第三話
屋敷に着いて直ぐに、俺だけがアシュリーの元へと案内された。
「アシュリー、遊びにきたよー」
「....にぃに?」
なんだろう、いつもと違って元気がないみたいだけど。
「うん、にぃにだよ。元気ないみたいだけど、どうしたの?」
「....」
「....何かあった?」
「....」
「お話したくない?」
そう言うと、アシュリーはゆっくりと首を横に振る。
「じゃあ何があったか話してごらん?」
「....にぃに、アシュリーのこと....きらいにならない?」
「大丈夫。嫌いになるもんか、大好きを通り越して、愛してるまであるぞ!」
「....」
「だからほら、にぃにに話してみて?」
「....アシュリー、ね。ダメな、子、なんだって」
「うんうん。うん?...うーん、どういう意味?」
は?ダメな子?どういうことだ?こんな女神の様に愛らしい子を。いやきっと女神以上に可愛い子を。いってぇどこの誰がいったんだ?おぉん?
「アシュリーね....まじゅつつかえないんだって。だから...ダメな子なんだって」
◇◇◇◆◆◇◇◇
「それで、エドガー殿。これは一体どういうことなのでしょうか?」
「どうもこうもない、先程言った通りだ。御家のエリク殿と孫娘のアシュリーとの婚約を破棄とする。これは決定事項だ」
エドガー・ノトゥス・ブルイユ。ブルイユ侯爵家の前当主。
現役時代、自らの部下とたった10人で特級魔獣を二体同時に仕留めた傑物だ。
「御家の先々代には恩義がある。それに報いる為の婚約でもあったが、このままでは仇で返す事になってしまう。」
「....仇?それは一体?」
「あの娘には、属性魔術への適正がない」
「....なるほど、そういうことでしたか」
「あの桁外れの魔力の量だ。それが理由で婚約を結んだのだがな...」
アシュリーが持つ魔力は、この時代どころか大戦時の人間よりも膨大な量だ。
「婚約の件は承知しました。エリク、お前も良いな。」
「問題ありません。何よりあの娘は俺よりも....いえ、なんでもありません」
「....不躾な質問で申し訳ないのですが、アシュリーちゃんはこれからどうなるのでしょうか」
「....このままでは、アシュリーを表に出すことはないだろうな」
「....アインツ、お前はそれでいいんだな?」
「致し方ないことだ。そうでなければ、あの娘が苦しい思いをする事になる」
魔術適正がない人間は、平民ですら極々稀だ。あって当然のものがない。忌避されるまではなくとも、良い眼で見られることはないだろう。それが戦線を与る名門貴族の者ともなれば尚更だ。
「これでこの話は終わりだ。代わりにエリク殿には────
エドガーが話し続けようとしたそのときだった。客室の扉が大きな音を立てて開き。そこに立っていたのは
「おい、おっさん。ちょっと俺とも話してよ、アシュリーのことについてさぁ...」
見るからに分かる程の怒気を帯びたアイゼンの姿だった。