Fin
レビュー執筆日:2020/2/5
●多彩な楽曲を楽しめる作品でありながら、じっくりと「聴かせる」要素も。
【収録曲】
1.1 size FITS ALL
2.Fin
3.fast edge emotion
4.ウミガラスとアザラシ
5.ヒトリセカイ
6.十二支
7.HONE SKA Feat. 東京スカパラダイスオーケストラ
8.月 ~sound jammer せやな~
9.夢の泥舟
10.火とリズム
11.way out way out
12.アンテナラスト
13.STANDin
14.太陽4号
15.何度も咲きました
前作から実に約5年ぶりにリリースされた10-FEETのアルバム。前作はメロディや歌詞をシンプルに聴かせる曲が多く、今作の先行シングルに収録された曲もそういったものが多かったのですが、その分アルバム曲に関しては様々なアイディアを詰め込んだものが多くなっている印象があります。冒頭を飾る『1 size FITS ALL』では英語や関西弁を交えたラップを乗せたノリの良いサウンドを聴かせてくれますし、『十二支』は約1分半という短い時間の中でタイトル通り歌詞に十二支の動物が次々と出てくるというコミカルなナンバー。東京スカパラダイスオーケストラをゲストに迎えた『HONE SKA』は陽気なスカサウンドに乗せて「骨」「米」「ネジ」といった言葉を連呼するさまが耳に残ります。
また、「メロディや歌詞をシンプルに聴かせる曲」に関しても決して薄味にならないように色々と印象に残る工夫がなされているように感じられました。『ヒトリセカイ』の「ひらがなみたいな愛や優しさ」という表現は秀逸だと思いますし、『太陽4号』はアウトロにおける「語り」が印象に残ります。また、『アンテナラスト』はレゲエ的なサウンドとロック的なサウンドが交互に来る構成でメロディアスな曲のドラマ性を強調しており、「ノリの良さ」とは違った方向性で彼らの「ミクスチャー性」が発揮されているように思えます。
個人的なベストトラックは今作を締めくくる『何度も咲きました』でしょうか。ノリの良いナンバーでありながら歌詞やメロディを「聴かせる」点も持ち合わせており、ある意味、多彩な楽曲が収録されたこのアルバム全体を象徴しているものと言えるかもしれません。
過去作を引き合いに出して表現するならば、『Life is sweet』の多彩さと『thread』のメロディアスな要素が上手く混じり合って出来たアルバムと言えるでしょう。楽しみながらも心の琴線に触れるような傑作に仕上がっていると思います。
評価:★★★★★