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ももとせのちの  作者: 山口 にま
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二人の男たちのその後

 二階堂毅は片目を失明しもう片方も大きく視力を落とした。顔にはケロイドが残り、二目と見られない容貌だ。しかし二階堂研究室は残った。助教や大学院の学生は「世界一軽量で電池が長持ちする人工衛星を作る」と言う二階堂の目標をそのまま引き継いだ。「学問はテロに屈しない」、それが大学からの世間へのメッセージだ。


 恭平の謹慎処分は解けたが、言うまでもなく二階堂研究室には戻れない。また恭平を受け入れる研究室は見つからなかった。各研究室は「空きがない」「今から新しい研究をしても卒業までに終わらない」等の理由で恭平の入室を断ったが、本音は桜子と同じ政治思考を持っているであろう恭平を排除したかったのだ。恭平が同じ思考を持っていなくとも、実際にテロリストを研究棟に入れ、教授の情報を漏らした、それだけで警戒されるには十分だ。


桜子が浴びせた酸は二階堂教授の顔から下半身へと流れたため、彼のやけどは全身に及んだ。


「緊急 学生諸君 二階堂毅教授への皮膚提供のお願い」


大学掲示板にドナー募集の告知が出た。恭平には応じないと言う選択肢はない。償いの気持ちを示すため、いの一番で提供を申し出た。

「お気持ちは嬉しいですが、遠慮させて頂きます」

それが家族からの返答だった。

償いすら許されない罪があると恭平は知る。彼は大学院を中退した。研究者にならない事、それが恭平が出来る精一杯の謝罪だった。


 兵藤玲二は国立大学大学院から退学処分を受けた。

「本学の学生でありながら科学的根拠のない前世療法なる催眠術で集客を図った」

これが理由である。大学院卒業が受験要件である臨床心理士や公認心理師への道は自動的に閉ざされた。玲二が国立大学大学院に在籍していたことは既に多くの人々に知られている。彼が大学で学んだ心理学を使って怪しげな催眠術を依頼者に施し、依頼者が事件を起こした事実を大学は看過できなかった。大学はカルト教団の萌芽を玲二に見たのだ。

 

 警察は玲二が催眠術を用いて桜子を教唆した事実はないと結論付けたが、世間は納得しない。

「テロリスト養成所となったセラピー」「洗脳により若い女の人生を狂わせた催眠術師」「己の政治思考を信者に植え付けた教祖」、その中傷はいつまでも玲二に付きまとった。





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