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ももとせのちの  作者: 山口 にま
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源治郎はどこ

 桜子は校舎の裏で白衣を脱いで、フェイスガードを外した。軍用衛星を開発し戦争に加担する二階堂に、焼かれる側の苦しみを思い知らせてやった。彼女は恭平との待ち合わせにかこつけて何度も学内を探索していたので、出口は全て把握済みだ。

 今桜子を満たしたのは大きな達成感、のはずなのに、二階堂の驚いた顔と断末魔を思わせる悲鳴が桜子の脳裏にこびりついて離れない。管野スガは天皇暗殺を達成することなく絞首台に上ったが、桜子は違う。戦争協力者への襲撃を成し遂げた。スガだったら快哉を叫ぶであろう。しかしスガの転生者である桜子の中には何の喜びも湧き上がってこないのだ。「おやめなさい!」と制止の声を最後に上げ、スガの記憶は桜子から消えた。 


 桜子はU字溝に隠しておいた自分のバッグを、蓋の隙間から引きずり出した。変装に使った白衣や付け毛などを丸めてバッグにしまい、何食わぬ顔で裏門に向かった。

 裏門の詰め所に待機している警備員は警備センターからの指示を仰いでいるのか、受話器を耳に押し当てたままで出入りする者を誰何する余裕はない。桜子がうつむいて門を出ようとする刹那、男子学生が桜子の前に立ちふさがる。

「君、うちの学生じゃないよね?恭平の知り合いだよね?」

「あ、あの私、帰らなければならないので・・・・」

桜子は男の横をすり抜けようとするも、恰幅の良い彼は桜子の前で障壁になる。

「警備員さん来てください!学生以外が出入りしています。検問した方が良いんじゃないですか」

男子学生の呼びかけに警備員が飛んできた。

「不審者確保、不審者確保。応援お願いします」

警備員は無線で同僚に招集をかけた。桜子は辺りを見渡す。桜子が探しているのは源治郎だ。桜子はどこかから源治郎がやって来て彼女を連れ去ってくれることを待った。かつて靖国神社前で彼女を救い出したように。


 源治郎さん助けて!桜子は源治郎を必要としていた。ここにいるはずもない源治郎に助けを求めた。

 源治郎さん!早くバイクでやって来て私を後ろに乗せてよ!


 源治郎は来なかった。駆け付けた警察に桜子はあっけなく逮捕された。

 

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