なんかすぐ出てきた)」」

「ただ、一つ注意点があって、私と同じ物を食べないといけません」

「うむ、問題はない」

「それで頼むよ」

ヨイもアサメもアッサリ了承した。

「こちら、私の魔力を込めてますので私と感覚共有が可能です。大体2時間になります」

「「1夜分とは贅沢な!是非頼むよ」」

ヨイもアサメも眼をキラキラと輝かせてカミラの手を握る。

「あらまぁ、何と交換しようかしら」

カミラも眼を光らせて、2人を眺める。

「バンパイア・ブラットはいかが?」

「「なんと!!!」」

「そんなものでいいなら幾らか飴を増やしてくれないか?」

「今ならティアーもつける!」

 食い気味のヨイとアサメにキースもヒースもドン引きである。が、ヒースは瞬時に目の色を変えた。石の話が出たからである。


 ちなみにバンパイア・ブラットとは、その名の通り、吸血鬼の血に魔力を込めて固めて石状にしたものである。

 さらにバンパイア・ティアーとは、やはりその名の通り吸血鬼の涙を魔法で固めて石状にしたものである。宝石としての価値はもちろん、魔法を多分に含んだ鉱物の為その希少価値や有用性は高い。

 ブラットよりもティアーの方が入手しづらい為、より一層価値が高く一般市場には中々出回らなかったりする。

 また、血や涙ををくれ、というのはいくら再生能力が高い吸血鬼といえど失礼にあたる為、親しい仲でもやり取りは通常しないとされる。

 つまり、快く引き受けたヨイとアサメは常識の枠からははみ出ているのである。そもそも獣血好きな変わり者であり、流石の2人はカミラの申し出にちっとも気を悪くする事はなかった。どころか、更なる飴を要求してきた。


「この飴、ストックはあと2瓶なの。原料はポレポレ草、不確かな実、月夜草、兎耳草、緑黄色野菜とミルク、カシナバル水…まぁ、また作れば良いかしら。2瓶分どうぞ」

 カミラが算段をつけて、キースの持ったカバンから瓶を2つ、ポケットから出した飴玉と合わせて2人に渡した。

 ちなみに、野菜とミルクの配合は少しでも2人に栄養補給して欲しかったカミラの優しさである。

「キースとヒース用に持ち歩いていたのだけれど、最近は使わないし是非もらって。」

「「ありがとう、カミラ嬢!!!」」


 言うや否や、ヨイは闇から取り出した皮袋をジャラジャラとふり、キースに渡した。中身を確認しろ、と目で合図する。

 中には見事に形の揃った、真っ赤な丸い石が手のひらいっぱい分に入っている。1つ1つは濃い魔力で輝き、ぱっと見ラメラメしていた。

 アサメも側のコウモリに目配せして手を差し出すと平べったくて丸い缶を同じくチャラチャラ振る。ヒースに渡して、改めるよう目配せした。

 ヒースが中を見ると、薄いオーロラ色をした雫型の石が大量に入っていた。虹色の加工された貝がらを思わせる見た目で、思ったより軽いがどれも均等で質がとても良い。缶には柔らかい布が敷かれ、さらにオーガンジーの薄い布で丁寧に包まれていた。

((すごすぎる))

 キースとヒースがビクビクしながら大切なものを保管する用の宝箱に収めて収納空間にしっかり仕舞う。


 数粒取り出し、瓶を大切そうに布でくるんでコウモリに渡したアサメは缶に残りを入れて、背中にしょっていたナップサックにしまった。

 ヨイも機嫌良さそうに瓶を眺めた後、やはり数粒をとってから闇に戻し、残りは黒革製のカバンに入れていた瓶に仕舞う。2人は楽しそうに1粒ずつ手に摘んで、

「「では、早速!」」

と叫ぶと、勢いよく口に放り込んだ。


 2人はカラコロ、カラコロと口に含んで味わった数秒後にはガリリ!と噛んで食べてしまう。

「これで、普通に食べれば良いのだな?」

「ハイ!では、まずこの串焼きから…」

ヨイに確認されたカミラが肉の刺さったタレたっぷりの串焼きを全員に手渡し、せーので食べる。

((((((ぱくり))))))

「ウマッ!!!!」

「あ、美味しい。出来立てね!」

「もぐもぐ」

「カァ!さいこう!」

「「…!!!!〜〜〜!!!」」

 和やかに味わうカミラ一行とは対照的に、ヨイとアサメは一心不乱に串焼きを食べまくり始めた。無言で、いや、無心で(?)口に放り込んでは新たな串を取り、口にほうばる。

 ちなみに2人は驚きに眼を見開いていたが、しばらくしてやっと周りを見る余裕を取り戻した。しかし、まだモグモグしている。


「で?いかがでした??」

「もう、最高だよ!この世に生まれて幸せ」

「アサメさんはどうでした?」

「こんな感覚は初めてだよ!僕らの種族って味覚はシンプルな造りだったんだね」

「「口からの情報量が多い」」

 キースとヒースがインタビューするも、2人は興奮冷めやらぬ様子でキラキラと眼を輝かせていた。

「今なら1冊、本が書けそうだ」

「待て、書くなら論文だろう。」

どうやら大作が完成しそうな雰囲気だ。

 2人がおもむろに取り出したメモ帳に凄い勢いでそれぞれ何か書き付けている。

 最早、異様なテンションで様々な食べ物を手にとる2人に、カミラが食べるものを合わせている。それを見たキースとヒースは顔を見合わせると、ヨイとアサメの給仕をし始めた。


 渡しては食べ、渡しては食べを繰り返して、山ほどあったご飯物はみんなで1時間もかからずあっという間に完食してしまった。

「はぁぁぁ、食べた食べた!」

「満足〜!!!」

 ハイペースな食事も落ち着き、ティーブレイクで一息となった。


「今日は本当にお疲れ様!

充実した一日だったわね。」

「本当に楽しかった!」

全員が満足げな顔を浮かべる。

「また明日もあると思うとワクワクするね」

「同感だ。しかし、問題の犯人らしき人はいたか?」

「1人、目つきの悪い姉ちゃんがいたぜ。赤を好んでたのか、赤いアクセサリーを一式買って行った。ちなみにカミラのところでもバラを買っていたぜ」

「まぁ、単にゴシックとか姫系が好きな女の子なだけかもしれないけどね」

「その子は確かに、私のところでもめちゃくちゃ赤いゾーンを吟味してたわね」

うーむ、と手を組む一堂。


「ヤサシソウなネーサンが、キースのヒゲ、カッテタヨ!カァ」

「「え?」」

「オイ、いつの間に!全然気づかなかった」

「キースのひげ、光に当たるとキラキラヒカル。コレクションした」

「「まじか」」

(これは、僕のヒゲも収集されてそうな予感)

(間違いなく双子でコンプリートだろ)

「あ、そのお姉さん、僕も見たよ。

 青ゾーンから、缶詰セットを3つもつかんでまとめ買いしてたから見た目によらずワイルドだなって気になった。」

「確かにあの華奢な見た目に反して剛腕だったな。軽々持っていた」

なるほど、意外と良い滑り出しなのではないか。と好感触の一同。


 が、しかし店主に占いを頼むには名前がわからないといけない。この村に村民名簿はあるのだろうか?という話になり、ひとまず気になった者の名前を後で確認する事として、宴会は終わりとなった。

 その後は結局帰ろうとしないヨイとアサメが居座り、強引に泊まりに持ち込んだのは言うまでもない。

 ちなみに明日からは、人物特定の効率化を図る為、簡単な転写式メッセージカードと粗品を購入プレゼントに用意して、その場で名前を書く事となった。

ヨイとアサメは憎めないやつですが、マイペースでコンビだと周りを振り回しがちです。


もうすぐ世の中はバレンタインですね!

バレンタインには終わらせたかったのですが、

続きそうです。しばしお付き合いください。

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