1.今度は里帰り
楽しくなって続きを書きたくなってしまった!
今度も好きなモチーフなので、しばしお付き合いください。
「「里帰り?」」
「そう!2人もくる?」
「「行っていいなら、もちろん」」
「カァァァーーー!」
「「楓も、連れてけ!って」」
今日も今日とて、にぎやかな森林の魔女のお家もとい、魔女の研究室では、そんな会話になっていた。どうやら、カミラが100年に一度の里帰りをするらしい。
カミラは森林の魔女になるくらいなので、実家も2つ山を超えた先にある、豊かで緑生い茂る森林の出である。
代々魔女の家系だが、父方の祖先を辿ると緑のエルフに辿り着く。父方はたまに先祖返りでエルフ寄りの者が生まれるが、分け隔てなく育てられた。
カミラは容姿からすると一見魔女であるが、パーツで見た色彩は緑のエルフ寄りであったりする。
「ちょっと遠いけど、大丈夫かしら?
山を2つ越える途中に村があって1泊するわよ」
「そうなんだ!魔法でひとっ飛びだと思ってた」
「カミラがそう言うって事は余程険しい山なのか?」
「うーん、ちょっと違うかな…」
「「??」」
側で聞いていた楓も小首をかしげている。
カミラは、少し考えたがすぐに、
「まぁ、説明するより行く方が早いわ!」
と言うと、ヒースとキースを連れて支度を始める。
「一応しばらく空ける事になるから、戸締りしっかり!
隠蔽魔法をかけて、ドアにも外出と書いておくわ。
お隣の夜城の魔女のロキにも伝えておきましょう。」
「薬草はどうするの?」
「水やりとかあるよね?」
「それもそうね。今までは2人に頼んでたからなぁ。
使い魔を増やそうかしら?」
「「これ以上、増やすの?!」」
「カァァァ?」
3人であぁでもない、こうでもない、と話している間に、来客があった。
「コンコン、コンコン」
「「「ん?」」」
ドアを開けると、梅鳴達だった。もちろん、ヒースとキースはカミラの首をガードしている。
「ヤッホー!お届け物ネ。アレ??」
「梅鳴、多々良たち!良いところに来たわ!」
「「「???」」」
梅鳴はいつものように丸薬などを詰めた小包を渡しに来ただけなのだが、なんやかんやで留守番を引き受ける事になった。ちなみに梅鳴は旅好きで、定住はせずバックパッカーのように定期的に移動していた。使い魔については言うまでもない。
タダラは吸血鬼なので棺桶さえあればどこでも良かったし、キギラはコウモリなのでもはや雨さえ避けられればどこでも良い。棺桶は梅鳴が魔法で携帯棺桶を作成したので、いつでも取り出し可能である。強いて言うなら2人とも闇が濃いほど安心する。
「我輩に任せろ、寝ずの番は得意ぞよ」
「ありがとう、タダラ!」
「オイラ、仲間が沢山いるから、何かあったら知らせる」
「頼りにしてるわ、キギラ!」
「薬草と植物の管理は完璧デス。」
「本当に助かったわ。梅鳴、頼むわね」
気軽に頼むカミラと気軽に任される梅鳴。
というのも、理由がある。2人の信頼関係を横に置いたとしても、魔女は基本的に個人主義だからである。
魔女は基本的に自己愛が強いが、それ故か他人に対する興味がめちゃくちゃ薄い。他人の物に対する興味も然りで、自分の興味惹かれる物でなければ実にアッサリとしているのである。そんな訳で魔女間での盗難、というのはあまり無い。
興味の対象が被ればそんな事もあるが、大半は魔女の偏執とも言える各々の細かいこだわりによって微妙に被らない。お茶会で出た使い魔の件はイレギュラーであるが、実力勝負によって主人が決まる事が多いのでやはり、純粋に盗まれる!というのとはちょっと違う。
また、魔女は基本的に自分の執着する対象については、自主的に盗難対策など諸々の対策を講じるので、何かのウッカリで誰かの宝物をどうにかする、と言うことがほぼない。魔女の用心深さが如実に現れているとも言える。
大事な物は隠しとけ!他人にどうこうを許すな!と言うのが魔女の流儀であり、他人のモノなんてキョーミない!何それ美味しいの??が基本スタンスなのである。
だから、他人や自分にとって1番大切な物以外には割とかなり寛容である。人間には理解し難い部分である。が、魔女達は魔女よりもはるかに簡単に、自他問わず執着する人間が理解できず、また警戒しているのだった。
ちなみに、キースとヒースは人に囲まれた村生まれ・村育ちなので、感覚は人間ぽい所が多い。しかし、魔女と暮らしてだいぶ年月が経過しており、魔女の感覚も理解できる。ちなみに彼らの本質は人狼なので、人とも魔女とも違う部分も持っていたりする。
長くなったが、つまりは心配ご無用!ということである。梅鳴達に家を任せ、3人と1匹は安心して家を出た。
やはり長くなりそうですが、もし良ければお付き合いください。